CMなどを見ていると、「玄関の匂い気になりますよね」といった言葉を耳にします。
もちろん、玄関に限らず、リビング・トイレなどの匂いも気になるという方も多いようです。
実際のところ、そんな話は人前ですることはあまり少ないと思いますが、
富士経済のマーケット情報によると、室内の芳香剤の市場は500億円弱にもなるそうです。
では、私たちは、これからもずっとこうした芳香剤的なものと付き合って行かなくてはならないのでしょうか。
もし、芳香剤的なものから解放されるだけでも清々しい気分になれそうです。
そこで、
- 室内にこもる臭いの主な原因
- 芳香剤的なものが匂いを消す基本的な仕組みと危険性
- 芳香剤が不要な住まいとはどんな住まいか?
について詳しく解説します。
【芳香剤が必要な理由】嫌な臭いの元になるものとは?
年々、玄関や部屋の匂いが気になるという人は増えているように感じます。
実際に、玄関の風通しが悪く、玄関がくさいのでなんとかして欲しいとか、どんな芳香剤がおすすなのか?といった質問も受けることがあるくらいです。
住まいがもつ臭いの主な原因は次の3点です。
- 玄関の臭い
- お料理などで発生した臭い
- 建材(床やビニルクロス等)から発生する臭い
当然、生活の仕方で、まだまだ他の原因も考えられますが、この3点は、どのご家庭も概ね共通する原因です。
玄関の臭いの原因は雑菌・カビなどの臭い
靴は雑菌にとってとても居心地のいい場所
雑菌がとても喜ぶのは次の三つの条件を満たしている場合です。
- 適切な温度がある(適度に暖かい)
- 水分がある
- 雑菌にとって栄養となるものがある
もう、お分かりの通り、靴はこの条件を見事に満たしています。
生活している以上、靴の中には、汗、皮脂がどうしても付着します。
特に雨が降った日は、しっかりと水分も含み、雑菌にとっては最高の環境になるのが靴です。
それらが、綺麗に玄関に並べられて、直射日光を受けることもなく、雑菌は安全な生活を送ることができるために、臭いを発生してしまいます。
また、最も風通しが良く、日当たりがいい場所は、リビングに使用することが多いために、玄関は、風通しが悪くなり、臭いがこもりがちになることもあります。
敷地の形状によりますが、私がプランを立てる場合には、住まいの第一印象と生活の仕方を考えて、玄関を少し大きめにとることもよくあります。
部屋の臭いの原因は、料理と住まいの作りが原因
料理を行えば、もちろん臭いが発生します。
近代の住まいは、高気密・高断熱が当然のことと言われますから、意図的に換気をしないと臭いは部屋に残ったままになります。
特に、リビングとキッチンが一体となったオシャレなイメージのキッチンの場合、臭いがリビングにまで行ってしまうという問題点があるのです。
当然、間取りに応じて換気扇の性能を考慮することは必須ですが、いくら高性能な換気扇をつけても、完全に料理の臭いを排気することは困難です。
また、梅雨時の洗濯物の室内干しは、雨に濡れた靴と同じ状況になるために、臭いが発生しやすいということも覚えておきたいものです。
住まい全体の臭いは建材が発する臭い
一般的な住まいの臭いの原因は、建材が発する臭いの影響も強いと言われています。
建材が発する臭いというのは、
- フローリング材
- ビニルクロス
などに含まれる接着剤などの臭いで、残念ながら約15年〜20年間揮発し続けます。
です。
ここにお料理の臭いなども混ざってしまうために、どうしても不快感が発生してしまうのです。
では、これらの臭いを解決するために用いられる、芳香剤や消臭スプレーの基本的な仕組みを紹介します。
室内の嫌な臭いを消す芳香剤などの基本的な仕組み
現在、消臭剤・芳香剤などの商品は、無数にあります。
とは言うものの、基本的な仕組みの部分は、大きく3つのパターンに分類されます。
- 臭いの元となる物を吸着してしまう方法
- 化学反応を起こして別の物質に変えてしまう方法
- 別の臭いを放ち感覚をごまかす方法
順番に解説します。
臭いの元となる物を吸着してしまう方法
基本的には、水の濾過のイメージと同じです。
臭いの吸着には、一般的に炭がよく用いられますが、炭のかなり小さな穴に臭いのもととなる成分が入り混む性質を使ったものが、脱臭の基本的な考え方です。
ただ、濾過の様なイメージのみで、消臭を行うとすると、臭いの成分をたくさん吸着してしまうと、それ以上の性能が期待できないということになります。
ここでは、
ということを知っていただけたらと思います。
化学反応を起こして別の物質に変えてしまう方法
例えば、オゾンを使った消臭方法があります。
オゾンは、非常に不安定な状態をしているために、何が別のものがあれば、酸素が一つ離れて、酸化○○を作ろうとする仕組みを利用した消臭方法です。
こうして見ると、オゾンを使った消臭方法は非常に優れた様にも見えますが、高濃度のオゾンは人体に有害であるために、使用には十分注意する必要があります。
ここで、取り上げたのは、消臭の仕組みの分かりやすい例として取り上げました。
別の臭いを放ち感覚をごまかす方法
人は、より強い臭いを察知すると、弱い臭いについては、察する能力が低くなるという性質をもっています。
ですから、毎日入浴することが困難だった時代は、お香を炊いて、体臭をごまかす様にしてきました。
もちろん、現代でもこの方法はたくさん用いられています。
例えば
- 精油(天然)
- 消臭スプレー・芳香剤(人工)
ただ、近年では、人工的な芳香剤などは香害のもとになるとして、問題視されるようになりつつあります。
詳しくは、【化学物質過敏症と匂い】苦しくなる理由と今後の香害対策ポイントをお読みください。
ここでは、消臭剤・芳香剤などの基本的な仕組み3パターンを紹介しましたが、もちろん、これらの3つを組み合わせて作られている商品もたくさんあります。
ただ、健康的な生活を意識しているあなたは、この様な方法で、臭いから解放されてもすっきりしない感覚が残るのではないでしょうか。
【できる対策】十分に換気し、太陽の力も借りる
室内の臭いを自然の力ですっきりさせるには、
- やりすぎだろう!と思うくらい大胆に換気をする
- 太陽の力を適宜、上手に活用する
ことがとても重要です。
大胆に換気をするというのは、建物によって窓の開け方に工夫が必要ですが、難しいことを考えるのが嫌だという場合は、古民家を思い出してみましょう。
もともと、日本の家屋は、外と内の境目が曖昧でした。
広い土間というスペースがあり、室内だけど土足で過ごす場所というような場所があったわけです。
また縁側という場所も室内なのか屋外なのか、なんとも言えないような場所です。
実はそれほど、屋外と人々の生活は一体化していたのです。
ですから、囲炉裏で何かを焼いても臭いが気になるということもなかったのです。
と、いうことは換気をしよう!という時には、全ての窓を開けるくらい大胆に行う方がいいのです。
また、たくあんにする大根は天日に干されました。
梅雨明けには、梅干しも天日に干されていました。
これらは、天日に干すことで、雑菌を殺すという役割も担っていたのです。
ということは、靴を洗う暇がとれない!っていう場合にも、お布団を干すかのように靴を干せばいいのです。
(特別な材料で作られた靴は表示にしたがってください)
少し、手間がかかりますが、この様な工夫をするだけでも、より自然に近い暮らしに近づけるはずです。
自然界は、腐敗臭がしない不思議な空間
こうして、臭いの対策を考えていくと、私たちはお手軽・便利を追求したあまり、難しいことを一生懸命に考えているような気がしてなりません。
特別なことをしなくても、自然のままでも臭いがしないという証拠は、山に行けば十分に感じられます。
山を歩くと、枯葉の下には葉が腐敗して腐葉土がたくさんできています。
それでも腐敗臭はしません。
また、落ち葉は大量に毎年落とされるにも関わらず、山が落ち葉で埋め尽くされることもないのです。
つまり、ちゃんと様々な虫や微生物がクリーンに元の状態に戻してくれていることが分かります。
近代の私たちの住まいに臭いが残り、強制的に換気をしないと行けないという状況になっているのは、住まいがどんどん自然から遠く離れて行ってしまっている証拠なのです。
それでも、人は本当は自然が大好きな生き物なのです。
だから、休暇がとれた場合などには、田舎街に出かけたり、山のペンションに出かける旅を楽しもうとするのではないでしょうか。
住まいを自然に近い状態にすると臭いはどうなるのか?
空気がうまい家では、38℃以下で乾燥させた無垢材(音響熟成木材)と漆喰で仕上げていきます。
これらの木材や漆喰を私たちは、「生きている」という表現をしています。
それは、山の生命の営みと同じように、木材や漆喰は、私たちの生活に不要なものをちゃんと分解してくれるからです。
実際に、空気のうまい家に住んでいる方々は、次の様なことも平気で言われるのです。
室内で焼肉をしても翌朝には、臭いがしないから気兼ねなくやっていますよ。
来客が玄関を開けたら大抵驚いてくれます。木のいい香り!って
実は下駄箱の中も臭くないんです。臭いが消えるっていう話をしていて嘘だ!なんていう人がいれば、私は下駄箱を開けて臭いを嗅いでもらう様にしています。
実はこうした話は、自然界の中では当然の事であって、臭いがなかなか消えない事の方が不自然ではないかなぁと思うのです。
室内の臭いが気になる方は、こちらの記事も参考に!