一言で「家づくり」と言っても様々な方法で作られています。
大切な住まいですから、どの様に作られているのか?は、これから新築・リノベーションをしようというあなたにとって、関心があることだと思います。
作り方は、様々な方法がありますが、どんな現場であっても、大工や左官職人などが入り様々な仕事を行い、やっと一つの家が完成するということは、変わりありません。
そこで、今回は、あまり見る機会のない大工の仕事の一部を紹介します。
そして、
やっぱり家を大事にしないとなぁ
と一人でも多くの方が感じてくれると嬉しいです。
家を購入すると言いますが、職人さんの技術も買わせていただいた
既に家づくりをされた方が、先日、こんなことを言われていました。
家ができるまでの過程を始めて見ることができました。もちろん、打ち合わせで全体の流れも把握していますが、そういうのと全く違う感覚です。一枚の板が、現場で切られ、必要な場所にあてると1mmの狂いなく、ピタッとはまる感じ…まさに職人技と思いました。タイルを切るにしても、定規の様なものを使わなくてもまっすぐにカットされるのを見て驚きました。
業界では当たり前のことかも知れませんが、そんな様子を見るとますます家が好きになりました。私たちは、「家を買う」と言いますが、職人さんの技も買わせていただいた気がしています。
こんな感覚にあなたもなって欲しいと思い、大工が作業をする時に考えている小さな工夫を紹介します。
できるだけ分かりやすく解説しますので、一緒に考えながら読んでいただけると嬉しいです。
見えない部分の腰板も考えながら貼る【京都市の現場から】
腰板というのは、壁面に貼られた上の様な板のことを言います。
パッとみた感じ、壁に何枚かの板がただ貼られているだけのように見えます。
特に何も考えずに板を貼っていくと…多分この様に貼るのではないでしょうか。
これでも、高さが揃っていれば綺麗に見えますが、大工の視点で見ると綺麗ではなく、次の様に腰板を貼っていきます。
これで、左右のバランスが綺麗に整います。
実際に作業を行っているのは、キッチンの棚の部分であるために、生活が始まると必要なものが置かれることになるので、見えない箇所になるのですが、こうした所まで考えているのです。
造作家具の角の丸みの程度も考えてみる
また、上の写真の土台部分の角をどの程度落とすかも考えていきます。
私が設計をする際には、打ち合わせをしながら、
- シャープなイメージが好きな方なのか?
- ソフトな雰囲気が好きな方なのか?
なども感じながら、話を聞いています。
その上でプランを提案し、細かな要望を伺うようにしていますが、角を一つ落とすにしても、その程度は様々です。
現場で大工と話をしながら細かな調整を行っています。
もちろん、現場の大工もご家族の年齢構成や出会った時の印象、大工自身のこれまでの経験を通して、考えを出してくれています。
この様な造作家具の話は、【造作家具とは?】メリットがたっぷり感じられる事例で構造なども合わせて紹介しています。
数字にはできない、目には見えないところが大切だと思う
住まいに限らず様々なものが数値化されるようになりました。
もちろん、私たちも住まいについて数値で説明することは多々ありますが、ここでお伝えした様なことは、数値にも隠し味にもならない様な細かな部分の話かもしれません。
例えば、レストランのカレーには「コーヒーを入れる」と聞いたことがあると思いますが、カレーの味にコーヒーの苦味を追加すると美味しいという話ではありません。
コーヒーの味や香りが決してしてはいけないそうです。
コーヒーの味や香りがしないギリギリのところで追加を辞めることで、カレーの味が単調でなくなり、深みが増すそうです。
家づくりも全く同じだと思っています。
そうした私たちの想いや大工、他の職人の目にはなかなか見えない、数値にもならない部分の工夫があってこそ、なんとなく気持ちいい住まいができると思っています。
そして、なんとなく気持ちいい住まいで生活するご家族はこれからどんな変化をされていくのか、無垢材の変化とともに見るのが楽しみなのです。