こんな話を聞いたことがある人も多いでしょう。
確かに、冬と夏では、品種が違うために味に違いが出るのは当然なのですが、大根も私たちに食べて欲しいと思って生きている訳ではありません。
命を守り、次の世代に命をつないでいくことを一番大切にしています。
このことを深く理解すると、
と言われてきた理由がはっきりと分かると同時に、私たちが豊かに暮らすためには、何が必要なのかも見えてきます。
あわせて、それぞれの季節を楽しめることは、とても贅沢なことかもしれないと感じていただけると嬉しいです。
なぜ、夏の大根は「いまひとつ」と言われるのか?
大根だって生き物です。
私たち人間が、「夏になると涼しげな服装をし、活動量が増える」というのと同じように、大根だって、季節に応じた変化をするために、味が変わるのです。
冬の大根が美味しいと言われる理由
冬は、どの動植物にとっても厳しい季節です。
特に日差しが弱く、日照時間が短いのは光合成をする植物にとっては、大打撃です。
この問題を解決するために、冬の大根は、
通常時よりもより多くの栄養を蓄えて万が一に備えようとする
性質があるために、糖度が高くなり、煮物などにすると美味しく感じられるのです。
では、夏の大根が「今ひとつ」と言われるのはなぜでしょうか。
夏の大根は栄養をたくさん備蓄しておく必要はない
夏は日差しも強くなり、日照時間もかなり長くなります。
つまり、光合成をする植物にとっては、「いつでも好きなだけ栄養がとれる」という状態。
そんな時に敢えて栄養を備蓄することに注力する必要はありません。
それよりも、夏だからこそしないといけないことが、
外敵に食べられない様に自分を守る
栄養面では恵まれているけれども、外敵に食べられてしまうリスクが高くなるために身を守る工夫をしないといけないのです。
大根がどの様にして外敵から身を守るのか?について、【植物の不思議な力】身近な大根がもっている秘密で紹介しています。
大根は自分を守るための工夫をしているから季節の大根を食べると…
冬には、私たち人間活動量が減り、現代人でも冬には体重が増加する傾向が強くなります。
人間にとっても厳しい冬を乗り越えるための工夫が私たちの身体にも備わっているということです。
この時期に、栄養がたっぷりと詰まった大根を食べることは、冬を乗り越えるのに適したことであるために、私たちの祖先は、「季節の野菜を食べると良い」と考えるようになったのです。
一方で、夏の大根は、栄養は少ないですが、身体を守るための「辛味成分」をたっぷりと含んでいます。
暑い夏に辛味の効いた大根を食べるというのは、とても美味しく感じられるものです。
これにより、雑菌(食中毒などの問題)から身を守ることができると考えられてきたのです。
何でもないようなことですが、見事に植物と私たちが共存していると感じられる事例だと思います。
四季があり、四季に応じた文化があることは貴重なこと
地球規模でみると、日本のように四季がある国は非常に少ないです。
しかも、四季がある島国と限定すると、日本以外には数える程度しかありません。
海外の方からすると、この様な環境はとても羨ましいようです。
一年中、夏みたいなものだから寒いのが羨ましい!
赤道付近の国々にも一応、季節というものはあるそうですが、多少涼しくなったとか、雨が多くなってきたと感じる程度だそうです。
気候が大きく変化しないということは、安定的で良い様にも見えますが、
- 一年中、衣服の種類が変わらない。
- 一年中、食べ物の種類が変わらない。
- 季節に応じた、文化・技術が進歩しにくい。
日本からインドネシアやシンガポールなどに引っ越しをされた方は、この様なことを強く感じたと話をされていました。
ヨーロッパはそれなりに四季があるけれど…
では、四季がそれなりにあるヨーロッパはどうでしょうか。
当然季節に応じた文化が根付いていますが、日本ほど独創的ではない印象を受けます。
これは、国々が大陸で続いているために、様々な文化が長い時間をかけて混ぜ合わさったためだろうと思われます。
この様なことは決して悪いことではありませんが、どうしても「独自性」は、薄くなってしまいます。
こうしたことを踏まえると、日本の文化は非常に貴重なことが分かります。
今はグローバル化が進んでいますが、身近な野菜との暮らし・考え方は私たちが守っていく必要があるように思います。
意外と毎日「白菜と大根」の生活も楽しいものです。
なぜだか、大人になった今は、大根と白菜の生活も全く苦に感じません。
むしろ、贅沢をしている様な感覚さえあります。
また、大根や白菜をメインにした調理方法は、調べれば無数にありますから、子どもの頃感じた「また、今日も大根かぁ…」と言う感覚もありません。
こうして子どもの頃を振り返りながら、大根について書いていて思い出したのが、「大根を焼く」と言う調理方法です。
子どもの頃、連日、大根を炊いたものばかり食べさせられたのでしょうか。
変化をつけようと思って、大根を輪切りにして、フライパンで焼いたことがあります。
出来上がった、焼き大根は、
表面だけ焦げて、中身は生で冷たい…。
全く美味しくなかった記憶が鮮明に残っています。
大根を焼いて食べるなら、それなりの準備が必要と言うことです。
こうしたちょっとした思い出も、季節を存分に感じる生活をしたからこそ得られたものだと思います。