あなたもどこかに出掛けた時に、
- 今日、お邪魔した家はなんとなく快適だったなぁ
- あのお店は、物凄く居心地が良かったなぁ
と感じることがあるはずです。
もちろん、そこにいる方の対応が素晴らしかった…なんてこともありますが、最新の設備、特別な芸術作品などがなくても「良かったなぁ…」と感じた経験があるはずです。
住まいづくりに関わる私としては、この「良かった、快適だった…」という感覚はどこから生まれるのかを追求することはとても大切なことだと考えています。
感性は、個人差がとても大きいですが、一言で言えば、
ということは確かに言えます。
もし、あなたが単純な機能的な生活に留まらず、生活そのものも楽しみたい…と考えるのであれば、とても重要な話になります。
では、日本文化を良いと感じる感性について詳しく見ていきましょう。
日本の文化と住まいの歴史的な変化を知っておこう!
日本の住まいは、この様に変化してきました。
さらに技術は進歩し、スマートハウスの様なものもこれからどんどん増えていくでしょう。
ただ、その一方で、
があるということを見落としてはいけません。
例えば、
- 神社
- 古くからある日本庭園
- 敬語・時候の挨拶
などは、これらが存在するからと言って、暮らしが便利になることはありません。
むしろ、機能性・利便性だけを見れば邪魔な存在で、コスパなんて考え方すら存在しないものです。
ところが、現代でも神社仏閣や敬語などの日本文化は、大切にされ続け、神社巡りをすると心が落ち着く…と言われる方がたくさんいらっしゃるほどです。
けれども、住まいの話になった途端、「光熱費が安くなりますから…」などのコスパ的な話が中心になりがちです。
当然、コスパを考えることは大切ですが、コスパを良くすることが住まい作りのゴールでもないと考えています。
そう考えると、数値化できない文化的な話も伝えておきたいと思うのです。
神社仏閣はなぜ今も大切にされているのか?【快適な住まいのヒント】
有名無名を問わず、日本には数えきれないほどの神社仏閣が点在しています。
とても狭い科学的な視点で見ると、
ということになりかねませんが、誰もその様なことは言いません。
では、なぜ日本の人々はこうしたものを大切にしてきたのでしょうか。
日本は地球上で非常に珍しい気候・風土のある島国
世界地図を見れば分かりますが、日本の緯度に位置する適度な大きさの島国は他に存在しません。
- 適度に四季の変化が感じられる
- 暑さ・寒さはあるものの生命の危機を感じるほどの厳しさは弱い
- 年間を通して適度な降水量がある
- 大陸に近すぎず、遠すぎないところにあり、大陸文化を取り入れつつ独自の文化を作りやすい
これほど生活環境に恵まれた気候・風土のある国は他にないということが見えてきます。
その為、私たちの祖先は、
を選ぶことができたのです。
この考え方は、神社の存在にも深く関わりがあります。
多くの人が神社にお参りする理由
あなたにとって身近な神社を想像してみてください。
大抵の神社は、山の中や林の中、川の近くだったりするはずです。
これは「自然の中に神が宿る」という考え方が根底にあるためです。
あまりにも自然環境が厳しければ、自然の中に神が宿るという考え方は生まれなかったでしょう。
また、疫病・日照りなどが続くと、人々は「自然の中の神」が怒っていると考えたり、「神」の力でなんとかして貰おう…と考えたりし、お祈りなどをしてきました。
狭い範囲の科学的視点で見ると、おかしな話ということになりそうですが、現代の私たちも、初詣や安産祈願、受験祈願を行う人はたくさんいます。
そんな感覚が現代でも受け継がれているのでしょう。
数値化できない部分が快適・豊かさをもたらしてくれる
科学の進歩は私たちの暮らしに大きな影響を与えてくれました。
とても素晴らしいことですが、
ということも見えてきます。
つまり、はっきりと分かっていることと、何だかよくわからないけれど「その方が良い」という感覚的なことの間で、私たちは日々、暮らしています。
例えば、先に挙げた「安産祈願」はどうでしょうか。
科学的な見方をすると、安産祈願をしたからと言って、安産になるとは言えません。
それでも多くの方が安産祈願をされるのは、
- 心が落ち着く
- 出産に対する不安が軽減される
からです。
もし、安産祈願が科学的に素晴らしい効果があると立証されていないので無駄だ!という捉え方をすると、無事に出産が終わるまで不安がつきまとうかもしれません。
現代は、科学が大きく進歩しましたが、一つ寂しさを感じるのは、
という捉え方になってしまうことです。
科学的に物事を見ることはとても大切ですが、その範囲で説明がつかないものは「そういうもの」という捉え方をした方が圧倒的に生活は豊かになります。
飛行機がなかった時代の人々は、鳥に憧れを抱きました。
空気よりも重たいものが宙に浮いている…という現象は当時の人々にとって説明のつかないことでしたが、今では、なぜか明確に説明することができる様になりました。
当時の人々が、鳥が浮くことは説明がつかないから無価値だ!と誰もが思ってしまったとすると、今、私たちは飛行機に乗ることもできないでしょう。
そんなことを考えると、未だ解明されていない日本独自の文化の謎の様な部分も、受け止めておきたいなぁと思うのです。
数値化され過ぎた住まいの大きな問題点【快適な住まいから遠のく】
近年では、住まいの性能が様々な視点で数値化される様になりました。
例えば、次の様な項目です。
- 耐震性(耐震等級)
- 気密性・断熱性(C値・UA値など)
- 光熱費 など
もちろん、これらの数値は重要ですが、数値が良ければ快適で豊かな暮らしになるとは限りません。
最近では、気密性(C値)を良くしないと話にならない!という風潮も強いですが、気密性を良くしようと思うと、窓を小さくする必要があります。
大都会の真ん中では、こうした対応をしてもいいと思いますが、屋外の雰囲気が良く、鳥のさえずりが聞こえる様な地域では、数値を追い求めることよりも、内と外のバランスを見ることの方が大切です。
大都会のビジネスホテルは、空調も完備されており、数値的にはとても過ごしやすい室内温度が維持されていますが、連泊するとなんとも言えない疲労感を感じるのは、私だけでしょうか。
特に日本の人は、自然と共に生きてきた先人の感覚が現代もなお残っているために、あまりにも機械的な空間に長時間いると疲労してしまうのでしょう。
歴史的な住まいの変容を見ながら、ビジネスホテルに泊まった時のことを思い出すと、やっぱり私たち日本人は、自然と共に生きてきた民族だと痛感します。