子育ての真っ最中の方や勉強に力を入れている方は、こんな疑問をもったり、周りから相談された経験があるはずです。
- スマホを触ると集中力が下がるのか?
- スマホの使いすぎは勉強の効果を打ち消してしまう?
- スマホばかり触っていると依存症になってしまうのでは?
ただ、これは、
スマホがなかった時代に学生時代を過ごした私達大人の感覚であって、生まれた時からスマホがあった世代とは認識が異なる。
こんな声も聞く事がありますが…
その理由について様々な研究・調査をもとに詳しく解説します。
また、私が教員として、子どもと関わった経験も踏まえながら話を進めていきますので、子育ての参考にしていただけたら幸いです。
【調査1】スマホが手元にあるだけで集中力は低下する!
アメリカテキサス大学の調査の結果から言えることです。
具体的な調査方法
約800人の被験者を二つのグループに分けます。
- スマホを別の部屋に置くグループ
- 電源を切ったスマホをポケットまたは机上におくグループ
その状態で、集中しないと解決しにくい問題を解く事に挑戦してもらいます。
もちろん、両者ともスマホから問題解決のヒントを得ることはできません。
調査の結果
スマホを別の部屋においたグループの方が、成績がよく、目の前に置いていた人達の成績は最低という結果になりました。
概ね察しはついていたかと思います。
会社への電話がとても多い日には、仕事に集中できなかったというのと同じことです。
絶対に電話がかかって来ない早朝5時ごろの仕事はとてもはかどるものです。
【調査2】画面(PDF)と紙で読解力(集中力)を比較する
インターネットが普及しだした頃から、画面がいいのか?紙がいいのか?様々なところで議論がありました。
学校でも「ICT教育の推進」と言って授業にIT機器を使うことが推進され、IT機器を活用することで、子どもの学力にどのような影響を及ぼすのか?という研究をグループでしていたことがあります。
ところが、残念ながら、
という結果に終わりました。
また、ノルウェーでは、画面(PDF)と紙で読解力を比較する調査が行われました。
少し被験者が少ないですが、ある程度の方向は見えてきます。
具体的な調査方法
被験者72人を2つのグループに分ける
- 画面(PDFファイル)を読むグループ
- 紙(PDFファイルを印刷したもの)を読むグループ
テキストに書かれた内容に関する読解力テストを行いました、
調査の結果
紙を読んだグループの方が圧倒的に、読解力が高いという結果になりました。
【調査3】スマホの使いすぎは勉強の効果を打ち消す?
子育て中の方で、うちの子頑張って勉強しているのに…全然結果が出ないという悩みを持たれている方も多いと思います。
その解決のヒントになる調査を紹介します。
東北大学と仙台市が行った調査です。
打ち消すという部分が分かりにくいかもしれません。
端的に言うと、たくさん勉強をしてもその努力が台無しになる可能性があるということ。
具体的な調査方法
仙台市の中学生約2万4千名に対して行われた「仙台市標準学力検査」及び「仙台市生活・学習状況調査」を詳しく分析。
難しい言葉が並びましたが、要するに、テストの結果とアンケートをクロス集計して分析したものが公開されいます。
調査の結果
この様な資料が公開されています。
緑①の人は勉強時間が30分未満、スマホは利用していません。
青②の人は勉強時間が2時間以上で、スマホの利用は4時間以上です。
圧倒的に勉強時間は、青②の人の方がたくさん勉強しているにも関わらず、平均点は勉強時間30分未満の人を下回るという結果から、「努力が台無しになる可能性がある」と言われています。
詳細は資料「スマホや携帯電話の使い過ぎは勉強の効果を打ち消す!?」をご覧ください。
この様に見ると、スマホが悪ものの様に見えますが、これらの問題を回避する方法も紹介します。
【解決策】スマホの支配から抜け出す具体的な方法
もちろん、一番いいのは、集中したい時には、ネット接続から離れ、スマホの電源を落として別の部屋に置いてしますことです。
この時に、
- 仕事の連絡が入ったらどうしよう?
- 急に友達からの連絡があったらどうするの?
と思うかもしれません。
けれども、その瞬間に対応できなくても大した問題にはなりません。
それよりも問題なのは、集中できない状態が慢性的になってしまい、勉強に気が乗らないとか、仕事に集中できない状態になるということです。
毎日、1時間、集中する時間を確保して本を読むことを3年続けるだけでも、随分豊かに生きることができます。
とはいえ、慣れないまでは次のような簡単な方法で改善を図るのも一つの方法です。
【簡単な対策1】 スマホ利用時間アプリの利用
効果があるかどうか…それは人によって異なりますが、スマホをどのくらいの時間利用したのか客観的に知ることで、問題を回避することができます。
スマホを触らない時間が多いほど魚が育つというもので、無料で利用することができます。
こうしたアプリも使いながら、自分を客観的に見るのもいい対策になります。
詳しくは、スマホをやめれば魚が育つを参照してください。
【簡単な対策2】 スマホをもたずに近くの公園・神社などに散歩にいく
スマホを持たずに…というところがポイントです。
スマホがないだけで、自分との対話が随分できるということが実感できるはずです。
また、行き先は、コンビニやスーパーなどではなく、自然があるところをおすすめします。
効率よく知ることと時間をかけて理解することは質が異なる
先日、小学5年生の子どもが小さなプランターで育てているシシトウガラシが1つ実りました。
その子は、たった1つのシシトウガラシを収穫するのに、どの辺りにハサミを入れるか悩み、ドキドキしながら今シーズン初のシシトウガラシを採っていました。
そして、お母さんに
「やっとシシトウガラシができた!夜ご飯の時に焼いて。お姉ちゃんと分けるから、ちゃんと切ってな。」
と話をしていました。
その子は何を感じたり学んだりしたのか?
- シシトウガラシがどの様に成長するのか?
- 一つの実がなるまでにどのくらいの時間が必要か?
- シシトウガラシにも命があって、一生懸命生きていること
- 実を切る時には痛みを感じているのかどうか?
- 実ができた時から、ツルツルしていること
その子の会話から、こんなことを学んだのかなぁ…と思いました。
理科のテストで言えば、+5〜10点程度の内容のことを、数ヶ月かけてやっと分かった!という状態です。
だから、学習としてはとても効率が悪いということになります。
一方、NHKやYouTube動画には、植物が成長する早送り動画はたくさんありますが、それらを使うと、この子が感じた程のことは得られません。
今は、大人も子どもも必要な情報を簡単に取り出すことができる様になりました。
私が子どもの頃は「物知り博士」なんて言葉をよく聞きましたが、今は全員が「物知り博士」をポケットに入れて持ち歩く時代になりました。
ということは、
一つのシシトウガラシから何を感じるのか?ここが「真の個性」になりそうです。