先日、次の様なことを言われるお客様に出会いました。
実は、この話も非常に複雑な要素が絡みあっているために、一言でこうだ!ということは、非常に難しいのですが、この機会に、
ということを解説します。
このことを知ることで、自然に生えている木の素晴らしさと同時に、私たちが住まいとして木を加工した時に注意したい点が見えてきます。
私たちの場合は、特殊過ぎると言われる乾燥方法で乾燥させた杉を使って施工することが多いですが、ここでお伝えする話は、一般的な木造住宅全てに言えることなので、知っておくと良いと思います。
木造住宅に住むなら自然に生えている木にかかる力を知ろう!
自然に生えている木と一言で言っていますが、自然に生えている木は何百万年という長い歴史の中で、様々な厳しい環境を乗り越えてきただけあって見事な構造をしています。
木造住宅をこれから建てようという方は、この木の構造を簡単に知っておくだけでも、住まいに対する見方が多く変わるだろうと思っています。
詳しくは、【木造住宅の強さ】木そのものの強さについて知る・構造より重要で紹介しています。
もちろん、木そのものがもつ構造は、生きていくための構造であるために、様々な要素が絡みあっていますが、ここでは、地震や風の様な大きな力に耐えるという部分にフォーカスして話をすすめます。
ですから、とてもシンプルです。
自然に生えている木にかかる力その1 重力(縦方向)
自然に生えている木にかかる縦方向の力は、重力だということは直感的にも分かりやすいです。
生活経験の場で言えば、少し大きくなり過ぎた庭木などを根元あたりから、ノコギリでカットする場面を想像すると良いでしょう。
途中までは、スイスイとノコギリの刃が幹に入って行きますが、途中から相当重たくなります。
切り口から上の木の重さがノコギリにかかるためです。
もちろん、木の大きさにもよりますが、木はこの重量に耐える耐える構造をしていないといけないということです。
そのため、木は細い繊維を何本も縦方向に伸ばし、相当な重さにも耐えています。
これは、下の図の様にストローを束ねると簡単に押しつぶせなくなることをイメージすると分かりやすいはずです。
自然に生えている木にかかる力その2 風による力(横方向)
ストローを束にしても、側面に力を加えると、縦方向よりも弱い力で、ストローが折れてしまうことは十分想像できます。
そうなると弱い印象を受けるかもしれませんが、そもそも、重力(縦方向)と比較すれば、横方向の力なんて、かなり弱いために木は相当強い構造を持たなくても良かったのです。
とは言っても、【木造住宅の強さ】木そのものの強さについて知る・構造より重要で紹介した様に、横方向の力にもある程度耐えられる作りを、木は細胞壁の段階から構築しています。
いずれにしても、
ということです。
ところが、この木が木造住宅になると、初めて出会う力に遭遇します。
力って縦方向と横方向しかないんじゃないの?
実は最初に少し触れた「せん断力」という力があるんだ。
木造住宅になった時に木が初めて出会う力がせん断
これまで見てきた様に、自然の中で生えている木には、2種類の力しか加わっていません。
ところが、木が柱や梁となって、木造住宅の形に組まれていくと「せん断力」という力が加わることになります。
図で表現すると次の様な力です。
この力は、自然界の中で生きていた時には、加わることのなかった力だということは十分想像できると思います。
当然、せん断力に対してどの位抵抗することができるのかは、下の図の様に細胞の向きを元に図を描くと、同じ種類の木であってもその方向性が重要なことが分かります。
生えている木は、縦方向(重力)方向の力に強いこと、そして、【木造住宅の強さ】木そのものの強さについて知る・構造より重要で紹介している通り、細胞と細胞の間にはリグニンしか存在しないことを踏まえると、上の図で言えば、圧倒的に一番右側のスタイルが良いということになります。
現代でも、大工さんによっては、このことを十分に考慮して、「木と木の相性が良い・悪い」などとい言われることがあります。
これは、この細胞の向きを考慮した上でのことで、細胞の向きが異なるだけで、せん断力に対応できる力は10倍になったり、1/10になったりします。
木を扱う時には生き物として扱いたい
今回は、木が木材になって初めて出会う力について紹介しました。
現代の場合は、木そのものを加工する技術が高くなり、構造には、薄い板を集めて一本の柱にした集成材が使われることが圧倒的に多くなりました。
ところが改めて木というものの性質を見ると、非常によくできていることに気付かされます。
そして、木の性質をより深く理解しようとすると同時に、細かな部分まで大事にするという感覚をもっておくということは、家づくりに関わるものとして大切なことの様に感じます。
木がもっている細かな部分を大切にするのであれば、木の水分を抜くために、高温で乾燥させるということは、なんらかの問題が生じるのではないか…という風にも考えています。
改めて木の乾燥方法については紹介しますが、やっぱり木も生き物という目で付き合って行きたいものです。
もちろん、私たちが施工する空気がうまい家®︎で生活される方は、世代を超えて、この感覚を伝えていってほしいと願っているのです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
「神は細部に宿る」などと言われますが、木は私たちの目には見えないほどの細部にまで拘っているんだと改めて感じます。