例年、夏になると「紫外線が気になる」という言葉をあちこちで聞きます。
以前は、女性だけが気にしていた様な印象がありますが、最近では、子どもや男性も気にされる人が増えてきました。
先日も、この様な親御さんに出会いました。
数十年前なら、夏休みの子ども達は、「真っ黒に日焼けしている方が元気で良い」と言われてきましたが、2021年現在では、そんな風潮は跡形もありません。
今回は、
を紹介します。
また、意外と知られていないのが、木は紫外線を吸収してくれるということにも触れて、家づくりの参考にしていただきたいと思います。
そもそも紫外線とはどういうものか?
普段、私たちが見ているものは、可視光(かしこう)と呼ばれるもので、目に見える範囲の光を見て生活をしています。
ところが、太陽からの日射というのは、目に見える光もあれば、目に見えない光も含まれていて、人間が認識できない日射の一部分を、紫外線といいます。
ただ、人間には見えないというところが特徴的で、地球上に生息している虫や鳥などの多くは、紫外線が見えることが明らかになっています。
では、紫外線はどの様な性質をもっているのか、確認しておきます。
- 紫外線の大部分は衣類や建物を通過しない。
- タンパク質を変化させて皮膚の弾性を老化させる。
- DNAにダメージを与える可能性も考えられる。
- 細胞の機能を活性化させる。
- 皮膚に紫外線をあてるとビタミンDが生成される
この様な性質があり、人間にとって、良い面と悪い面が混在している状態です。
ですから、完全に紫外線をカットすることを目指せば良い(実際には難しいですが)というものではなく、適度な距離感で付き合っていく必要があります。
ただ、皮膚への影響は、やはり誰もが避けたいところですから、紫外線をカットする様なクリームや窓に貼るシートなどが利用されているのが現状です。
最近の窓、サッシは断熱性が随分高くなってきましたが、古いものの場合、冷房が効きにくいと感じる場合もあります。
室内の熱の出入りが最も大きいところは窓なので、この様なシートを貼るだけでも、冷房の効果は十分感じることができます。
現代は、この様な優れたものもありますが、古来から人々は、紫外線を防ぐ工夫をしてきました。
どの様な工夫をしていたのか、詳しく見ていきましょう。
古来から行われてきた、紫外線から身を守る工夫
現代とは違い、昔は、
という考え方が大原則にありました。
その理由はとてもシンプルで、寒さに対しては次の方法で簡単に対応することができるためです。
- 服をたくさん着れば良い。
- 火を使えば暖かくなる。
その為、暮らしを考える時には、とにかく暑さ対策をどうするのがいいのか?を考えることが最優先されてきました。
実際には次の様なことが古くから行われていました。
和紙で作った日傘を利用する
この様な和傘は、現代でも見かけることがあります。
竹などで骨組みを作り、和紙を貼って作られていて、平安時代から使われていました。
後に、和紙に油などを塗って防水するようになり、さらに多くの人に利用されるようになりました。
和紙の原材料は、コウゾと呼ばれる低木で、後に触れますが、木が紫外線を吸収する性質があることを踏まえると、和傘は非常に優れた道具だと言えそうです。
風通しを良くして、大きな軒のある住まいにする
近年では、軒がしっかりとある家というのが随分少なくなりましたが、軒は、夏の紫外線・暑さを凌ぐのにとても重要な役割を果たしていました。
太陽の高度が高い夏の光は、室内に入らないようにし、太陽高度の低い冬の光は、室内に入るようにした見事なアイディアです。
また、ふんだんに木を使って家を作り、茅葺の屋根にすることで、紫外線はかなり吸収できたのです。
その証拠に、現代でも上の写真の様な古民家に入ると、窓は大きく開いているにも関わらず、想像以上の涼しさを感じることができます。
近年は、エアコンや床暖房などが普及したために、「軒は必要ない」と言われる方もいらっしゃいますが、私は、立地条件などにもよりますが、軒がある家の方が、より自然な暮らしができると考えています。
先人はこれらのことを感覚的に行なってきたのでしょうが、近代に入り、
ということもデータで明らかになりました。
ビルが作る日陰と森林が作る日陰の違い
紫外線は、先にも触れたように、「紫外線の大部分は衣類や建物を通過しない」という性質をもっています。
ところが次の二つの場面を想像してみましょう。
- 商業ビルが並ぶ間にできた日陰で休む。
- 木漏れ日がある森林の日陰で休む。
きっと、大多数の人が「森林の日陰」の方が、涼しさや安らぎの様なものを感じる印象をもったと思います。
木漏れ日があるということは、日射が直接漏れてきている状態であり、当然、紫外線も漏れてきている状態であるにも関わらず、涼しさを感じるのはなぜでしょうか。
それは、
によるものです。
ビルのコンクリートなどは、確かに紫外線を通しませんが、紫外線を反射してしまいます。
一方、木は紫外線を吸収するために、光が柔らかく、涼しくなる様な印象を与えると考えられています。
実際のデータを見ても、杉は紫外線を10%程度しか反射しないのに対して、コンクリートは30%程度反射することがわかります。
先日、ある知人がこんな話をしてくれました。
確かに、多くの室外機があり、たくさん車が走っているというもの影響していると思いますが、地面にはアスファルトが敷かれ、コンクリートで固められた街には、多くの紫外線が反射しているとも考えられます。
なぜ、木は紫外線を吸収するような性質を身につけたのか?はまだまだ謎ですが、きっと、紫外線を吸収してあげると、森に住む生物が生活しやすくなり、自分も生存しやすかったのだと推測しています。
真夏にこんなことを考えると、「環境・エコ」が流行りの様に言われ、新しい技術がどんどん開発されていますが、身近に、問題を解決するヒントがたくさんある様にも感じます。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
誰かのためになることをすることで、自分も豊かになれる…そんな普遍的なことを木はずっと前から私たちに発信し続けてくれている気がしてなりません。