【育児と住まいの環境】自律神経を鍛え元気な子どもに育てる

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住まいと人の成長は深い関わりがあるのか?そんなことを追求する。住まいとアレルギーやアトピー、学力との関係にも注目している。現在、国内外の子ども達と関わりながら、住まいに関する書籍や冊子などの連載も行っている。要するに住まいのオタクである。

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学級懇談会などを行うたびに、「どんな子どもに成長したら嬉しいですか?」という質問をよくしたものです。

子どもに求めるものはあまりにも多いために、なかなか一言で答えるのは難しいというのが正直なところだと思います。

例えば、

  • 楽しく元気に登校することができればOK
  • 本が好きになってくれたら嬉しい
  • 友達に優しくできる人になって欲しい

こんな声をたくさん聞いてきましたが、これらができるのも、身体が元気であるという前提条件が整っている必要があります。

ところが、近年になって、

子どもの自律神経が危ない

という言葉をよく聞くようになりました。

あなたもどこかでこんな言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。

そこで、

  • 「子どもの自律神経が危ない」とはどういう状態で、子どもがどんな症状をするのか?
  • 子どもの自立神経を鍛えるために今日からできることは?
  • 子育てを意識した住まいを作る場合に注意したいこと

について、教育現場の経験も踏まえながら見ていきましょう。

結 論

自律神経が鍛えられた人は、ある程度の苦難も乗り越えることができるので、意図的に鍛えようとすることが、育児でも大切。

 

自立神経とは何か?住まいの環境を見る前に知っておきたいこと

大人の社会では、残念ながら「自律神経失調症」という言葉が随分身近になってしまいました。

自律神経失調症は、検査を行っても特別な異常が見られないが、頭痛・めまい・腹痛・倦怠感…などあらゆる症状を引き起こすものです。

専門家でなくても、「自律神経とは何か?」を知っていれば、多々見えてくるものがあるので、知らない方は、この機会に簡単に理解しておきたいものです。

 

自律神経とは何か?

一言でいうと、

意識していなくても、臓器などが働くように信号を伝える神経

です。

例えば、「スクワットをしよう!」と言われると、あなたは意識して床に立ち、膝を曲げようと思うはずです。

ところが、「胃や腸を動かしてください」と言われても、どうすればいいか分からないものです。

だからと言って、「胃や腸が機能しない」ということはありません。

あなたが意識しなくても、食事をすれば、胃や腸は仕事をしてくれます。

もちろん、胃や腸だけの機能だけではなく、汗をかく、寒いからふるえる、緊張するなど様々な現象も無意識に起きます。

この、あなたが無意識のうちに発せられた信号を伝えるケーブルの様なものが「自立神経」と呼ばれています。

 

最近大人に多い、自律神経失調症とは?

「失調」は、医学用語ですが、漢字を見るとその意味を推測することができます。

調節力を失うというイメージです。

つまり、自立神経の調節力が低下するということになるので、自立神経の先にある様々な臓器の働きに影響が出てくるということです。

自律神経の役割のイメージ

乾電池と豆電球を接続すれば通常、明かりが点灯しますが、断線しているとうまく機能しません。

乾電池も豆電球も正常な状態なのにおかしい…こんな状態と似たことが体内で起きているために、検査では異常がないのに…ということになります。

 

子どもの自立神経が危ないというのはどういうことか?

では、子どもの自立神経の調子が悪いとどういうことが起きるのか?

これまでに、不登校傾向の子どもや学習障害(LD)などの子どもとも関わり、彼らの担当の医師とも話をしてきた経験を踏まえてまとめておきます。

  • 土曜日・日曜日は元気だが月曜日になると体調が悪くなる。
  • 漢字の練習をすると大きな不安を感じる。
  • 友達に言われた一言がどうしても気になり、発熱する。

この様な場合、担当の医師によると自律神経がストレスによって正常に機能しないために、身体に異常が生じるという話でした。

豆電球の回路で言えば、ストレスのために回路が断線し、電球が正常に点灯しないという状態です。

 

ところが、一方でこんな考えも出てきます。

子どもとは言っても、ストレスのない子どもなんてほぼいないはず。どうして、ストレスによって自立神経がやられる子もいれば、問題ない子もいるのか?

 

自立神経は鍛えることができる!【育児でとても重要なポイント】

「自律神経や精神は鍛えることができる」というと、ど根性理論の様なものを思い描く人もいるかもしれませんが、その様な話ではありません。

現在(2020年)の段階で分かっていることは、

不安の量・強さと鉤状束(こうじょうそく)の太さは反比例する
長年の訓練などで鉤状束(こうじょうそく)は太くなる

ということです。

鉤状束とは?
脳内の扁桃体や側頭葉、前頭前野を結ぶ神経の束のこと。

言葉だけでは難しいので、この話を図で表現すると次の様になります。

不安・心配の程度と神経の束の太さは反比例する

つまり、

子どもが不安を乗り越えた時に、その不安は小さなものになり、少しだけ神経の束が太くなる(神経の機能がより安定的になる)というイメージです。

むかしから

あの人は図太い神経をしている

などと表現されてきましたが、見事だと感じさせられます。

子ども生活を想定して、もう少し具体的に見てみましょう。

 

子どもが不安を感じる具体的な場面

男の子

今日は、ひろしくん達と遊ぶから遊べないんだ。

娘さん

じゃあ、何で一緒に遊ぼうって言ってくれないの?

私のことが大嫌いなのかなぁ…。

こう捉えてしまうと、大きなストレスとなってしまいます。

けれども、これまでに何度も遊びを断られたお兄さんならきっと次の様に理解するでしょう。

お兄さん

残念!ひろしくんと約束してたんだね。

また今度遊べる時に誘うわな。

お兄さんだって、小さな頃は女の子の様に傷ついたことがあるかもしれません。

それでもこのストレスを乗り越えたからこそ、遊びを断られた程度では不安を感じず、神経の束も太くなってきているために、身体に大した異変がおきないと考えることができます。

 

一概に決めつけることはできませんが、私が関わってきた不登校や学習に大きな課題を感じている子の多くは、親の助けがとても手厚い家庭が多い印象でした。

親の助けが手厚すぎると、ストレスを自分で克服する力が鍛えられにくいということは想像できるはずです。

 

せっかくの機会なので、大人の場合についても見てみましょう。

 

SNSでアンチコメントを書かれてしまった!

あなたが、一生懸命考えたことを発信しても、残念ながら心ないコメントをする人がいるものですが、初めてその様なコメントをされた場合、結構ショックを受けると思います。

糸井重里さんもこの時はショックを受けられた様ですが、だからと言って、Twitterを辞めたり、ほぼ日刊イトイ新聞の更新を辞められたことはありません。

これまでにも、何度もこの様な経験をされてきたからこそ、多少のストレスを感じても、身体に大きな異変が生じることなく、仕事を続けていらっしゃるのだと思います。

 

では、どうすれば自律神経を鍛えることができるのでしょう。

 

自律神経を鍛える具体的な方法【住まいの環境で大きく変わる】

「鍛える」というと大きな負荷をかけるイメージがありますが、子どもでも大人でもいきなり精神的な大きなストレスをかけてしまうと身体に異変が生じてしまいます。

ただ、精神は負荷の状況が分かりにくいために、負荷の調整が難しいです

そこで、目に見える範囲で負荷を取り除かない努力を大人がする必要があります

 

子どもは走り回ったり、高い所にのぼるのが好き

子どもは走り回ったり、高い所にのぼるのも大好きです。

では、その時に恐怖心は0かというとそうではありません。

その証拠に、アスレチックなどの吊り橋では、最初はとても慎重に渡り、何度か試して大丈夫なのを確認した後に、早いペースで渡って楽しんだりするようになりますから。

でも、あまり調子に乗りすぎると怪我をすることも大人は知っています。

だからついつい、先回りして「危ないから辞めなさい!」なんて言ってしまいます。

けれども本当に大切なのは、怪我をしないことよりも、恐怖を克服すること、そして、調子に乗りすぎてもよくないということを学ぶことです。

この様な経験が自律神経を鍛えることにつながります。

 

暑さ・寒さを知ることも大切

暑い日、寒い日には、自律神経が活発に働きます。

暑い日には、たっぷりと汗をかき、極度に寒い時にはブルブルと震えます。

そんな時には、誰でもエアコンが効いた快適な空間に飛び込みたいものですが、ずっと快適な空間にいると、汗をかいたり、震えるなどして体温を調整する能力が低下します

 

思い切り喜び・悲しむ・感動するなどの体験をする

ここまで、負荷をかける様な話をしてきましたが、思い切り喜ぶなど、感情を動かすことでも自律神経は鍛えることができます。

深い喜びと悲しみは表裏一体でもあります。

例えば、欲しいおもちゃをポンっと買って貰っても子どもは喜びますが、誕生日まで待たされるなどの何か条件が加えられ、条件をクリアした後に買って貰った時とでは、喜びが大きく異なることは想像できるでしょう。

深い喜びの背景には、なんらかの負荷があるために、自律神経を鍛えることができるのです。

 

育児世代が大切にしたい住まいづくりの考え方

空気がうまい家®︎(床暖房もないが十分冬でも裸足で暮らせる)

住まいづくりを考える時、ついつい

コスト<快適性・機能性

に目が生きがちです。

当然、快適性に目を向けることも重要ですが、行き過ぎるのも大きな問題です。

また、子どもに適した住まい高齢者に適した住まいも多少条件が異なります。

例えば、

住まい全体の温度差を無くした方がいい。最低19℃は維持すべき。

海外の規定も踏まえてこの様に言われますが、

高齢者の方がヒートショックによる疾患により命を落とすリスク

を考慮して言われている数字です。

もし、育ち盛りの子どもがいて、年中19℃以上の室内環境が維持され続けるとどうなるでしょうか。

しかも、これからの時代は、スマートホームなどの機能が充実し、外出先からでもエアコンのオンオフが自由に行えるようになってきます。

子ども達の自律神経が活躍する機会が減ってしまい、益々デリケートになることは想像できるでしょう。

小児科の医師であり、子供の脳の発達について研究をする研究者、成田奈緒子先生も自律神経を整えるには「暑さ・寒さを体感できる時間を作ることが大切」と言われています。

 

日本人の暮らしは以前から外(暑さ・寒さ)と上手に付き合って暮らしてきました。

詳しくは、古民家風の住まいと近代的な新築の暮らし方の見えない違いとは?をご覧ください。

古民家風の住まいと近代的な新築の暮らし方の見えない違いとは?
これから住まい作りを考えていきたいという方から、ご相談をいただくことがあります。それぞれ、事情や要望は様々ですが、まとめると次の様な悩みになります。最新の技術を存分に生かした機能的な住まいがいいのか?従来からある技術・考え方を活かした住まい

 

また、高気密高断熱住宅の隠れた課題は、高気密高断熱の家に住んでみて後悔や良かったと意見が別れる理由の記事を参考にしてください。

高気密高断熱の家に住んでみて後悔や良かったと意見が別れる理由
住宅の性能、建築技術は日に日に高くなってきます。それと同時に、高気密高断熱であるほど良いという風潮も高くなり、数値化することが当たり前になってきています。今後、この流れはますます加速するだろうと思います。ただ、その一方で、高気密高断熱住宅に

 

子どもと自律神経の関係を見ると、過度な高気密高断熱化、かなり便利なスマートホーム化に力を注ぐことは、危険だということです。

とは言っても、省エネであることも快適であることも大切です。

ところが、近年の住まいの場合、大きくこだわらなくても、30年前の住宅より随分過ごしやすいものです。

 

スマホが普及してから、電話番号を覚えている家の件数がかなり減りました。

それと同じ様なことが、子ども達の身体にすでに起き始めています。

だから、

  • 最初から素晴らしい機能性をもった住まいづくりを目指さない
  • 多少、断熱性が悪いと言っても、30年前の住まいよりはるかに快適
  • 子どもが巣立った後に状況を見て、断熱リフォームを検討する

これくらい柔軟に考えた方がいいでしょう。

いずれにしても、住まいの機能・快適性よりも子どもが精神的にも肉体的にも逞しく育つということが、何よりも大切です。

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