住宅の性能、建築技術は日に日に高くなってきます。
それと同時に、高気密高断熱であるほど良いという風潮も高くなり、数値化することが当たり前になってきています。
今後、この流れはますます加速するだろうと思います。
ただ、その一方で、高気密高断熱住宅にして失敗した…という声があるもの事実です。
なぜ、
この問題について深く追求すると、キリがありませんが、最近の住宅に関する動向を見ながら、注意したい点をまとめて紹介します。
私の結論は、
- 高気密高断熱のメリットの有無を電気代に換算して損得を考えることは、住まいづくりのメインではない。
- 高気密高断熱住宅は素晴らしいが、ある程度の性能に留めておきたい。
いつもお伝えしている通り、住まいづくりに正解・不正解はありません。
一つの考え方として参考にしていただけたら嬉しいです。
高気密高断熱住宅がますます流行る理由
地球温暖化の問題が言われる様になってから久しいですが、その勢いは益々強くなり、感覚的にも以前と比べて随分、温暖になったと感じる方は多いでしょう。
こんな声も各地で聞きます。
先日(2020年12月7日)、カナダの方と話をしましたが、一旦雪は積もったものの全て溶けてしまったそうです。
その深刻さもあってか、低炭素住宅(2012年・正しくは低炭素建築物)と言う言葉も誕生し、ZEHや最近ではヒート20(HEAT20)という言葉も盛んに耳にする様になりました。
この他にも環境やエネルギー消費を意識した様々な言葉がありますが、基本的な考え方は、
という考え方です。
当然、室内の気密・断熱性が高くなれば、冷暖房効率が良くなりますが、地球に優しくできると考えることができます。
そして、こうした住宅を作れば、何らかの形で行政的な優遇措置が受けられるので、住宅を販売する側にしても、購入するあなたにとってもWIN-WINの関係になりそうです。
ところが、断熱性能を高めようとすると当然、コストがかかります。
当然、施工に掛かる費用や生活を始めてから必要だと思われる電気代も試算することができるので、次の様な会話になりがちです。
当然、高気密高断熱のHEAT20の高い基準のものにすると施工の費用は高くなってしまいますけどね。それでも、電気代がお安くなりますから、このグラフの通り、15年生活をされると、かけたコストは回収できますね。
ほんとね。それに、何らかの補助金などの事も考えたら、絶対お得だよね。
今後も様々な技術が開発されていくために、この流れはどんどん強くなっていくだろうと思います。
ただし、ここであなたは違和感を感じないでしょうか。
私が感じる違和感について、詳しく解説します。
高気密高断熱住宅にして光熱費を抑えることが目的?
生活をすると、どんな豪邸であっても古い家であっても光熱費は必要になります。
だから、少しでも光熱費を抑える工夫をすることはとても大切ですが、生活のしやすさ・楽しみ・家族の健康・将来性なども考慮して判断する必要があります。
光熱費の損得だけで住まいの重要な構造(気密・断熱)を見ようとする部分に私は違和感を感じます。
極端な例ですが、
年中室温は快適かもしれませんが、何だか楽しみがなさそうです。
ヒートショックの問題はなさそうですが、この様な部屋で私は人生を終えたいと思わないし、子どもを育てたいとも思いません。
つまり、暮らし全体を見つめて高気密高断熱の程度を決めていきたいということです。
当然、高気密であれば計画換気が行き届き、24時間で室内の空気全てが何度も入れ替わることを算出することができます。
けれども、何となく違和感を感じる…という人がいるのは、生活全体を見ているからでしょう。
日本の住まいは、季節の変化を楽しむ作りになっている
よく、ヨーロッパの住宅の基準は日本よりも遥かに高いと言われます。
その良い部分を真似ることは素晴らしいことですが、気候・生活スタイルが全く異なるということは忘れてはいけません。
詳しくは、古民家風の住まいと近代的な新築の暮らし方の見えない違いとは?で紹介しましたが、日本の気候は暑い・寒いがあるものの地球規模で見るととても温暖です。
それにも関わらず見事な四季の変化がある貴重な地域なのです。
だから古来から、人々は四季の変化を見つけ、生活を豊かにしてきました。
近年では、食べ物に関する技術も発達したために、食材の季節感は弱まってきましたが、それでも冬になって蟹料理を食べると、あぁ…幸せだなぁ…としみじみ感じるはずです。
あまりにも外側と内側の区別を明確にし過ぎると、本来、日本人がもっている楽しみが損なわれてしまいます。
寒くなってきたなぁ…今日は暑いなぁ…と言いながら窓を開け、外の気配を感じながら季節の空気感を楽しむことは私自身もしたいと思うし、子どもにもその感覚は大切にして欲しいと思います。
行き過ぎた高気密高断熱住宅の暮らしは疲労する
また、密閉された空間で、温度・湿度が緻密に管理されたところで生活をすると疲労感が強くなってしまいます。
その証拠は、特別な論文を持ち出さなくても、夏休みには都会から多くの人が避暑地に行く様子を見ると、自然の開放感が求められていることは明らかです。
少し、理論的な話をすると、
- 温度・湿度を管理するエアコンが常に動いている
- 自然な風の通りは少ない
- 床や壁材は、人工的に作られたもので多くの有害物質を放出している
この様な室内なので、避暑地の様な開放感やしみじみとした喜びが感じられません。
感覚的に理解できると思います。
ここで、さらに細かく「風」というものを見てみましょう。
とよく言われるし、あなたも疲労感を感じたことがあるでしょう。
その理由は、様々に考えられていますが、一定の風量が継続することが問題じゃないか?と考えられ、「リズム」のボタンが扇風機につけられる様になりました。
では、扇風機のリズムのボタンを押し、首振りをセットして風が当たる状態で眠るとどうでしょう。
実際に試してみたことがありますが、やはり何とも言えない疲労感を私は感じました。
この現象は、自然界の「ゆらぎ」と大きく関係します。
ここでは詳しく触れませんが、風が強くなったり、無風になったり、風の方向の変化には、ある程度の規則性はあるものの、一定ではないということです。
暖炉で燃える炎・清流の流れをしばらく見ていても飽きないのは、「ゆらぎ」と深い関わりがあります。
住まいづくりにおいて「ゆらぎ」を理解することはとても重要なので、また改めて記事を書こうとおもいます。
現代の高気密高断熱の技術で十分あたたかい家・涼しい家になる
「高気密高断熱住宅は悪」という様に感じた方がいるかもしれませんが、私は程度の問題だと思っています。
よくUa値が0.4以下であれば良いだろう…なんて言われることもありますが、こうした様々な数値だけで住まいの良し悪しは判断できません。
気密や断熱を優先した分、先に紹介したようなデメリットも出てきてしまうものです。
ですから、日本の文化的な側面、立地条件、家族構成、子どもへの願い(子育て観)…様々なことを考慮しつつ、高気密高断熱の程度を検討するようにしています。
写真の様な空気がうまい家®︎に住みたい…という方の中には、温暖な地域でも薪ストーブを検討される方もたくさんいます。
極論ですが、薪ストーブがあるのに、高気密高断熱に思い切り力を入れてしまうと大変なことになってしまいます。
注文住宅というものは、これから生活されるご家族の生き方・考え方を間取り・デザインの他にもどれだけ反映させることができるのか?という部分への挑戦でもあると考えています。
まとめ
高気密高断熱の社会的な流れを見ながら感じたことを書いてみました。
メリットはたくさんありますが、それとは引き換えに注意しないと見失うものもあります。
- 季節を感じたり、大切にする文化(年々季節感は弱くなってきているからこそ)
- 管理すればするほど自然の大きなうねり(ゆらぎ)から離れ、疲労感が強まる
これらは、どうしても数値化することはできませんが、暮らしの中で大切にしたいところです。
言葉でも説明は難しい部分でもあるために、気になる方は、体感して欲しいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。