歴史的大発見と言われるニュースきっかけに、
を深く見ていきましょう。
格好いい住まい・オシャレな住まいも大切ですが、それらを作るにもして今日伝える基本的な部分を理解した上で検討していく必要があります。
2020年11月に次の様なニュースが報じられました。
カイロで2500年前の木棺百基 エジプトで今年最大の発見
首都カイロ近郊のサッカラで約2500年前に埋葬された木棺が100基以上見つかったと発表した。木棺は開けられた形跡がなく保存状態が良く、記者会見した考古学者は「エジプトで今年最大の発見」としている。
Yahoo Newsより
https://news.yahoo.co.jp/articles/b52a7f212e30970345aa0f24d8520add59795f44
また、動画でご覧になりたい方は、以下を参照してください。
注目は、ミイラに集まっているようですが、2500年もの間、木棺がこの様に綺麗な状態を維持していたという点も注目したいものです。
住まい作りの視点でこの木棺を見ると、
- 木はほとんど劣化することがない
- 虫に食べられることもない
ということを教えてくれている一つの事例です。
なぜ、2500年もこの状態を維持できたのでしょうか。
それが分かると、できる限り自然に近い状態の住まい作りができるということです。
そもそも木が腐るのはなぜか?
これから住まい作りをしよう…というあなたにとっては、とても重要な話です。
せっかく新築したけれども柱が腐ってしまった…なんてことになれば、大変です。
また、中には外壁塗装会社の営業マンが訪問してきて、壁の内側が腐った写真を見せられた…なんて経験がある人も多いはずです。
けれども、その一方で、
清水寺の舞台の木は雨ざらしの厳しい環境であっても、約400年程度耐えてきました。
また、築100年を超える古民家だって、問題なく健在だ!ということもあります。
どちらが正しくて、どちらが間違っているということはありません。
どちらも事実で正しい現象です。
結論は、
ということです。
では、この違いはどうして生じるのでしょうか?
木が腐る仕組みはとてもシンプル!腐らす必要があるから。
木が腐る仕組みはとてもシンプルで、
です。
こう言うと、腐らない様に木材腐朽菌の対策をすればいいんだ!という考えになりそうですが、もっとも重要なのは、
です。
誤解していけないのは、腐らないものが良い訳ではありません。
現代は腐らないものが身の回りにたくさんあり、様々な弊害を起こしています。
例えば、プラスチックは経年と共に弱くなりますが、分解されて土に戻ることはありません。
これにより、大気や海が汚れてしまい、食品の問題にまで影響を与え、最近では、子どもの成長(ADHDやLDなどの発症)とも関連があることが明らかにされました。
この問題はかなり深刻で、プラスチックが原因で学校に行けない子どもがどんどん増えています。
詳しくは、子どもが危ない!化学物質過敏症の症状って?【自分の体験から】に掲載しています。
そのため、「土にかえる」ということは社会的にも重視されており、「土にかえるもの」ができると一つのニュースとして取り上げられます。
高機能でサステイナブル。「アイスブレーカー」の土に還るアウター誕生
2023年までに完全プラスチックフリーを目指す彼らは、その一環として新素材「メリノロフト」を開発。メリノウールにトウモロコシを原料としたポリ乳酸をミックスして作られた、100%土に還る自然由来素材である。
エキサイトニュース(一部抜粋)
https://www.excite.co.jp/news/article/Oceans_565732/ より
一見、腐らないものは素晴らしい様に見えますが、それではものが溜まる一方です。
そして、腐らないということは、そこから新しいものが生まれないということにもなります。
だから、「腐る」ということはとても大切なのですが、いつ腐るようにするかは、木材腐朽菌の生き方を知れば、調整できるものです。
先人は、この様な調整をして何百年も使える住まいや神社仏閣を作ってきました。
キノコ(木材腐朽菌)が好む場所は?
実は、食用キノコとして知られる
- シイタケ
- ヒラタケ
- マイタケ
- なめこ など
は、木材腐朽菌の一部ですから、これらがどの様な場所を好むのかを知っておくことは大切です。
木材腐朽菌が繁殖する条件は、次の3つが揃わないといけません。
- 酸素
- 適度な水
- 栄養分(木材の中の栄養)
このうち、どれか一つが欠けても木材腐朽菌は繁殖することができません。
そのため、木材をしっかりと乾燥させることは現代でもとても重視されています。
現代、住まいに使われている木材は、様々な方法でしっかりと乾燥させられているために2.適度な水の条件は阻止できていると言えます。
それなのに、なぜ柱が腐った…などという話を耳にすることがあるのでしょう。
長年放置されていても腐らなかった木の秘密とは?
清水寺の舞台が長年腐らないのも、エジプトで発見された木棺が腐らないのも理由は明確です。
また、近代の住まいなのに木材が腐ってしまった…というのも理由は明確です。
具体的に解説します。
エジプトで発見された木棺が腐らなかった理由
木棺が腐らなかったのは、地中に埋まっていたために、木材腐朽菌が繁殖するのに必要な酸素がなかったためです。
2500年ものとはいきませんが、地中から昔使われていた木製の道具が発掘されたというのも、酸素が足りないために分解することができなかったのです。
清水寺の舞台が腐らない理由
清水寺の舞台が腐らないのは、木材腐朽菌の繁殖に必要な水がないためです。
雨ざらしではありますが、風通しはとてもいい環境です。
梅雨時に雨天が続いたにしても、雨が上がればすぐに乾きます。
木材の中に雨が染み込むのではないか?直感的にそう感じる人もいると思いますが、木材の内部に水分はそう簡単に染み込みません。
その為、昔は丸木舟が活躍したのです。
もし、水分が簡単に染み込んでしまうと舟として木を利用することはできません。
生きている木にキノコは生えない
山に行くと、様々なキノコが生えています。
キノコが生える木を見てみると、先に紹介した3つの条件(酸素・水・栄養)が整っていることがわかります。
ただ、もう一つ重要なのは、
というものです。
キノコの役目は、「生態系にとって必要なくなったものの栄養を吸い取り、土に戻すこと」です。
ですから、生き生きと元気にしている木にに3つの要素が整っても生えることはありません。
【木が腐る理由】木が悪いのではなく、人と木の付き合い方が原因
こうして見ると、木はなかなか腐らない素晴らしい建築素材ということがわかりますが、なぜ、腐る木が出てしまうのでしょう。
それは、
- 風通しの悪さ
- 死んでしまった木材は調湿能力が落ちてしまう
これが原因です。
近代の行き過ぎた高気密・高断熱化によって構造の風通しが低下
高気密・高断熱が当たり前の風潮となりました。
もちろん、寒い冬は暖かく、夏はエアコン一台で全室ひんやりという暮らしは快適です。
ただ、断熱性を高めようと思えば、分厚い壁にしたり、分厚い床にしなくてはいけません。
もちろん、そうすると室内だけに限らず、構造部分の風通しが悪くなります。
風通しが悪い状況で、壁面内部に結露ができてしまうとなかなか乾かないために、木材腐朽菌にとっては非常に好都合な場所になるわけです。
しかも、構造の材質にこだわらない場合は、集成材が使われるために、微妙な湿度の調整が行われません。
その結果、壁面内部が腐ってしまうという現象が起きてしまいます。
生きた木材の場合、適度な調湿を行う
生きた木材(無垢材)には調湿をするという働きがあります。
そのため、仮に内部結露ができたにしても、ある程度、無垢材が湿度を調整するために、木材腐朽菌が増殖すること抑えることが可能になります。
詳しくは、無垢材に調湿効果はあるのか?【エアコンの利用量が減少する】で紹介しています。
近代的な住まいにも関わらず、耐久性がないとも言われる要因を挙げてみました。
では、この問題を回避するにはどう考えたらいいのでしょうか。
自然と戦う住まいか? 自然と共に生きる住まいか?
住まいづくりに何が正解・不正解というものはありません。
あなたが、どの様な理念で住まいを作りたいかが最も重要です。
ただし、木が腐らない・痛まない…ということを大切にするのであれば、
であることが必要です。詳しく説明します。
自然と戦う住まい!高気密高断熱住宅
高気密・高断熱の程度にもよりますが、かなりの性能が期待できる場合は、その分、風通しが悪くるなるという理解が必要です。
暑さ・寒さは自然が私たちに与える厳しい現象ですから、これを遮断しよう!という発想ですから、私は「自然と戦う住まい!」という認識をしています。
自然と戦って勝てる訳がないので、防御を入念にすることになります。
- 分厚い壁にする
- 結露計算をする
- 内部が木材腐朽菌にやられない様に防腐剤を使う
こうした対策がとても重要になります。
当然、こうした対策をするのにもコストが必要になってきますが、ここで、一つの悪循環の様なものが生まれてしまいます。
一つを守るために、その周囲を守り、その周囲を守るためにまたその周囲を守る…上の図の様な循環にはまっては、よくないと思っています。
これまで、「防腐剤」をたくさん使った材料で建てた住まいで辛い思いをされた方を見てきたために、私がいきついた今の結論です。
さらに詳しくは、私たちについて【PROFILE】をご覧ください。
自然と共に生きる住まい!ある程度の断熱性でも高性能
住まいにある程度の気密や断熱性能は必要だと思っていますが、一つ一つ丁寧に施工するだけで、十分、冬暖かく、夏は涼しい住まいになります。
床材は写真通りの分厚い無垢材を使用しているので、それだけでも底の方から冷える…なんてことは十分防ぐことができます。
当然、床暖房の設置も必要ないとお伝えしています。
快適さを求めることはとても大切ですが、自然との戦いはまぁまぁのところで留めて、悪循環が生まれない程度にしておくことが大切です。
ミイラの木棺や清水寺の舞台は、現代人にそんなメッセージを届けてくれている様に思います。
かなり長くなった上に、マニアな話にも関わらず最後までお読みいただきありがとうございます。