落ち着く部屋の色と心理【ファーストフード店の店内から学ぶ】

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数々の店舗、住まい、文化財の新築・修繕のプランを行う。自由度が低く、制限があればあるほど建物のプランを考えるのが楽しくなってくるという習性がある。プランを考えている時間が至福の時間。

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2020年、コロナの影響もあり、室内で過ごす時間が多くなった人が激増しました。

長らく室内で過ごしていると

  • もう少しすっきりした部屋にならないかなぁ?
  • 長く居ても落ち着ける部屋ってどんな部屋だろう?
  • この機会に断捨離をしたいけれども、その後どうしよう?

多々、思うことはあるはずです。

先日も、京都市内の方のリノベーションプランを相談している時にこんなことを言われました。

家族みんなで楽しく過ごせるリビングも大切だけど、時には一人になって落ち着ける様な場所も欲しいです。落ち着ける部屋ってどの様な感じにしたらいいのでしょう。

そこで、今回は、落ち着く部屋をテーマに話をします。

 

結 論

ファーストフード店は回転をよくするために落ち着かない空間にしている
つまり
ファーストフード店と真逆の空間にすれば落ち着いた空間になる

ということで、早速解説していきます。

決してファーストフード店を悪く捉えている訳ではありません。ビジネスとして見た時に、お客様の回転を少しでも良くしようと、考え抜かれた素晴らしい発想と心理を使った技術だと思っています。その視点から学べることが多いという意図で話を進めていきます。

 

ファーストフード店の内装は、落ち着く部屋の色?

上の写真は、大手ファーストフード店の店内の写真です。

また、別グループのフェミリーレストランの内装はこの様になっています。

 

一方、懐石料理店やお寿司屋さんは、この様な室内になっています。

違いは明らかに分かります。

ファーストフード店は、明らかに派手な色が使われていることが分かります。

では、派手な色使いだとどうしてお客様の回転が良くなるのでしょうか

心理的なことを踏まえて、その理由に迫っていきましょう。

 

落ち着く部屋のポイントは、刺激の強さがカギ!

落ち着く部屋、落ち着かない部屋の違いを理由をとても分かりやすく解説したものが、実は小学校六年生が使用している国語の教科書(光村図書)に掲載されています

身の回りの環境によっても「心の時間」の進み方は変わります。これは身の回りから受ける刺激の多さと関係があります。実験は、円で表した刺激の数と時間の感じ方との関わりを調べたものです。複数の参加者、様々な数の円を、同じ時間、映した画面を見てもらいます。そして、円の増減によって、円が表示されていた時間をどのくらいに感じたのか調べました。すると、表示時間が同じでも、円の数が増えるほど、長く映っていた様に感じる傾向があったのです。

(時計の時間と心の時間 より)

つまり、刺激の多い室内にいると、私たちは長く感じるということです。

ファーストフード店などのように、お客様の回転を良くしたいお店は、意図的に刺激を多くして、店内滞在時間を長く感じさせる工夫をしているのです。

お姉さん

随分ゆっくりしたから、帰らないとね。

ところが、実際には30分しか経過していないという風になるのが、刺激の強い空間を作る時の意図なのです。

時間と心理との関係は、こちらを読むとより深く分かります。

 

赤い部屋と青い部屋の研究・部屋の色で心拍数が変わる

(画像:建築回収解決.COMより)

赤で統一された部屋と青で統一された部屋に人が入るとどう感じるのか?

これらについて調べた有名な実験があります。

 

体感時間を調べる方法

  • 実験複数の人を集め、赤い部屋に入るグループ・青い部屋に入るグループに分けます。
  • それぞれの部屋に入り、1時間が経過したと思ったら部屋の外に出る。

結 果

  • 赤い部屋のグループ
    実際に経過した時間:40〜50分
    心拍数:増加
    体温:高くなる
  • 青い部屋のグループ
    実際に経過した時間:70〜80分
    心拍数:減少
    体温:低くなる(リラックスモード)

 

 

近年、スポーツの世界にも変化が起きている!

近年の陸上競技場のトラックの色は、青色です。

従来は、レンガの様な色のトラックだったのですが、

青色にすることで、心拍数が抑えられ、選手がリラックスできるようになります。

スポーツをする場合、情熱的な赤の方が良さそうな印象もありますが、トラック競技のように、シンプルに「走る」という場合には、リラックスして冷静になることの方が重要だそうです。

反対に、アメフトの様なスポーツは情熱的な方がいいのかもしれません。

アメフトの選手が利用するロッカールームは、赤が目立つような作りになっている事が多いです。

また、Hill(2005年)らが行った研究では、ボクシング,テコンドー,アマチュアレスリングなどでは、赤いユニフォームを着る選手は勝率がいいと分析しました。

 

この様なことを踏まえても、

部屋の色・刺激の強さと人の暮らしは深い関わりがある

と言うことができます。

 

子どもの落ち着き、勉強への集中も刺激がカギ!

空気がうまい家

「子どもが勉強に集中できるようにして欲しい。」と言われる場合があります。

これまで、色と人間の反応の関係を見てきましたが、

冷静になれて、
時間の経過が早く感じられる(集中できる)のは、

刺激が弱い空間ということになります。

もちろん、刺激の弱い空間にすれば、勉強がバリバリできて、成績がアップするという魔法の様なことが起きる訳ではありません。

集中しやすい環境になるということですが、新築やリノベーションをした場合、その環境がずっと続くために私はこの環境作りは大切にしたいと考えています。

 

ただ、先ほど紹介した、赤い部屋と青い部屋の実験…。

実は、目隠しをして部屋に入室しても心拍数や体温に変化が見られたそうです。

なぜ、その様な変化が起きたのか?

「色」は光の波の長さの違いによって生まれるものだから、いくら目隠しをしても、その波に体が反応したのではないかとも考えられています。

 

なぜ、赤に反応し、青があるとリラックスできるのか?

自然の世界で見られる赤や青のものを集めてみると、何か発見があるかもしれません。

赤いもの青いもの
夕焼け・紅葉・血液・花・トマト・いちご青空・綺麗な海・湖

こうして見ると、赤も青も自然の中では、意外と少ないものです。

 

花は刺激的な色で、虫を集め受粉させるチャンスを拡大しようとしています。

トマトやいちご・さくらんぼなどは、鳥に食べて欲しくて赤色になるそうです。

また、怪我をした場合には、すぐに対処しなくてはいけません。

だから、血液は刺激的な赤色なのかもしれません。

 

反対に、綺麗な青空・綺麗な海の存在は、人が生きていくうえで、特別危険な存在になるということはありません。

だから、私たちはリラックスできるのではないでしょうか。

 

たかが色。

そう言えば、それまでもかもしれませんが、私たちは知らず知らずのうちに、色からも大きな影響を受けているような気がします。

あなたにとって住まいは、これから何十年と一緒に生活をする相棒のようなものです。

そう考えると、できるだけシンプルな空間にしたいなぁと思うのです。

 

最近、怒りっぽいなぁとか、集中できないなぁと感じた方は、部屋をシンプルにすることから初めてみてはいかがでしょうか。

 

環境がどだけ人に影響を与えるのか? 次の記事も参考に!

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