これから「住まいを建てよう」という方にとっては、住まいの強さはどうなのか?という視点はとても大切な視点となります。
ただ、私が直接、お会いしたお客様の話を聞くと、
という認識がとても強い印象を受けます。
もちろん、「強さ=構造によって決まる」というのも間違いではありませんが、いくら素晴らしい構造で住まいを作っても、その材料の質が弱ければ、意味がないことになってしまいます。
極端な言い方になりますが、
こんな風に捉えると、構造も大事ですが、それ以前に木材そのものが大切だということが感じられるはずです。
一般的に、強さが語られる場合、構造の話がなされることが多いので、ここでは、
ということに迫りたいと思います。
木の細かい成分や木の内部で見られる工夫について解説します。
生えている木が強い理由を成分とミクロな構造で知ろう!
木の成分や内部の構造などと言うと、聞き慣れない言葉がたくさん出てきそうですが、ここでは、「これから住まいを建てよう」という方に向けて、できるだけ簡単に解説します。
そもそも木は何でできているのか?
春は、山菜のキング「タラの芽」の美味しい季節です。
いいタイミングで「タラの芽」を収穫することができれば、タラの芽はとても柔らかく、独特の香りを楽しむことができますが、収穫のタイミングを逃してしまうと、硬くて食べることができません。
なんとなく想像できると思いますが、思い切り繊維質の塊です。
つまり、繊維質が最も多く、
- セルロース(50%)
- ヘミセルロース(25%)
- リグニン(25%)
で構成されています。
これらの名称を覚える必要はありませんが、木の構造はよく鉄筋コンクリートに例えて表現されます。
セルロース | 鉄筋 |
ヘミセルロース | コンクリート |
リグニン | コンクリートと鉄筋を繋げる |
この3つのものは、どれも重要な役割を果たしているのですが、この中でも中心的な役割を果たし、名前もそこそこ有名なセルロースの構造を見ていきましょう。
鉄筋の役割を果たすセルロースの構造はもはや神秘
鉄筋のような役割を果たすセルロースは、ブドウ糖が繊維状に連なってできています。
この繊維構造は、とても細かいものが束になって、その束と束とがまた、一つの束を作っているような構造をしています。
複雑な図になってしまいましたが、直感的なイメージで言えば、
こんな構造をしているのです。
この一番細い糸(繊維)は現代の技術を駆使しても人が思うように自由に並べるのは非常に困難だといわれています。
それほど緻密なことを木は私たちの気づかないところで当たり前の様に数億年とやってきたのです。
この時点で、下の図の様な力には強いということはイメージできるはずです。
細胞の作りを丁寧にみると横向きの力にも強い構造をしている
少々、強い風が吹いたところで、木は簡単に折れません。
もちろん、「しなる」ことで力を逃すということもしていますが、それだけでは到底間に合いません。
やはり横向きの力にも対応できる様な構造をしています。
分かりやすくするために、とても簡易な図にしていますが、細胞壁は、内側の層と外側の層に分かれています。
この繊維の向きが上の図の様に異なる向きで構成されているために、横向きの力にも耐えられるようになっています。
目に見えない世界で木は努力をしてきた
ここまで、見るとその辺りに生えている「ただの木」でさえも、非常に巧妙な作りをしていることが分かります。
木の誕生からどの様な過程を経て、この様な進化をしてきたのか分からない部分も多々ありますが、厳しい自然環境の中で、生命を繋いでいくには、この様な構造がベストだったのでしょう。
そして、こんなにも複雑な構造をしているからこそ、木は重さあたり最も強度が強いものの地位を確立することができたのだと思います。
この事を知って、建築という部分で注意したいのは、山から切り出した木を丁寧に扱ってやらないと、この目に見えない素晴らしい木の知恵を台無しにしてしまう可能性も十分にあるということです。
ここまで、読まれたあなたならお気づきかもしれませんが、目に見えない世界観を台無しにしてしまった木材で、素晴らしい構造の建物を作っても、木がもつ本来の力は発揮しにくくなるということです。
科学・物理的な視点で、木を加工し、便利に使おうとする視点をもつことも大切ですが、やはり、その根底には、こんな素晴らしい構造をして生きてきた木を尊敬する気持ちをもっておきたいのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
改めてこんな記事を書きながら、木は賢いなぁ…と感じています。