新築やリノベーションを検討する際に、
- 大手ハウスメーカー
- ホームセンターなどの量販店
- 地元の工務店
のどこがいいのか悩むことがあります。
私の場合、工務店を営んでいますが、「ハウスメーカーとの一番の違いは何ですか?」という質問を受けることも多くなってきました。
この3者の違いを詳細に解説するとなると、それだけで膨大な量になってしまいますから、理念の部分をベースに解説したいと思います。
結 論
木材について学ぶと同時に、家づくりの考え方についても理解を深めていただけたら幸いです。
大手ハウスメーカー・量販店・工務店の基本的な大きな違い
これらの言葉に厳密な定義はありませんが、ざっくりとした全体的なイメージを紹介します。
ハウスメーカー | 積水ハイム・住友林業など | 全国展開をしている。 ブランド的なイメージがある。 規格化された部分も多い。 |
量販店 | コーナンリフォーム ヤマダ安心リフォームなど | 部分的な改修業務が多い。 安価である。 |
工務店 | 地元の工務店 | 地元中心の事業を展開。 個別対応。 得意・不得意があることも。 |
とても簡単ですが、この様なことが分かれば、住まいに対する理念の様なものが見えてきます。
大手ハウスメーカーだからこそできること・できないこと
ご承知の通り、大手ハウスメーカーはたくさんありますが、基本的には、事業を全国展開しています。
例えば、へーベルハウスと聞くと、「確か軽量鉄骨の住まいだったかなぁ…」とイメージする人も結構多いと思われるくらい認知されています。
また、住友林業と言えば、「木にこだわった住まいを作っていそうだ」と感じる方も多いと思います。
ここにメリットとデメリットが存在するということを解説します。
全国展開をし、認知が高いからこそできるメリット
住まいづくりを考える時に、難しいのが「何をメリットとするのか?」ということです。
住まいの良し悪しは、住まれる方の好みにも大きく左右されるので、ここで私がメリットとして取り上げたことが、あなたにとっては、大きなデメリットにしか感じられないということも考えられます。
この辺りのギャップは了承の上、読み進めていただけたら嬉しいです。
品質が安定した住まいを作ることができる。
分かりやすく表現するなら、こういうことです。
ということです。
例えば、先に例として挙げた「住友林業」の住まいは、
- 自由設計
- 予算に応じた調整
ができるにも関わらず、やっぱり住友林業らしい住まいに仕上がるなぁと感じています。
それは、設計が自由にも関わらず使用される建材の多くが、住友林業のものになるためです。
つまり、どこの地域で施工するにしても、品質が安定した建材が供給されているためにできることなのです。
規格化できたものはコストダウンにつなげることも可能?
いくら自由設計と言っても、多くの住まいに共通する部分というのがあります。
ハウスメーカーの場合、全国で施工する棟数をあわせるとかなりの数になります。
その為、ある程度規格化しておき「こういう形で家を建てますね」とまとめて認可をとっておくことができます。
その範囲内で施工をすれば、家を建てる時に必要な手続きを簡略化させることができるので、形式上、コスパの良い住まいになるということです。
ただ、ここで私が形式上と言ったのは、私がハウスメーカーで仕事をしていた時の経験を踏まえると、ブランド戦略的なことも考えて、膨大な販促費が掛けられている場合もあるので、メリットが相殺されているかなぁと感じています。
もちろん、この辺りは、それぞれのメーカーによって異なります。
デメリットは個性を出しにくいということ
この様にメリットを見ると、必然的にデメリットが見えてきます。
- 全国似た様な品質を維持しないといけない。
- 規格化された範囲内で施工をしないとコストを抑えられない。
つまり、個性を打ち出しにくくなります。
そもそも住まいに個性が必要かどうか…ということも考える必要はありますが、家族ごとに生活スタイルがあり、それぞれの家族にあった住まいを作るとなると、やはり個性は重要だと思います。
海外の方は、最近の新興住宅街を見ると「とても綺麗な街並みだけど、どの家も同じ家だね。」とよく言われます。
よく見れば、施工会社による違いは感じられますが、室内に入った瞬間、「うわぁ…ここは他と全然違う!」と感じるほど個性ある住まいは随分少なくなってきました。
大手ハウスメーカーが無垢材を好んで扱わない理由
大きく事業を展開している大手ハウスメーカーなどは、品質を一定に保つために、無垢材を扱うことを好みません。
無垢材は、一本の木を切り出し、それを必要な形に製材したものですから、個体差があって当然という考え方が根底にあるためです。
集成材を使うと強度の個体差は小さくなる
無垢材を扱う上で難しい点はたくさんありますが、最も分かりやすいのが「節」の存在です。
例えば、次の様に節があった場合でも、木材の強度は変化します。
ところが集成材にすれば、この節の部分を取り除き、貼り合わせることで、無垢材の欠点を補うことが可能になります。
さらに、木の様々な強度にバラツキがあっても、重ね合わせて一本の木材にするに、このバラツキが小さくなるので、木材の品質を一定に近づけることができるわけです。
つまり、
- 木材の良い性質の部分は、悪い性質の部分を補うことができる。
- 木材の悪い性質の部分は、良い性質の部分が補ってくれる。
ということが可能になるので、品質にバラツキがない様にするために、集成材・化粧板を用いることはとても有効なのです。
実際に、住友林業の構造材を見ると集成材で品質を一定に保とうとされているのが分かります。
化粧板を使うことで、木目の風合いを一定に保つことができる
見た目も住まいづくりではとても重要な点です。
自然の木目を全面に押し出すのもいいですが、自然が作り出す木目に全く同じものは存在しません。
つまり、見た目にバラツキが出てしまいます。
これを防ぐために、化粧板を貼って風合いを一定にすることはよく見られる方法です。
もちろん、化粧板をどの様に作るかによって違いは生じますが、印刷技術を使えば安定的な木目を作り出すことが可能になります。
じゃあ、地域の工務店が建てる住まいは、品質がバラバラになってしまうの?
品質のバラツキは自然に生じるもので、味わいと考える【弊社の場合】
地域の工務店は、先に触れた様に、「得意とするものがそろぞれ異なる」ために、一概にこうだ!ということは難しいです。
弊社の場合(小さな工務店)は、塗装なども一切行っていない無垢材に、特別な漆喰を使って施工をしていますから、
ということをお伝えしています。
これが品質とどう関係するのか詳しく解説します。
無垢材は1本・1枚ずつ表情が違う
こちらの写真を見ていただいても分かる通り、全面に無垢の床材(音響熟成®︎木材)を貼っても、色の濃いところ、薄いところがどうしても出てしまいます。
そして、この様なバラツキが他の住まいでも見られるかというと、あまりバラツキが見られない住まいもあります。
もちろん、床材に使用している音響熟成®︎木材は、全て1社(カイケンコーポレーション)しか、生産をしていませんので、同じ工程を経て、床材になっているのですが、この様な違いが生じます。
この違いを良しとするのか、ダメとするのかで認識は大きく変わりますが、施工を依頼してくださる方々は大抵次の様に言われます。
同じ人間でも、生き物である以上、社交的な人もいれば、社交的じゃないけれどコツコツ努力をする人などいろんな人がいるから、面白いのと同じ様に、住まいもいろんな表情がある方が楽しいと思うんです。
このバラツキを良いと捉えてくださった方にとっては、他では味わうことのできない空間を作ることができます。
漆喰も塗り方で表情が変わる
ご存知の通り、漆喰は塗り壁ですから、ビニルクロスの様に完全に同じパターンで仕上げることはできません。
もちろん、ご希望があれば漆喰の塗り方を調整することは可能ですが、あくまでも人が作業を行うために、機械で作ったものの様な均一さを出すことはできません。
人がもたらす「ゆらぎ」の様なものを味わいとして捉えてくださる方であれば、クロス貼りとは違った印象の空間に仕上がります。
こうした部分にバラツキが出るのも、大手ハウスメーカーでは問題と捉え、私たちの場合は味わいと捉えるというところが大きな違いだと感じています。
まとめに変えて
大手ハウスメーカーの住まいも私たちの様な小さな工務店の住まいもそれぞれの良さがあると思っています。
ただ、私の場合、無垢材は品質に個体差があると分かっていながらも、無垢材や漆喰をメインに扱っているのは、次の理由があるためです。
- 自然のありのままの姿に触れる機会が激減している。
- 大きく加工したものに囲まれることによって、アレルギー・アトピー・化学物質過敏症などに悩まされる人が増加してしまった。
- 自然にあるものは、必要に応じて適宜変化してくれることを感じて欲しい。
- 古来から大切にされてきた、自然を見る視点は今後も大切にして守っていって欲しい。
時々、時代にあっていないじゃないか!と言われることもあります。
けれども、日本食が世界で高い評価を受けているのは、先人たちが自然をじっくりと見つめてきたためだと思っています。
この視点は、食に限らず、あらゆる分野でとても大切なことだと考えているために、これからも、個性ある自然に近い家づくりをしていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
有名な陶芸家の方が、「二度と同じ作品は作れないよなぁ」と言われていたことを思い出します。