新しく住まいをもとうとされている方は、どこかで「ZEH」という言葉を見たことがあるのではないでしょうか。
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのことで、なんとなくランニングコスト抑えられるような印象を受けます。
ここでは、ZEH(ゼッチ)とは何か?もう少しくわしく見ていき、実際に生活をする私たちにどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
ただ、私はZEH(ゼッチ)が普及することに対して、大きな疑問を感じています。
その理由についても詳しく触れていきたいと思います。
ZEH(ゼッチ)とは、何なのか詳しくみてみましょう。
ZEHとは、
Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。
断熱性や省エネ性能を上げることに加えて太陽光発電などでエネルギーを創ることによって年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明など)の収支をプラスマイナス「0」にする住宅のことを言います。
収支が0になるって良いですね。
すごい経済的じゃないですか?
国の方もエネルギーの消費量が増えてきていますから、ZEHの普及に力を入れていますね。
具体的にどんな住まいになるのですか?
ポイントは2点あります。
消費するエネルギー量を削減する。
断熱性の高い住まいにすると、冬の暖房や夏の冷房に使用するエネルギー量を抑えることができます。
ただ、問題となるのは、窓際です。
住まいの熱の6割〜7割が窓を通して逃げていくとも言われていますから、場合によっては窓の大きさなどに制限が加わってしまうことも出てきてしまいます。
もちろん、断熱性・遮熱性の高い窓ガラスにしないといけないために、通常の窓ガラスより費用が高くなってしまいます。
消費するエネルギーを作る。
消費するエネルギー量をいくら抑えても、収支が0になることはありません。
消費するエネルギーと同等程度のエネルギーを作る能力を住まいがもつ必要があります。
つまり、太陽光発電システムやエネファームを設置する必要が出てきます。
ZEH(ゼッチ)のメリットとデメリットとは?
メリットはとてもわかり易いと思います。
通常通りに生活をしている限りどうしても必要となる光熱費が、ZEHにすることで概ね0円になるわけですから、めちゃくちゃ魅力的です。
実際、様々なハウスメーカーなどはシュミュレーションをしてくれ、お得になるかどうか、アドバイスもしてくれます。
それに、災害時の停電などにも強いというのも大きなメリットでしょう。
ただ、実際消費者はこんなことを感じているようです。
当然のことですが、こうした住まいを建てるとなるとそれなりの設備投資が必要となります。
住宅用太陽光発電システム5kwの2018年の相場価格は、概ね次の通りです。
設置容量 | 設置費用総額 | 1kwあたりの単価 |
5kw | 161万円 | 32.2万円 |
もちろん、メーカーなどによって価格は異なってきますが、概ねこのくらいの費用が必要となるわけです。
もちろん、長い目で見ると使用状況にもよりますが、いずれこの費用は回収できるというシュミュレーションをどのメーカーも行っています。
ただ、屋根の面積・向き・日当たりの条件によってメリットが誕生するまでの年月は大きく異なってくることは確かですから、気になるという方は、販売店などに問い合わせてシュミュレーションをしてもらうことをおすすめします。
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とは言うものの、ここまではとても狭い視野でZEHについてみてきただけで、ここからはもう少し視野を広げてみていきたいと思います。
問題は太陽光パネルの制作と処分の実態
太陽光発電システムは、生産できるエネルギーだけを見るととても魅力的です。
自宅で生産された電力を自宅で使用するとなると、送電の際のロスも抑えることができます。
ところが、太陽光パネルを制作する際に使われるエネルギーと処分する際に使われるエネルギーはどのくらいなのか?と言う部分もみておきたいものです。
太陽光パネルを制作する時に使用されるエネルギーは?
太陽光パネルは、見ての通り工業製品です。
太陽光パネルを生産するには、当然、電力などのエネルギーを要します。
この時、必要なエネルギーが膨大であるならば、いくら発電能力があっても生産すればするほど環境に対して負荷をかけることになってしまいます。
製造に投入したエネルギーを回収するまでに必要な時間を「エネルギー・ペイバック・タイム(EPT)」と呼び、この時間を見て環境によって良いかどうか目安にされています。
太陽光パネルを作るのに100kwの電力を使ったけれど、太陽光パネルが50kwしか電力を生産せずに寿命が来たならダメって言うことですよね。
そうです!
反対に100kw以上モリモリ発電することができたら生産して良かったと言う考え方になります。
1年間で100kw発電することができたらEPT=1年となるわけです。
じゃあ、EPTは短いほどいいってことになるんですね。
実際に、太陽光パネルの種類によって異なりますが、
多結晶シリコン型と呼ばれるものの場合、EPTは2.0年と言われます。
太陽光パネル寿命は20年〜30年と言われていますから、生産をする価値があると言えそうです。
太陽光パネルを廃棄する時にはどうでしょうか?
太陽光パネルが市場に出回り始めた頃から、どう処分するのか?と言う課題が問題でした。
太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査の結果に基づく勧告に対する改善措置状況や太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査には、次のようなことが書かれています。
太陽光パネルには、鉛、セレンといった有害物質が使用されているものもあり、関係法令に沿って適正な廃棄処理等が必要。
パネルの有害物質情報は排出事業者から産廃処理業者に十分提供されず、含有の有無が未確認のまま、遮水設備のない安定型最終処分場 に埋立て → 有害物質が流出する懸念。
こうして見ると、生産から消費までの間には、メリットが見られますが、廃棄についてはまだまだ課題がありそうです。
事例として、この様な報告もたくさん書かれています。
市町村では、公園に設置していた太陽光パネル付きの街路灯が壊れたため、その処理に際して、当該太陽光パネルの製造業者本社に有害物質に関する情報 を問い合わせたところ、同社の営業所を案内され、当該営業所へ照会した。
数日間経過しても回答がなかったため、再度問い合わせたところ、有害物質等の詳細情報の提示については、本社の決裁が必要であり、時間がかかると言われ たため、情報の入手を諦めた。
なお、当該パネルは、過去に処分実績があり、有害物質の分析も可能な当該 市町村内の産業廃棄物処理業者に処理を依頼することとした。
こうして廃棄までの現状の一部だけを見ても大きな課題が残された印象を受けます。
けれども、この様な問題が消費者に知らされることがありません。
ZEHの様な住まいに関心のある方は、ご自身のメリットだけではなく、本当に次の世代の環境のことも考えて導入を検討される方も多いのではないでしょうか。
だとすれば、ここで触れた様な問題点も伝え、それを承知の上で導入されるかどうかをご自身で判断できる様に情報を提供することはとても重要ではないでしょうか。
環境のためを思って考えられた策がこのままだと環境により大きな負荷をかけてしまう様な気がしてなりません。
将来、太陽光パネルの耐用年数の経過等に伴い、2030年代半ば頃から使用済太陽光パネル(以下「使用済パネル」という。)の 排出量が急増する見込み(2015年:約2,400トン→2040年:約80万トン)。
また、2030年までの間においても、住宅用太陽光パネルを中心に排出量は増えていく見込み。
私たちが生きている以上、環境に全くの負荷をかけない生活をすると言うことは、現実的ではありませんが、太陽光パネルについては、課題が大き過ぎるなぁと感じるのです。
私たちが住むべき住まいの形とは?
住居の機能が高まるに連れて、矛盾を感じることがあります。
私たちは、冬暖かくて、夏涼しい住まいを求めてきました。
だから、高気密・高断熱の住まいが当たり前の社会になって行きました。
そして、高機能でありながらも安さを求めたために、新建材と呼ばれる人工的な材料で住まいが建てられる様になりました。
ところが、新建材には化学物質がたくさん含まれており、シックハウスという問題を起こしました。
この問題を解決するために、今度は建材によっては使用制限を加えたり、計画換気が義務付けられてきたのです。
私たちが何か新しいものを求め、新しい技術を作ると問題が発生し、それを抑制するためにまた新たな技術を産む…。
これの繰り返しをしているのです。
また、そこに膨大な国家予算が注ぎ込まれているのも事実です。
それなら、昔ながらの工夫で快適に過ごせる住まいで普通に生活をした方が経済的じゃないかなぁと思うのです。
現在のZEHは、インスタントラーメンを食べまくって不健康だからなんとかしようと即効性のある健康サプリを作ろうともがいている状態に見えるのです。