寒い冬や暑い夏になると高気密高断熱の話題が多くなります。
近年では、
と言われる様になり、様々なハウスメーカーや住設機器メーカーは、省エネルギーでこの快適さが実現できるように様々な工夫を駆使しています。
命を守るために、住まいの作りを見直し、工夫をするということはとても大切です。
ところが、
ということも忘れてはいけません。
そこで、今回は、
- なぜ、高気密高断熱の住宅が良いと言われるようになったのか?
- なぜ、行きすぎた高気密高断熱化は命を縮めることになるのか?
- 住まい作りで重視したい断熱の考え方は?
以上の3点を伝えます。
あなたのこれからの住まいづくりの参考にしていただけると嬉しいです。
なぜ、高気密高断熱の住宅が良いと言われる様になったのか?
細かな歴史的経緯は、割愛しますが、要するに、
ためです。
ヒートショックとはどういうことか?
人間は温度差が生じた場合に、血管を膨張させたり収縮したりさせてその場の環境に適用しようとします。
血管の膨張・収縮がおきると、当然血圧が大きく変動しますが、この急激な血圧の変化は心臓に負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞の可能性が高まります。
温度差が原因で、脳卒中などの問題が生じた場合「ヒートショックが原因」と言われます。
次の資料は、全てがヒートショックに該当するかは分かりませんが、冬に圧倒的に事故が増えていることを見るとヒートショックの可能性も十分考えられます。
ヒートショックによる死亡の最も分かりやすいのが、お風呂から脱衣所への流れです。
暑いお湯に浸かっている時は、血管は広がっていますが、脱衣所へ上がった瞬間、脱衣所が寒ければ、血管が一気に収縮し、血圧が急激に高くなります。
ヒートショックを避けるためには?
ヒートショックを避けるには、とにかく「温度差が急激にならない様に配慮する」ことが重要です。
そのため、お風呂と脱衣所の関係は、
- お風呂のお湯の温度を少し低くする
- 脱衣所の温度を少し高くする
こうすることで、温度差を和らげることができます。
ただ、寒い冬には誰でも暖かい湯船に浸かりたいものです。
そうなると、必然的に脱衣所の温度を高くする努力が必要ということになります。
こうした話から、ご家族の健康を守るために高気密高断熱が重要だと言われるようになったのですが、私は話が飛躍し過ぎていると考えています。
どんなところに課題があるのか、さらに詳しくみていきましょう。
行き過ぎた高気密高断熱住宅は寿命を縮める?
例えば、最近よく耳にする「全館空調」ですが、体力も低下されたご高齢の方には、とても有効なものですが、子どもには決していいものだとは思いません。
元気な子どもは、寒さ・暑さに瞬時に順応する力をもっているためです。
この様な適応能力は、鍛えればより丈夫になりますが、使用しないとどんどん低下してしまいます。
自立神経とも関わりがありますので、詳しくは【育児と住まいの環境】自律神経を鍛え元気な子どもに育てるをご覧ください。
さらに問題だと感じるのは、高気密高断熱化でしっかりとガードしても温度差は大きくなる一方だということです。
もちろん、外気温にもよりますが、この様なことになります。
おはようございます!
この寒さ布団から出れない人多いですよね。。
部屋は暖かくしてるので、布団からは出れるのですが家から出れないです。1時間前に家を出て20分前に会社に着かないとダメなんですがいまやっと家を出れました!
この寒さは皆さまご無理なされず。
— とらまるチャンネル 一条工務店🏠YouTube (@toramaruch00) December 15, 2020
玄関までは暖か快適なのに、一歩出た瞬間に「寒い!」ということになります。
室内温度を快適にすればするほど、外気温との差が大きくなってしまいます。
そうなると、誰でも屋外に出るのが嫌になってしまうものです。
当然、運動量も減少してしまうことは、誰でも想像できるでしょう。
こう考えると、室内(全館)を分厚い壁で囲み、温度差のない空間を作ることを目標にする必要はありません。
では、理想はどんな住まいでしょうか。
多少は温度差があるが、外と内がなめらかにつながる家
様々な方に話をしていますが、外と内がなめらかにつながる事が大切です。
冬の場合を例に挙げると、リビングや浴室は暖かく、廊下や玄関周辺は少し室温が下がって外側つながっていくイメージです。
もともとあった日本の家屋は、見事にこれを実現していました。
また、修学旅行などで良く行く秋芳洞も外と内の温度がなめらかに繋がっています。
従来あった日本家屋と私たちの動き方との関連は、古民家風の住まいと近代的な新築の暮らし方の見えない違いとは?に詳しく解説しています。
ただ、住設機器も変わり、私たちのライフスタイルも変わったために、古民家や秋芳洞の様な作りをそのまま再現する訳にはいきませんが、無垢材や畳を使うことで、温度差の刺激を随分和らげることができます。
いくら高気密高断熱と言っても下の写真の様な床だと、冬はかなり冷たいことが十分想像できると思います。
マジで寒ぃ
いくら高気密高断熱の家でも、体感温度までは調整できん。フローリングって、無垢材でも畳の暖かさには勝てないのね、、
— 綾瀬 了 (@Alicewander_08) October 24, 2017
反対に、この様な住まいだと床自体が発熱する訳ではありませんが、多少寒くても、裸足で歩いても心地いいことはイメージできると思います。
私たちの身体はとてもよくできていて、使わない機能はどんどん衰えてしまいます。
人の力に頼り過ぎた住まいの場合、自分の力で体温の調節をする機会が極端に減少してしまい、小さな温度差にも負けてしまうようになることも考えられます。
日本の夏は蒸し暑く、冬は乾燥して寒い。
この変わらない条件と室内をどうなめらかに接続していくのかが大切で、私はこの条件とは戦いたくありません。
地球全体を見ても、温度差をガードする様な仕組みは見られず、温度差を和らげる工夫は随所に見られるためです。
そのため、住まいづくりを通して、もっと上手に自然とお付き合いできる工夫はないかなぁ…と日々考えています。