木造建築・木材の耐久性はどのくらいの年月?【科学的に解説】

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九谷田 義之

不動産・施工に関するお金に詳しい人。同じ費用をかけるなら本当に重要なところに費用をかければいい。削減できるところは削減も惜しまない。なぜかお客様の子どもに愛される。

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2021年5月1日・2日と東北地方で地震がありました。

私は、関西圏なので今回の地震は報道で知ったのですが、どの地域でも「地震があった」と聞くと、冷やっとするものです。

私の場合は、阪神淡路大震災の時の揺れを思い出します。

と、同時にこうした災害があると、必ず、次の質問を受けます。

  • 木造建築は本当に地震に強いのか?
  • 木材そのものが劣化するのは、何年程度なのか?

 

地震に対する強度と木材の劣化の話は密接な関係があります。

そこで、今回は、

木材そのものはどの程度の期間使うことができるのか?
について、直感的な視点と科学的な視点で見ていきましょう。
 

結 論

「〇〇年は問題なく使用できます」と明確に言うことはできません。

こんな答えは、格好よくないのですが、これが正直な答えです。

ところが、最も重要なのは、

  • どの様なことがあれば、使用できる期間が短くなるのか?
  • その仕組みはどの様になっているのか?

を知ることだと考えています。

早速詳しく解説します。

 

木材は「数百年使える」「短期間で痛む」どちらも正しい

百年以上、樽として活躍している木材もある

百年以上、樽として活躍している木材もある

まずは、直感的に木造建築物を見ても疑問が残ります。

  • 近年建てられた木造の住まいが地震で倒壊した・シロアリの被害にあったと聞く。
  • 随分昔に建てられたと言われる神社・仏閣は何百年もの間、健在である。

ですから、「木材は何百年も使える」というのも「木材は短命である」というのも、どちらも間違っていないために、話が複雑になってしまいます。

 

木材の風化から起きる問題と問題を回避できた時の強さを知ろう!

空気がうまい家®︎構造材

空気がうまい家®︎構造材

最も話をシンプルにするために、ここでは無垢材をもとに話をします。

自然界にあるものは必ず風化する運命にある

風化とは?
一般的には、岩石が長いあいだ空気にさらされてくずれ、土になる現象のことを言います。

ただし、ここでは、「自然にあるものは、いずれ分解されて土に還ろうとする作用」として理解して問題ありません。

例えば、古民家の縁側は、随分黒くなり、端の部分が痩せている様に見えることが多々あります。

風化が感じられる古民家の縁側

風化が感じられる古民家の縁側

この様な状態になるのは、

  • 日光にさらされる。
  • 風雨にさらされる。

ことで、木材は水分を吸ったり(吸湿)、水分を吐き出したり(放湿)を繰り返すために、内部の細胞が破壊されていきます。

これは、スポンジに水をたっぷりと含ませたり、思い切り絞ったりすることを繰り返すことで、スポンジはやがてボロボロになるというイメージで理解できると思います。

さらに、日光によって、木の内部にあるリグニンが分解されて、雨によって流れ落ちていくために、長い年月をかけて痩せていくということがおきます。

ですから、無垢材のフローリングで住まいを作った場合、日光がよくあたるリビングの床は、長い年月をかけて色が変化をしますが、日光がほぼ当たらない収納内の無垢材の色はほとんど変わりません。

ただ、ここで紹介した風化による「痩せ」は、非常に緩やかで、

100年で3mm〜5mm程度なので実質無視していい

ということになります。

この100年で3mmというのは、現代で言えばウッドデッキの様な日光や雨風にさらされる条件下の話で、直射日光や雨風にさらされることのない、住まいの構造内部では、ぼぼ影響がないということになります。
 

大きな問題は、他の生物による分解が行われること

死んでしまった木はキノコによる分解が始まる

死んでしまった木はキノコによる分解が始まる

風化による影響は、ほとんど無視できるにも関わらず、非常に短期間で傷んでしまう木材を見かけるのはなぜでしょうか。

それは、

生物による分解が行われる

ためです。

風化によって細胞が痛み、ちょっとした亀裂などが生じたところに雨が入り込むと、腐朽菌が住み着き、木材を分解しはじめることがあります。

当然、生物的なものが直接分解をするために、この速度は、風化の比ではありません。

残念ながら生物的なものの被害にあってしまえば、木材は短命となってしまいます。

 

生物による問題を回避できれば、木材は数百年間十分利用できる

古くからある神社仏閣が数百年間も健在であるというのは、風化はするものの生物的な分解の被害にあっていないためです。

もちろん、有名な神社仏閣にもなれば、定期的な点検、場合によっては一部修繕ということが行われていますが、百年単位で見れば、鉄筋コンクリート造であっても必要なことでしょう。

ただ、木材の面白いところは、次のグラフの様に木材として誕生してから約80年から100年後が最も強度が強くなるということです。

木材になってから80年〜100年くらいは強度が上がり続ける(木の情報発信基地https://wood.co.jp/より引用)

この様なことが起きるのは、木の成分、セルロースが経年とともに結晶化していくためです。

人工的に作られた建築資材というものは、世の中に数えきれないほどありますが、経年とともにより良くなるものは、木の他に今のところありません。

 

木の性質を正しく知って、素直に使ってあげることが長持ちの秘訣

空気がうまい家®︎

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住まいを作る上で、木を腐らせてしまう「腐朽菌」は、確かに私たちにとって大敵です。

ですから、ついつい悪者の様に思ってしまい、「腐朽菌」に負けない様に対策を打つぞ!と考えます。

確かに、化学的な対策を打つことは大切ですが、「腐朽菌」が住み着くきっかけとなった、「木材の細胞の破壊」のない木材を使って施工することも大切です。

建築に関わりながらこんなことを言うと叱られそうですが、「腐朽菌」が活躍してくれているからこそ、自然は数億年もの間、綺麗に循環し続けているということにも感謝したいと思っています。

現代の技術は素晴らしいものですが、それと同時に自然の素晴らしさも丁寧に観察していけば、人にとっても自然にとっても、優しい住まいは必ず作れると信じています。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

生活をしながら「腐朽菌」の性質をなんとなく理解していた昔の人の自然を見る目の鋭さを心から格好いいなぁと思います。

 

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