梅雨の終盤から夏にかけては、「風通しの良い家がいいなぁ」という声を良く聞きます。
その一方で、最近は「住まいの気密(住まいの密閉具合)は大事だ!」ということも盛んに言われるようになりました。
さらに、「全館空調」という言葉も流行りの様に使われる様になってくると、ますます、気密は重要ではないかなぁ…?という印象が強くなってきます。
ただ、ここでこんな疑問も出てきます。
また、24時間換気システムがついているのだから高気密にしなくてもいいのではないか?
今回は、この疑問について詳しく解説します。
住まいの風通しと通気性のちがいとは?
近年の住まいは、
と言いえます。
身近な例を挙げながらこの言葉の意味を解説していきます。
住まいの「風通し」とは?
窓を開けると、外の空気と中の空気が入れ変わろうとします。
例えば、A部屋の場合は、窓はあるものの一面しかないために、空気が入れ替わるのに、時間がかかることが想像できます。
A部屋
一方、B部屋の場合は、部屋の2面(しかも対面方向)に窓があるために、両方の窓を開けると、空気を入れる窓と空気を出す窓というそれぞれの役割を果たすので、空気の流れが生まれやすいです。
プッチンプリンも背面に穴を開けた途端、流れが生まれるのと同じです。
B部屋
この両者を比較した時に、B部屋の方が風通しが良いと言います。
「通気性が良い」と表現することはありませんから、これで、住まいの「風通し」と「通気性」の違いはなんとなく感じられたと思います。
住まいの通気性がいいとは?
「通気」とは、国語辞典では「内部と外部の間に空気を通わせること」になっていますが、一般的には、物を空気が通過することというニュアンスで使われることが多いです。
もともと日本の家屋(古民家)は、様々な作り方がありますが、土・漆喰・木をメインの材料としてきましたので、空気はこれらの隙間を通過していました。
つまり、非常に通気性が良い状態です。
一方、現代の住まいは、人工物も多く使い、少しでも密閉度を高める努力をしています。
つまり、壁面などの隙間は極力押さえ、想定外の空気の流入をより低くする方向に向かっています。
近年の住まいは風通しは良いが通気性は悪いとは?
現代の住まいは、
ということです。
なぜ、空気の流れさえも人がコントロールしようとしているのか?
その理由は、
- 計画的に換気をしないと健康上のリスクが生じるから(過去に生じた)
- 冷暖房のエネルギー効率を高める必要があるから
です。
話を分かりやすくするために、ジュースを飲む時に使うストローで考えてみましょう。
上の図の様に、ストローに小さな穴(通気性が良い)があれば、どうでしょうか。
ジュースを思う様に飲むことはできません。
これを住まいに置き換えると、密閉度の低い住まい(気密が低い住まい)は、計画的な換気がしにくくなってしまうという問題が生じます。
また、冷暖房を使用しても、隙間から想定外の空気が出入りしてしまうために、室内空間に温度ムラができてしまうために、敢えて通気性を悪く(気密を高く)する方向に向かっています。
【超重要】本当に気密を高めた住まいが健康住宅なのか?
2021年現在、住宅業界を見るとこの様なことが言われますが果たして、本当でしょうか。
この辺りを詳しく見ていきましょう。
高気密高断熱住宅は健康に良いと言われる主な理由
高気密高断熱住宅は健康に良いと言われる主な理由は次の通りです。
- 通気性が悪い(気密が高い)ために壁面内に結露が発生しにくいので、カビが生えにくい。
- 空気の流れをコントロールすることができるので、計画的に換気できる。
- 断熱性も高めれば年中、室温・湿度が安定し、運動量が増える。
- 断熱性を高めることで、ヒートショックのリスクを抑えることができる。
実際に、これらについては、理論もしっかりとしており、決して間違っているとは思いません。
ただ、これらの条件を満たせば本当に健康的なのでしょうか。
「健康」に対する理解は人それぞれですが、私は「健康」を語るのであれば、次の様な疑問についてもう少し深く考える必要があります。
- 24時間換気システムの設置義務があるが、なぜこの様な義務が定められたのか?
- なぜ、断熱性を高めて、ヒートショックのリスクを押さえないといけないのか?
気密を高めて計画的に換気ができれば健康的か?
ストローの話からも分かる様に、気密を高めておくことで、室内の空気は随分コンロトールできるようになります。
ところが、なぜ、そこまでして空気をコントロールしないといけないのか?
室内の空気に相当数の化学物質が蔓延しているからです。
これにより、アレルギー・化学物質過敏症・アトピー…様々な病気に悩まされる人は急増しました。
一方、自然なもので住まいを作っていた頃には、この様な心配をする必要がないので、現存する古民家などには、換気システムは存在しません。
つまり、
ということです。
少し厳しい表現になってしまいましたが、2021年現在も、アレルギーと住まいとの関係に悩まれた方からのご相談、ご質問があるのが現状です。
さらに細かい話になりますが、建材に使われている接着剤の強度は、経年と共に高くなっていくものもあります。
これは、10〜20年の年月をかけて接着剤がゆっくりと揮発し硬化していくために起きる現象です。
そうしたものが、室内から多数発生するにも関わらず、計画的に換気ができるからというのは、果たして本当に健康的なのか?私は疑問に感じます。
断熱性を高めてヒートショックを抑えることは本当に健康的か?
ヒートショックが原因で亡くなってしまう方が多いとよく言われます。
確かに、統計をみれば、多くの方が亡くなっていることが分かりますが、住宅の性能が高くなり、エアコンなども普及してきた現代でも、ヒートショックの問題は減少していません。
ここでさらに深くみていくと、
ということです。
シンプルに言えば、血圧の急降下によって血管に大きな負担がかかるからということです。
では、なぜ、自分が作り出した血圧の急降下に血管が耐えられなくなるのか?ということまで、考える必要があります。
これについては、明確な結論に至っていませんが、
という統計・論文を見ると、果たして高気密高断熱住宅を作り、通年を通して湿度も室温も一定の環境を作ることは健康的なのか?という疑問が残ります。
どういうことかと言うと、
- サウナを利用してしている方は、意図的に血圧を急降下させているために血管も丈夫な可能性がある。
- 空調環境になれた子どもは、空調への依存度が高くなることは、調査でも明らかになっている。
これらの話と家づくりの話に矛盾を感じます。
また、最近の高気密高断熱の住まいと生物の原理原則とも矛盾を感じます。
生物の原理原則とは、
ということです。
この点については、まだまだ様々なデータを見ながら、結論付ける必要があると思っていますが、空気の動きさえも徹底してコントロールする家づくりを行なって「健康的だ」というには抵抗を感じるのが正直なところです。
まとめに変えて…通気性を押さえた住まいの歴史は浅い
「健康」を深く考えた時に、歴史はとても重要だと思っています。
2021年7月現在、コロナワクチンの話題が毎日の様に報道されていますが、厚生労働省やワクチンの添付文書には次の文が明記されています。
- 本ワクチンは、新しい種類のワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります。
- 長期安定性等に係る情報は限られているため、販売製造後も引き続き情報を収集中である。現時点での知見は限られている。
つまり、
ということです。
これを住まいに当てはめると、「通気性を抑えた住まいで、年中快適な室温の中で暮らすことは本当に健康的かどうかは、歴史が短いために分からない」ということになります。
日本の歴史をさかのぼってみても、これほど通気性を抑えた住まいで、一年中快適な環境の中で生活したことがありませんから、私たちの体はどうなるのか?未知の世界です。
そんな中でも確かに言えることは、
ということです。
つまり、この様な生物的なものとは、とても相性が良い身体になっているということです。
私たちの身体は、当然、長い歴史の中で変化してきました。
- 日本人は日本の気候・暮らし方にあった身体。
- 西洋人は西洋の気候・暮らし方にあった身体。
こんなことも踏まえながら、住まいがあなたの暮らしをサポートできることを追求していくことが、健康住宅だと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
住まいは誰にとっても、大きな買い物ですから、この位深く考えてもいいのかなぁと思います。