コロナの影響もあり、オフィスや自宅などでも「換気」に対する意識が高まってきたように感じます。
ところが、コロナの影響の有無に関係なく「換気は私たちの生活・心理と深い関わりがある」といえます。
その一方で、住宅性能が高くなり、エアコン1台で全室快適な温度が保てるために、24時間エアコンを入れておこう!という風潮も強まってきました。
先日、次の様な質問もいただきました。
と、いうことで
- 換気(窓をあけるなどの行為)には、大きな心理的効果もある
- エアコン・換気システムでは、質のいい空気が入ってきにくい
- 効率的な換気のコツは知っておきたい
これらについて、詳しく見ていきましょう。
換気がもたらす心理的効果
直感的にも窓を大きくあけて換気をすれば気持ちがいい!
まず、直感的に「換気」について見ていきましょう。
多少地域性の問題はありますが、よほど外の空気が汚れていない限り、窓を大きく開けて、換気をすると気持ちがいいと感じる方がほとんどではないでしょうか。
反対に、高層オフィスやホテルなどで、窓が開けられない場合がありますが、その様な空間でずっと生活をしなければならないとなるとどうでしょう。
空気清浄機やエアコンがしっかりと完備されていて、室温が快適であってもなんとなく息苦しさの様なものを私は感じます。
なぜ、その様に感じるのか、理由は分かりませんが、もともと日本人は、内側と外側のつながりを大切にして生きてきた民族だからだと思います。
【調査結果より】窓を大きく開けることは心理的要因もある
東京都の高層オフィスビルを対象に行われた興味深い調査があります。
窓の開閉回数を記録したり、アンケート調査を行ったりした結果が、執務者による自然換気窓の開閉行為に関する研究に掲載されています。
その中に、窓を開けた理由に関する調査があります。
もちろん、物理的に、室内が暑いから・部屋の臭いが気になるからなどの理由も見られましたが、心理的には次の理由が挙げられました。
- 気分を変えたいから
- 閉鎖的な感じがするから
- 健康的に暮らしたいから
- 人工的な室内環境を好まないから
- 季節感を感じたいから
- 窓を開けた方が落ち着くから
- くつろぎたいから
どれも、そう言われたらそうだなぁ…と思えるのではないでしょうか。
執務者による自然換気窓の開閉行為に関する研究では、他の換気に関する調査がおこなわれていますが、結論にはこう書かれています。
自然換気窓開放行為は、温度調節や換気目的等の物理的要因が主な理由となるものの、因子分析の結果より、心理的要因の影響も強いことが確認できた。
執務者による自然換気窓の開閉行為に関する研究より
調査対象となったビルの場合、随分、自然とは遠い環境にあるために、心理的に自然を求めるような回答が見られたのだろうと推測しています。
物理的な換気の必要性【換気システムなどでは不十分】
冒頭で紹介した質問の様に、高気密高断熱だからと言って、24時間、エアコンを付けっ放しにし、換気をしないとなると、室内の空気環境は、悪くなる一方です。
もちろん、現代の住まいの場合、24時間換気システムの導入が義務付けられていて、部屋の空気は、ある程度入れ替わる様になっています。
ところが、一般的な住宅の場合、建材から化学物質が常に揮発していますから、一部の空気が換気されても、また化学物質が揮発するという状態に陥ります。
化学物質を常に揮発しているものは、
- ビニルクロス
- フローリング(一般的なもの)
- 集成材(柱などに使用) など
です。
泥水が汚いからと言って、一部を排出して、新しい水を入れても、その新しい水にまた泥が入っていると、いつまで経っても泥水は綺麗になることはありません。
そんな状況に陥ってしまいます。
専門的には、気密が高いほど計画的に換気ができると言われていますが、建材が排出し続ける、化学物質のことが考慮に入っていない点が課題です。
建材が排出する化学物質や日常にある化学物質の課題は、以下の記事を参考に!
いくら快適な温度・湿度であっても、心理的に換気をしたくなるのは、やはりこの様な人工的なものをなんとかしたいという思いが本能的にあるからかもしれません。
そこで、短時間でスッキリと換気する方法を確認しておきましょう。
【超基本】上手な換気の仕方と換気時間
換気をする時に意識したいことは、
ということです。
空気は目に見えないですが、水の流れと同じように考えると、換気をする際のポイントが見えてきます。
大きな窓をバンっと1箇所開けても、流れは起きにくく、この様なイメージになってしまいます。
もうここまで来ると、ベストな換気方法はお分かりだと思います。
これが基本的な効率の良い換気の仕方ですが、住まいの形状によっては、対角線上に窓がないという場合もあります。
その時は、扇風機を用いて、空気の流れを作る様にしたいものです。
また、換気時間についても質問をいただくことがあります。
一般的には、
と言われていますが、実際、そこまでこまめに換気はできないのではないでしょうか。
24時間換気システムの導入が義務付けられていますが、実際は運転を止めているという声を聞くこともあります。
こうしたことを踏まえると、空気の汚れの原因となる部分を見直すことが、本質的な問題の改善になると思います。