ここ最近(2020年6月現在)は、大きな地震もなく、耐震に関する質問は少し落ち着いた様に感じます。
それでも、フルリノベーションをし、空気がうまい家®︎仕様にしたいと言われるお客様は、最初、耐震性が気になると言われます。
そのお気持ちも十分に分かります。
近年は、大型のスーパー、マンションの建築も盛んに行われ、それらを見ると、鉄骨だったり、鉄筋だったりしますから、「本当に木造で大丈夫なのだろうか?」と思われるのも無理はありません。
もちろん、鉄骨・鉄筋も丈夫なのですが、今回は
という話をしたいと思います。
なぜ、木造は鉄骨や鉄筋よりも弱いイメージがあるのか?
お客様や知人に木造住宅の印象を質問したことがあります。
新しい木造住宅にも関わらず、地震でたくさん倒壊してしまっているのをテレビで見ましたから。
折れた柱がむきだしになっているのを見ると、やっぱり木造より鉄筋や鉄骨の方がいいのかなぁなんて思いますよ。
マンションや大型のショッピングモールは、地震で倒壊することが少ない気がします。木は折れるというイメージがあるけれど、鉄が折れるという印象はありませんから。
また、こんなツイートも見られます。
こうした表現だけを見ると、木造建築には様々な問題がありそうです。
ところが、地震に耐えてきた木造建築物もたくさんあることは事実です。
一方では、弱いと言われ、一方では強いと言われる木造建築。
こうした違いはどんなところから生まれるのでしょうか。
もう少し詳しくみていきましょう。
激しい地震があったにも関わらず、倒壊しなかった建物とは?
上の写真は、阪神淡路大震災のものです。
写真からも相当な被害が出たことは、当時の地震を経験していない方も十分察することができるでしょう。
なお、当時の様子は以下の動画でも見ることができます。
また、こちらの記事でも詳しく解説をしています。
こうしたものを読むと、一概に「木は弱い」と言えそうにありません。
弱い木造建築もあれば、驚くほど強い木造建築があるというのが正しい理解と言えます。
では、木造建築の強弱は何で決まるのか?
ここでは、工法については触れずに、木材そのものの強弱を見ていきましょう。
30年以上、毎年この環境に耐えてきた木をみよ!
先日、空気がうまい家®︎にお住まいのお客様のご自宅を訪問しました。
このお客様のお住まいの地域は、面白いところで、山菜をみんなで採りに行き、採れた山菜を調理してみんなで食事を楽しむと言う事を毎年されています。
詳しく話を聞くと、30年以上、こうした活動をされているそうです。
ヨモギのお餅をつこう!
春のヨモギは、葉が柔らかく香りもとてもいい事で知られています。
この日は、コゴミ・タケノコ・木の芽・セリ・クレソンなどがたくさん採れた上に、ヨモギも採れたと言う事でお餅つきが始まりました。
「熱いうちにつかんと美味しいお餅にならへんで!」
そう言いながら、凄いスピードでお餅がつかれていきます。
ある程度、お餅らしくなったところで、湯がいたヨモギが石臼に投入され、フワッとヨモギの香りがあたりに広がっていきます。
見る見る間にヨモギ餅が完成しました。
恐ろしく厳しい環境にある木の存在は?
さて、あなたは、この話の中に「厳しい環境にある木」を見つけられたでしょうか。
その木は、石臼の土台です。
この石臼は、大人が数人集まってもなかなか持ち上げることができないほどの重さがあります。
石臼を使う時には、土台を石臼にかまし、テコの原理を用いて起こすしかありません。
そんな重い石臼を30年以上支えてきたのです。
年末には、かなりたくさんのお餅をつかれるそうですから、土台の木からすれば、ひたすら強い衝撃が加えられるという、とても厳しい環境にあるわけです。
それでも、来年も再来年も…この石臼の土台は使い続けられるはずです。
木も本来の姿であれば、とても丈夫なのです。
石臼の土台には、集成材が使われていません。
一般に、販売されている石臼の土台を見ても、集成材は使われていないと思われます。
集成材とはなに?と思われた方はこちらの記事をご覧ください。
ところが、近年の木造建築には集成材が多く使われており、住宅メーカーも十分な強度があると言っています。
集成材は、ご覧の通り、いくつかの板が接着剤によって貼り合わさって作られています。
パイン集成材は、ホームセンターでもよく見かけます。
集成材は様々なところで用いられていますが、この接着剤が30年以上、しっかりと機能し続けることができるのか、私は疑問に感じています。
また、人間にも個性があるのと同じ様に、同じ種類の木材と言っても、それぞれが個性をもっています。
建築用の木材になっても、乾燥が早い部分もあれば、遅い部分が必ずあります。
そのため、亀裂が入ることになるのですが、断面を見ないと亀裂が分からないという点も気になるところです。
さらに年数が経過すると、この様になってしまう場合もあります。
もちろん、利用されていた環境によりますが、あなたもこの様になってしまった木材を見たことがあるのではないでしょうか。
何よりも、貼り合わせる接着剤がこれまで様々な問題をこれまでにも引き起こしてきました。
Wikipediaにもこの様な記述があります。
接着剤を使用するので、燃焼時に黒煙が出る。またプレカットの加工時には作業によって接着剤の粉末が飛散し、それを吸引することで体調不良を起こすことがある。
(Wikipediaより抜粋)
ですから、「木は強い」という話をしてきましたが、正しくは、貼り合わせていない木材(無垢材)ということになるのです。
丈夫な住まいを作る上で重要なことは、石臼の土台の様に、過酷な環境・条件の元でも平気な木材で住まいを作ることです。
一言で「木造」と言っても、使われる木材の種類、強さは様々である…ということを知っていただけたら嬉しいです。
まとめ
石臼の土台、しかも30年以上も使われてきたものを見て感じた事をまとめてみました。
もちろん、費用的な面も考慮して、「集成材で施工をされた建物がある」ことも分かりますが、せっかくの建てる住まいである以上、丈夫であり続けることは、絶対に必要なことだと思います。
- 木はいいものであれば、自分よりもはるかに重たいものを支える事ができ、強い衝撃にも耐える事ができる。
- 集成材の場合、貼り合わせの際に用いられた接着剤がどのくらいの期間、機能するのか分からない。
- 接着剤を用いた材料を使うことで、体調不良を起こす可能性もある。
また、こんなこともふと思いました。
石臼の土台が鉄ならどうなのでしょうか。
想像の領域ですが、石臼は割れてしまい、杵をもっている人には、杵を下ろす度になんとも言えない衝撃が走りそうな印象があります。
そんな想像をすると、石臼の土台の木は「支える」という役割以上の事を果たしてくれている様に感じます。