なぜ、木造建築に杉が使われるのか?そして杉のもつ性質とは?

住まいと安全
九谷田 義之

不動産・施工に関するお金に詳しい人。同じ費用をかけるなら本当に重要なところに費用をかければいい。削減できるところは削減も惜しまない。なぜかお客様の子どもに愛される。

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空気がうまい家®︎の施工に初めて関わる大工さんは、通常では考えられない杉の使い方に驚かれます。

通常、杉は建築物の構造などに使われますが、家具や建具に用いられるケースが少ないにも関わらず、空気がうまい家®︎の建具や家具は、基本的に杉を用いているためです。

例えば、建具職人さんに「杉の木で建具を作ってください」というと、大抵の場合いい顔をしてくれません。

それは、杉特有の性質があるためです。

  • 杉特有の性質とは?
  • 空気がうまい家®︎に使われる杉とは?

今日は、この二点について詳しく見ていきましょう。

 

杉特有の性質と利用の仕方

木造建築に使われる木材と言えば?

きっと多くの方がまず一番に「杉」を思い浮かべるのではないでしょうか。

もちろん、他にも栗、ヒノキ、ケヤキ…なども用いられるのですが、近年では集成材も至るところで活用されるようになりました。

集成材とは?

この写真からも分かる通り、小さく切り分けられた木材を接着材で組み合わせられた木材のこと。一応、品質・強度共に安定していると言われており、幅広く利用されているが、強度が測定されているのは、新品の状態の時だという点に疑問を感じる。接着剤の強度が50年も持続するのだろうか…?そんな疑問を筆者は感じている。

木造建築には、様々な木が用いられるにも関わらず、なぜ、「杉」がこんなにもたくさん植林されていたのか見ていくと、杉の性質が見えて来ます。

 

古くは日本書紀に記述がある?

様々な種類の木があるにも関わらず、古くから「杉」が用いられた理由は、日本書紀に根源があるとも考えられています。

思わず笑ってしまう様な話ですが、日本書紀にはこの様な表現があります。


スサノオノミコトが、ひげを抜いて植えるとスギになり、胸毛を抜いて植えるとヒノキになり、尻毛を抜いて植えるとマキになり、眉毛を抜いて植えるとクスノキになりました。

さらに、スサノオノミコトは、この木々が成長したら、スギとクスは船に、ヒノキは建物にするよう子どもたちに伝えたのです。


こうしたところから、古くから人々は、杉・ヒノキを重宝したのではないでしょうか。

また、クスノキは、樟脳(防虫剤)として古くから利用されています。

クスノキの話はこちらを参照してください。

【読み物】塗香(ずこう)に秘められた楽しみと知恵の話
塗香(ずこう)とは一体、何でしょうか。実は、古くから使われ続けているものです。長年使われているものだけあって、たくさんのことが塗香から学べそうです。

 

戦後の復興は早い方が良いだろうという考え

また、杉がたくさん植林されたのは、戦後の復興とも関わりがあります。

戦争により大量の木材が必要となった上に、たくさんの木造住宅が被害にあってしまいました。

そのため、木材の需要が急激に高まり、国は「造林臨時措置法」まで定めて、杉やヒノキの植林を進めました。

特に杉は、成長が早い上にまっすぐに伸びやすいという性質をもっているため、戦後の需要を満たすものだと考えられたようです。

また、成長が早いということは、柔らかく、加工しやすいというメリットがあったのです。

 

ここまで、杉の特徴を整理すると次のようになります。

  • 杉は舟に使う事ができるくらい水に強い
  • 成長が早く、まっすぐに伸びやすいために扱いやすい
  • 全体に柔らかく加工しやすい

それなら、杉で建具を作っても良いのではないか?と思われるかもしれませんが、杉は使用する条件によって変化しやすい材木なのです。

 

変化する事は、良い場合もあれば悪い場合もある。

建具職人さんが、「杉で建具を作る事を良い顔で引き受けない」理由は、杉が環境によって変化しやすいためです。

例えば、杉で扉を作った場合、湿度が高ければ膨張をしますから開閉がしにくくなります。

反対に湿度が低ければ、収縮し扉の開閉はスムーズになります。

これをデメリットと見る事もできますが、別の見方をすると杉材はまさに生きているかの様に呼吸をし、調湿効果を高めてくれるとも言えるのです。

実際に杉がふんだんに使われた室内というのは、湿度が高い日でも、室内の湿度は随分低く感じる事ができます。

 

また、杉は大変柔らかい木材ですから、切るのが難しい木材です。

柔らかいから切りにくいというと、分かりにくかもしれませんが、白身魚をイメージしてください。

白身魚を切れ味の悪い包丁で切ると身がボロボロになってしまいます。

鰆などが特に分かりやすいのではないでしょうか。

ですから、杉材を正確に切っていくとなると、建具職人や大工さんは、作業を少ししては刃物を研ぐ…という事を繰り返しているのです。

 

空気がうまい家に使われている杉は、普通ではありえない現象も!

家具も杉で作られている空気がうまい家®︎

家具も杉で作られている空気がうまい家®︎

まだまだ、杉の特徴は他にもあります。

杉に限らず、木材全般に言える特徴です。

木材には表と裏がある(木表と木裏)

簡単にいうと、書道で使われる半紙に表と裏がある様なイメージです。

木材にも表と裏があり、それぞれ性質が異なるのです。

丸太を製材すると、必ず芯に近い方と遠い方ができます。

芯から遠い方を「木表(きおもて)」と呼び、芯に近い方を「木裏(きうら)」と呼びます。

この写真の場合、上側が木表になります。

ただ、これだけの事ですが、木表は年齢が若く木の密度が低いイメージで、木裏は年齢が高く木の密度が高いイメージ…になります。

ですから、通常、木表は乾燥していくに連れて縮んで行きます。

「無垢材で作られた床は反らないの?」と言われるのは、こうした性質があるためです。

 

また、柱などに「背割り」とか「芯割り」と言われる溝をあらかじめ入れるのも、木表が収縮するという性質があるためです。

当然のことですが、「背割り」を入れなければ、乾燥による収縮が始まり、やがてこの様に割れてしまいます。

つまり、木表は変化しやすく、木裏は変化しにくいという性質があります。

また、木表は、カンナをかけて行くとツルッと綺麗に仕上がるのも特徴です。

 

空気がうまい家の杉(音響熟成木材)は木表も木裏もそっくり?

一般的には、これまで紹介してきた様な性質を木材はもっていますから、木表・木裏の性質を活かしながら家づくりをしていくものです。

ところが、空気がうまい家®︎に使われてる木材(音響熟成木材)には、「背割り・芯割り」が施されている事を見たことがありません

ダイニングテーブルやベッドなどの家具は、木表を全面に出した方が綺麗に仕上がるのですが、空気がうまい家®︎の材料メーカー、カイケンコーポレーションから送られてきたものの表面は、木表・木裏が混在しています。

不思議なことに、木表・木裏も大差が感じられません。

また、初めて音響熟成木材にカンナをかけた大工さんはこう言われていました。

カンナの掛かり方が全く違う!これは気持ちがいいわ!

 

一般に用いられる木材は、無垢材であっても高温で乾燥させてしまうために、繊維が分断されてしまいます。

ですから、カンナをかけても、この様な綺麗なカンナ屑にはなりません。

こうして木材というものを見ると、どうやって水分を抜いていくのか?もとても大切な視点になるわけです。

大工さんの目から見た、空気がうまい家に使われている音響熟成木材の話はこちらの記事を参照してください。

おもやのよもやま話 その三|木の家を愉しむ(母家)|カイケンコーポレーション
住んで健康になる「健康住宅」。家づくり・引っ越し・リフォームの前に、本物の健康住宅をご紹介します。

 

まとめに変えて

近年は地震が多いために、耐震に関する質問を受けることも多々あります。

鉄筋コンクリートの建物に比べ、木造建築物は弱い印象をもっている方がたくさんいらっしゃいます。

ところが、木造だから良い・悪いという見方をするのではなく、同じ木造でも質の良いもの悪いものがあるという見方をして欲しいなぁと思います。

例えば、革のカバン一つみても、

  • ビニルで革の雰囲気を出した鞄
  • 合皮の鞄
  • 本革の鞄 など

種類は様々です。

耐久性も見た目や質感も全てが異なります。

 

ですから、質の良い住まい・店舗を求めるという方は、表面的な機能や見栄えだけを重視するのではなく、材料の質や制作の過程まで見て欲しいと思います。

 

子どもの頃、竹でできた釣竿でよく魚釣りを楽しんだものです。

竹の繊維は凄くしなりますが、地球を釣っても竹の釣竿が折れてしまうということが無かったのを思い出します。

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