紅葉のシーズンを迎えると、「京都はいいなぁ…紅葉が凄く綺麗でしょ。」なんて言われることがあります。
そう言っていただけるのは嬉しいのですが、
あなたは疑問に感じたことはあるでしょうか。
紅葉は、木が無駄なく生きていくために生み出した知恵なのです。
この話を知って、私たちがいつも言っている、住まいになっても木は生きているということを実感し、あなたの住まいに使われている木や他の木製品も好きになってくれたら嬉しいです。
秋になると紅葉する理由は、効率よく木々が生きる知恵
紅葉する代表的な木とは?
- もみじ
- イチョウ
- ドウダンツツジ
- カツラ
- ブルーベリー
もちろんまだまだありますが、紅葉も楽しめるお庭にするのであれば、やはりイロハモミジは外したくありません。
また、食べ物のイメージが強いブルーベリーですが、かなりしっかりと紅葉するので、実の収穫と紅葉の両方を楽しみたい方にはおすすめです。
【紅葉する理由】木々が効率良く生きるための知恵
根がついてしまうと、病気にならない限り木はすくすくと成長していきます。
成長するために必要な栄養素は、葉っぱで作られるということを小学校で学習します。
この葉っぱの能力は素晴らしく
があれば、エネルギーである糖を作ることがきます。
人口的にこの仕組みを作ろうと長年多くの研究者が挑んできましたが、近年まで難航していました。
それくらい高度なことを木々は何千年もやってきたのです。
ところが、木々がもっている葉緑素が機能するには、適度な気温(15〜30℃程度)が必要という大きな課題があります。
この範囲外の気温になると、エネルギーである糖を生産する能力がグンっと下がってしまうのです。
そこで、彼らは次の様に考えました。
寒くなってきたら光が当たっても栄養があまり作れないなぁ。
それって効率的じゃないし、いっその事休憩してしまおうか!
熊さんと同じような感じだね。
冬眠生活も悪くなさそうだよね。
こうして、成長の効率が悪い気温が低い時期はお休みすることになったのです。
そして、忘れてはいけない自然界の大原則は、
ということです。
だから、葉緑素そのものも栄養として活用した後、機能しなくなった葉を落とす準備に入るのです。
葉緑素そのものは緑色ですから、その緑を吸収するために葉の色が変化するイメージです。
【理科的にもう少し詳しい解説】紅葉する理由
木々が冬眠に入る準備に入っても、ある日突然、葉緑素が0になるわけではありません。
少しずつ減少していくので、その期間はわずかに栄養が作られます。
通常時は、生産された栄養は全て吸収されますが、冬眠の準備に入っているために葉に栄養が残留しがちになります。
そこに日光があたると赤いアントシアニンというものになるために、葉が赤くなるのです。
このアントシアニンは、酸性やアルカリ性の水につけるとみるみる変色するという性質があります。
大雑把ですが、これだけでも知っておけば、住まいを作る時にどの様な木が硬く・高価になりがちなのかも見えてきます。
紅葉し落葉する樹木は基本的に成長がゆっくり
落葉する木は、冬眠すると紹介しました。
つまり、その期間はほとんど成長しないということです。
そうなると、家づくりに使われるほどの大きさに成長するのに長い年月が必要となりますが、ゆっくりと成長するために、繊維が詰まった硬い木になります。
代表的なものは、
- 栗
- ウォールナット(くるみ) など
で、フローリング材や家具として使われます。
当然、成長するのに時間がかかりますから、高価になります。
私たちと同じように、住まいに使うものの質にこだわったこちらの工務店さんは、栗の一枚板をテレビボードに使用したそうです。
反対に、紅葉しない木はどうでしょうか。
紅葉しない木は、気温が下がって栄養を作りにくいと分かっていながらも、少しでも早く成長したい!と考えた木々達です。
つまり、全体的に成長が早いために、空気をたっぷりと含んだ柔らかい木材になります。
代表的なものは、
- 杉
- ヒノキ
- 松(パイン) など
で、古くから現代まで様々なところで活躍しています。
空気をたっぷりと含んでいるために、断熱性も高く、冬でも床暖房をいれなくても裸足の生活が楽しめるというメリットがあります。
裸足生活の良さは、裸足で暮らしたい!裸足保育と運動能力・集中力との関係を参考に。
細かく木の種類を知り、それぞれの特徴を知った上で、住まい作りに活かそうとすると、英単語を覚えるような形になってしまいます。
ところが、木々達の生き方、特に分かりやすい「紅葉」に注目するだけでも、大雑把にそれぞれの木の特徴が見えてくるのではないでしょうか。
本当に大切なことは品定めの目で見ることより木々を尊敬すること
住まいづくりについて考える時に、「○○の木は良いが、××の木はダメだ。」という様な見方をしてしまうことは誰もが経験することかもしれません。
ところが、木々は、紹介した様な工夫をしながら何千年もの間命を繋いできた実績があるということは忘れたくありません。
紅葉する木も紅葉しない木もそれぞれの良さがあります。
その事を知った上で、「彼らと一緒に暮らす」という感覚で生活をしてこそ、はじめて素晴らしい住まいが完成するのではないかと思います。
農業のことを真剣に考えた宮沢賢治は次の様な言葉を残しています。
すべてあらゆるいきものはみんな気のいい、かわいそうなものである。
けっして憎んではならん。
木の生き方の一部でも知ると、できる限り加工をせずに、彼らの力が生きる使い方をしてやりたいと思います。
私たちの住まいづくりの理念は、こちらをご覧ください。