全館空調の見えにくいデメリット【子育てに失敗しないために】

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渋谷 浩一郎

住まいと人の成長は深い関わりがあるのか?そんなことを追求する。住まいとアレルギーやアトピー、学力との関係にも注目している。現在、国内外の子ども達と関わりながら、住まいに関する書籍や冊子などの連載も行っている。要するに住まいのオタクである。

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最近は、「全館空調」という言葉を聞く機会が随分増えてきました。

言葉の通りの意味ですが、特徴を極めて簡単に整理しておきます。

  • リビング・廊下・脱衣所など場所による温度差がかなり小さい。
  • 施工方法は様々な方法があるが、基本的には高気密・高断熱にする必要がある。
  • 電気代は、夏に高くなりやすい(通年でみるとわずかに安い傾向にある)。
  • 健康的に暮らすには望ましい環境であると言われる。
施工方法・住まいの素材などによって性能は大きく変わるために、全体的な傾向という意味で捉えてください。

いずれにしても、室内の温度差がかなり小さいのは魅力です。

ただ、こうした分かりやすいメリットの裏に、見えにくデメリットも隠れています

そのデメリットがあるために、私たちの場合は、

全館空調を目標とせず、
自然の力の範囲で暑さ・寒さを和らげる家を作ろう

と、お客様にも話をしています。

どういうことなのか、詳しく解説します。

 

全館空調が健康的と言われる一方で、薄着をしよう!と言われる

全館空調の住まいはヒートショックを防ぐことができ、体への負担が小さいために、健康的だとも言われます。

特に、冬も暖かな住まいは健康的であるということです。

ヒートショックについて、詳しくは、【健康住宅とは?】ヒートショックが抑えられる家は健康的か?を参照してください。

【健康住宅とは?】ヒートショックが抑えられる家は健康的か?
最近では、当たり前の様に「健康住宅」という言葉が使われる様になってきました。ということは、「これまで作ってきた住宅は不健康だったのか?」という事も問われても仕方がないと思っています。 住まいと健康がどう関係があるのか?詳しくは、私たちについ

 

ところが、その一方で、子どもが厚着をしている姿は、好ましくないとあなたも感じるでしょう。

ここにちょっとした矛盾を感じるのです。

この矛盾がすっきりとしない限り、全館空調の良し悪しを私は言い切ることはできません。

 

全館空調の家が健康的だと言われる理由

全館空調の住まいが、健康的だと言われる一般的な理由は、

  • 室内の温度差が少ないので、ヒートショックになりにくい。
  • 冬でも夏でも快適な温度なので、室内の運動量が減ることがないので健康的。

というものです。

実際に、真夏や真冬に全館空調の住まいに行けば、かなり快適だということは実感できます。

真夏によくある、「エアコンの風が直接あたって寒い!」ということがほとんどないので、気持ちよく過ごせることは確かです。

全館空調のおかげで、運動量が増えるという面ではとても健康的ですが、「健康」は様々な角度から見ていく必要があります。

 

できるだけ薄着をしよう!と言われる理由

昔から、冬でも薄着をした方が良いと言われてきたのには、深い理由があります。

人間には、寒さに負けないようにする褐色脂肪細胞がある

ためです。

褐色脂肪細胞(かっしょくしぼうさいぼう)とは、体に蓄えられた脂肪を燃やす役割をする細胞です。

特徴は次の通りです。

  • 赤ちゃんの頃は誰もが多くもっており、年齢と共に減少してしまう。
  • しっかりと体温を上げて、体の様々な機能が活性化できるようにする。
  • 特に寒い時に力を発揮する。

つまり、次の様な循環を生み出して、健康を維持してくれています。

この機能がしっかりとしていたために、子どもは、寒さに強かったのです。

代謝もよく、肥満の子どもかなり少かったことを思い出す人もいるでしょう。

実際に、私も、雪が積もっていても半ズボンで登校していましたが、それを苦痛と感じたこともありません。

 

お姉さん
お姉さん

じゃあ、褐色脂肪細胞が多いと太りにくい体になるんじゃない?

当然、お姉さんの言う通りです。

ですから、ダイエットや美容・健康の業界でも注目されている細胞です。

「適度な寒さ」は、人が健康的に生きるためにとても重要な要素なのです。

こうしたことを、先人は体験的に知っていたのでしょう。

「全館空調システムになんとなく違和感を感じる」という声があるのは、日本人が歴史的に構築してきた性質を十分に活用することができないということをなんとなく感じるからだと考えています。

実際に、薄着の文化が薄れ、住まいの西洋化が強くなるほど、子ども達の問題は大きくなっています。

 

 

子どもの体力・健康状態の課題【全館空調で問題はさらに深刻に】

様々なところで、子ども体力減少のことが話題になっています。

私が、教育の現場にいたころも、これは子どもの体力減少はとても大きな課題だとされ、研究・調査も行ったこともあります。

と同時に、肥満の問題もあります

肥満傾向児の出現率の推移【男子】

文部科学省「平成30年度 学校保健統計調査」より

 

肥満傾向児の出現率の推移【女子】

文部科学省「平成30年度 学校保健統計調査」より

平成18年からグラフが変化しているのは、測定方法が変わったためです。そのため、近年の部分に対しては、評価することはできませんが、それまでを見るかぎり、増加傾向にあると言えます。

これらの要因は、様々な視点から分析されていて次の通りだと言われています。

  • 食生活が豊かになり、西洋的になった。
  • 子どもの遊び方が大きく変わり、スマホ・TVゲームが中心になった。
  • スポーツよりも勉強を重視する風潮が強くなった。など

もちろん、これらの要因もありますが、

冬に厚着をする子が格段に増えた。

ということも、体力減少・肥満の要因の一つだと考えられています。

京都大学の研究によると、

褐色脂肪細胞の機能低下や数の減少が、生活習慣病やメタボリックシンドロームの原因になることが分かってきました。

ということです。

褐色脂肪細胞の特徴を十分理解していると、当然とも言えることが実験で確かめられました。

と、いうことは、人の原理原則である

体で使う機能は発達、または維持しやすいが、使わない機能は退化する

ということを踏まえて、室内の環境を整えることは、重要です。

だからと言って、隙間風がビュービュー入ってくる様な住まいがいいという話ではありません。

年がら年中、室内の温度は最も気持ちがいいと言われる20℃付近、湿度50%を維持し続けることが果たして本当に健康的なのか?また、豊かな暮らしと言えるのか?

ということは考える必要があるということです。

では、具体的にどの様な形で、暑さ・寒さを凌ぐといいのでしょうか。

次に具体的に紹介します。

 

私たちの身体は、四季の変化に十分対応できる

空気がうまい家®︎

私たちの身体は、私たち自身が思う以上に、よくできています。

問題があれば、問題を克服できるような工夫をしてきたから、今も生存することができています。

具体的にどの様な問題の克服をしてきたのか、生き物の進化については、健康的な生活を送るために知っておきたい人の力【生活習慣を考えるヒント】をご覧ください。

https://house-kobo.com/wordpress/2021/01/12/kennko-kurashi/

 

つまり、自然の中で生き、生命を繋いできたのですから、

自然のものを使って暑さ・寒さを凌ぎ、足りない部分を人の力で補う

という考え方が最も大切だと考えています。

あくまでも、主役は自然のもの(音響熟成®︎木材)であって、それだけでは、不十分だと思われる分だけ機械(エアコンなど)の力を借りるという考え方です。

 

空気がうまい家®︎仕様にリノベーション

空気がうまい家®︎仕様にリノベーション

実際に、こちらの部屋は、12月末に施工が完了し、お引き渡しをする前の様子ですが、この小さな電気ストーブ一つで十分に部屋は暖かくなっていました。

もちろん、電気ストーブをつける前は、多少寒いですが、季節に応じて、暑い・寒いを感じ、屋外の様子を感じながら暮らすことが、豊かな暮らしであり、健康的な暮らしだと考えます。

室内の温熱環境(断熱性)に関わる話が、人気を集めていますが、住まいの断熱性を高めることが目標になってはいけないと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

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