無垢材の種類で体感温度は大きく変わる【住居の断熱性能より重要】

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北村美千代

数々の店舗、住まい、文化財の新築・修繕のプランを行う。自由度が低く、制限があればあるほど建物のプランを考えるのが楽しくなってくるという習性がある。プランを考えている時間が至福の時間。

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近年、住まい作りに関する情報は、インターネットでたくさん得ることができます。

ですから、住まいの中でも関心の高い「高気密・高断熱」については、大きく取り上げる会社が増え、ニーズも「高気密・高断熱」に傾いている様に感じます。

高気密・高断熱の程度を表すC値やUA値について学び、ある一定の水準以上を求める人も増えてきました。

ところが、

C値・UA値など住宅の性能を表す数値が良ければ快適な生活になるのか?

というと、この数値だけで一概に評価することはとても難しいと思います。

その理由は、

  • 人は見た目の色や肌触りなどから、暑さ・寒さを感じ、体にも変化が起きるから
  • 肌に触れる部分の材質によって体感温度はかなり異なるから

この理由を身近な例を挙げながら詳しく解説します。

 

人は視覚に入る色・感触などの影響も受けて暑さ・寒さを感じる

2020年の夏はとても暑かったですが、10月中旬にもなると冷え込みが随分厳しくなりました。

暑さ・寒さを表現する指標に、温度(℃)が最もよく使われていますが、温度が高ければ暑いと感じるでしょうか。

もちろん、35℃を超えて来る様なことがあれば、とても暑く感じますが、湿度が低ければ、30℃程度の気温でも随分過ごしやすいものです。

アメリカにお住まいの知人は、今年の夏、日本より気温が高かったそうですが、湿度は20%程度のために暑苦しさは感じないという話をしていました。

また、音や目に入る風景によっても涼しさを感じることはできます。

例えば、気温が30℃であっても、次の様なものがあれば、なんとなく涼しく感じます。

  • 湿度が低い
  • 風鈴の音が聞こえる
  • 清水の流れる音が聞こえる
  • 水や氷、冷たそうな川の流れが見える

しかも、不思議なことに、清水の流れる音をデジタル化して再生してもなんだか涼しく感じません。

さらに、色が体に影響を与えることは様々な論文で発表されており、目を閉じて、赤いものに触れたり、青いものに触れても体に変化が起きることが分かっています。

詳しくは落ち着く部屋の色と心理【ファーストフード店の店内から学ぶ】をご覧ください。

つくづく人は不思議な生き物だと思います。

 

床材は肌に触れる部分だからこだわりたい【無垢材でも種類は豊富】

空気がうまい家®︎に使用している杉無垢材(うづくり・10年床に使われたもの)

空気がうまい家®︎に使用している杉無垢材(うづくり・10年床に使われたもの)

新築やリノベーションをする際、床材にこだわりたいという方は随分増えてきました。

床材だけでも、室内の質感は大きく変化するためですが、床材によって体が感じる暑さ・寒さも大きく異なってきます。

今回は、床材によって感じる暑さ・寒さについて詳しく紹介します。

 

一般的なフローリングより無垢材の方が暑さ・寒さは和らぐ

一般的なフローリング(複合フローリング)は、接着剤等を用いて複数の板をしっかりと貼り合わせています。

この様な構造をしており、芯材も多くの場合は、木片を圧縮して接着していますので、フローリング内部にある空気の量が非常に少ない状態になります。

一方、無垢材は、木を切り出しただけですから、木の繊維と繊維の間に小さな隙間があります。

そのため、熱の伝わり方がとても柔らかくなるので、無垢材の種類によっては、真冬でも裸足で十分生活することが可能になります。

例えば、

ステンレス製の鍋土鍋を冷蔵庫に入れたらどうなるか?

ということを想像してみると分かりやすいと思います。

冷蔵庫の温度は一定ですが、ステンレス製の鍋を触ると相当冷たいことがイメージでき、土鍋は、確かに冷たいですが、ステンレス製の鍋ほどの冷たさは感じないことが想像できそうです。

肌に触れる部分の素材の質感によって、暖かく感じたり、冷たく感じたりするということです。

高気密・高断熱の性能をある程度維持することは大切ですが、それらを表すC値・UA値だけで夏や冬の快適性を評価するのは、危険な気がします

新築やリノベーションを考えるのであれば、条件の悪い時(とても暑い時期・寒い時期)を敢えて選び、体感で判断することが一番確かだと思います。

(株)ハウス工房では、体感を希望された方々には、実際に生活されている方の住まいをご案内するようにしています。また、スリッパ等も準備せず、裸足で住まいの感覚を感じていただくようにしています。

 

無垢材も様々な種類があるが針葉樹の方が暑さ・寒さは和らぐ

夏は涼しく、冬は暖かく感じる住まいが理想ですから、当然、私としては、無垢材を使用することをオススメしています。

ただ、店舗の場合は、一般的な複合フローリングで施工をすることもありますが、無垢材の快適さを知っているために、心苦しく感じることもあります。

じゃあ、無垢材の床にしたら夏も冬も快適?

と言われることがありますが、無垢材にも様々な種類があります。

暑さ寒さを凌ぎ、快適な暮らしをしたいのであれば針葉樹

まずは、このことを覚えておいてください。

 

多くの場合、針葉樹は広葉樹よりも成長が早いです。

 代表的なもの特徴
針葉樹杉・檜成長が早いために繊維と繊維の間に隙間がある。空気をしっかりと含んでいるために保温性にすぐれている。
広葉樹くり・やまざくら成長がゆっくりなために密度が高い。しっかりと繊維が詰まっているために、杉や檜と比較すると硬い。また、含まれる空気量が少ない傾向にあるので、保温性は杉や檜には劣る。

針葉樹の場合、柔らかいことがデメリットとして挙げられるが、木材を丁寧に乾燥したものであれば、大抵の凹み傷は、ほぼ分からない状態に簡単に戻すことができます。

 

詳しくは、無垢材のフローリングの凹み傷は水だけで治る【実験した結果】をご覧ください。

実際にわざと傷を作って、その傷が治る過程を紹介しています。

 

床材として使われる無垢材の一部を紹介

床材として利用される無垢材は相当数の種類があります。

ここでは、いくつかの種類の無垢材の特徴を紹介ます。

パイン材

パイン材の木目

パイン材の木目

北米産のマツ(針葉樹)をパイン材と呼びます。

全体的に写真のように綺麗な白に近いを色をしており、柔らかく、価格も手頃なことが多く、人気があります。

経年とともに味わい深い、もう少し黒みがかった色に変化していきます。

国内の松をパイン材として呼ぶ事はなく、一般的にパイン材と言えば、輸入されたものを指します。

 

ウォールナット

ウォールナットの木目

ウォールナットの木目

ウォールナットは、クルミ科の広葉樹。

広葉樹は、基本的に成長がゆっくりなために、木の密度が高くなる傾向にあります。

ウォールナットは、非常に密度が高く、硬いためになんと言っても丈夫なところが一番の特徴。

ただ、成長がゆっくりということは、生産に時間がかかるということで、必然的に価格は高くなってしまいます。

また、硬いということは、丈夫な反面、暑さ・寒さの影響は、柔らかい木に比べると受けやすいというデメリットがあります。

色は少し暗い色をしているために、落ち着いた雰囲気の部屋になります。

 

クリ

クリ(栗)の木目

クリ(栗)の木目

日本では古くからとても丈夫な材として使われてきました。

見た目も綺麗なのですが、広葉樹のために成長はゆっくりなために非常に高価。

密度が高いために衝撃などには強いですが、暑さ・寒さの影響は、柔らかい木に比べると受けやすくなります。

 

杉の無垢材でも丁寧に乾燥させ、うづくりにした音響熟成®︎木材

杉の無垢材でも丁寧に乾燥させ、うづくりにした音響熟成®︎木材

杉も古くから建築に使われてきた木材で、知らない人がいないと言ってもいいほど有名な木。

針葉樹で、成長が早いために質感は柔らかいために、暑さ・寒さの影響は随分和らげてくれます。

これまで、有名な北山杉などを使いながら施工をしてきましたが、現在は、圧倒的に耐久性・質感・くるいなどがすくない音響熟成®︎木材を使用しています。

床材は、フラットなものでも写真のようなうづくりのどちらでもいいのですが、圧倒的にうづくりを選ばれる方が多いのが現状です。

 

最近、輸入された無垢材(パイン材・ウォールナット)も人気がありますが、木材を輸入するには、基本的に消毒などを行わないといけません

それでは、木が死んでしまいます。

また、消毒の際に使用した薬剤が室内に蔓延することになるために、私たちは床材に輸入木材を使うことはありません

 

詳しくは、そもそも無垢材とは?フローリング販売店の営業マンも知らなかった真実

をご覧ください。

 

古来から現代まで人が好み続けているものの共通点とは?

玄関の床も冷たさをあまり感じない空気がうまい家®︎

玄関の床も冷たさをあまり感じない空気がうまい家®︎

近年、住宅性能はかなり向上してきました。

断熱性能や気密性を数値で表現し、住まいの性能を説明をすることは簡単ですが、私たちは、空気がうまい家®︎を作り、自然が演出する味わいを感じながら生活をして欲しいと願っています。

高性能な住宅はたくさんあり、人気を集めている一方で、古民家に惚れ込む人も後を絶ちません。

芸術の世界を見ても、食文化の世界を見ても、ずっと愛され続けているものは、より自然に近いものではないでしょうか。

長い付き合いをすることになる住まいですから、ずっと好きでいられる住まいになるかどうか…そんな視点で、様々な住まいを体感することが大切だと思います。

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