【合板は丈夫?】ボード系木材の様に小さな木を貼り合わせる良さ

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九谷田 義之

不動産・施工に関するお金に詳しい人。同じ費用をかけるなら本当に重要なところに費用をかければいい。削減できるところは削減も惜しまない。なぜかお客様の子どもに愛される。

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美味しいお料理を作るには、食材についてより深く理解することは大切です。

絶対に「食材について深く知らないといけいない」というわけではありませんが、深く知っていた方が美味しいお料理になる可能性は格段に高いことは、誰も異論がないはずです。

いい住まいを建てるには、木材の質が重要なのですが、残念ながら2021年6月に入ってから、木材の価格が随分高くなってきました。

ウッドショックと呼ばれる減少ですが、その事が紹介されているニュース記事の中で、

自分の山の木材がどこで何に使われているかを知らず、建築業者は、建てている住宅に使う木材の産地もわからない。だから増産の提案を受けても、誰が儲けるのか、誰がリスクを負うのかと疑心暗鬼にかられて、なかなか連携して動かない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2793cd810fb36d7abd181e91ea224cf9c9077b2f より引用

この様な記述がありました。

私たちの場合は、産直に近い形で、住まいづくりを行なっているために、木がどの様にして木材になるのかをできる限り見ていただくようにしています。

ところが、住まいづくりをしている者として、この様に捉えられているのも悔しいと同時に、業界としては、大きな課題の一つとして真剣に受け止める必要があると思っています。

 

さて、これまでにも、素材をしっかりと見るという意味で木材の強さに関する記事を書いてきましたが、今回は、

様々な角度からの力に耐えられる合板(板の重ね方)は弱い

ということを詳しく解説します。

これは、一般の方々だけに限らず、施工に関わる方、住宅に関する営業マンでさえ、時々誤解をされているケースをみますので、何度も読んで理解を深めていただけたら嬉しいです。

 

木を貼り合わせて作るボード系木材の歴史から見えること

木を貼り合わせて作られる木材は様々な種類がある

木を貼り合わせて作られる木材は様々な種類がある

本来、木は縦方向(繊維方向)に対する力に強いとされています。

もちろん、横向きの力も加わりますが、縦向きにかかる力と比べると随分小さいことは明らかです。

詳しくは、【木造住宅の強さ】生えている木と住宅になった時の違いを知るで解説をしています。ぜひ、読みください。

さて、このことが分かると、当然、次の様な発想が生まれます。

繊維の方向を変えて重ねて強度を強くする発想

繊維の方向を変えて重ねて強度を強くする発想

上の図の様に、強い方向、弱い方向の性質が打ち消される様に単板を重ねていけば、素晴らしい板になるのではないか?

という発想です。

実際にこの様な板は数多くあり、時代と共に変化していきました。

特にパーティクルボードやファイバーボードの変化から木の性質を見ることができます。

 

パーティクルボードやファイバーボードは方向性が無いから優れもの?

パーティクルボードとは、上の写真の様な木材です。

見ての通り、細かい木片が一見ランダムに配置されている様に見えます。

もちろん、これらの木片は接着剤で固められているのですが、繊維が横方向に向いているものもあれば、縦方向に向いているものもあり、これらのバランスがほぼ均等であれば、縦方向にも横方向にも強いのではないかと考えられます。

どちらにも強い!というのが、発売された当初売りだったのですが、研究が進むにつれて、

どちらにも強いという組み合わせでは十分な強度を出すことができない

ということが明らかになってきました。

大きな強度を必要としない、家具などに利用する分には問題ないのですが、住まいの構造に用いるには、まだまだ課題があるということです。

お姉さん
お姉さん

あれもこれも求めると、結局、どちらも良い結果が得られないっていうのと似ている気がするなぁ。

 

木片をランダムに配置するのがダメなら人工的に方向性を作ろう!

そこで、人工的に方向性を持たせるようになってきました。

それがOSB(Oriented Strand Board-オリエンテッド・ストランド・ボード)と呼ばれるものです。

言葉だけ見ると難しいものの様に見えますが、簡単にいうと、

木片の方向性を管理して作ったボード

ということです。

先に紹介したこの写真も一見木片がランダムに置かれている様にも見えますが、丁寧に見ると横方向が意識されていることが分かるはずです。

以前作られていた全く方向性の無い板は、市場をOSBにとられてしまい、結果として衰退していきました。

つまり、人が考えた小さな木片を集めて作る木材の場合の仮説、

強いものと強いものをバランスよくかけ合わせると
より強くなるだろうという仮説は間違っていた

ということになります。

大きな単板を重ね合わせる場合や集成材の様な場合は、また性質が異なります。

 

OSBの様な木材は万能か?制作の過程から考えてみる

OSBをふんだんに使った空間

では、人工的に方向性をもたせたOSBは優れた木材だと言えるのでしょうか。

制作の過程を見ると、メリット・デメリットが明らかになります。

  1. 木を繊維方向に細かく裁断する。
  2. 大きな節・割れなどの問題がある部分を除去する。
  3. 接着剤を塗り、マイクロ波または蒸気で加熱する。
  4. 圧縮して裁断をして出荷する。

 

OSB木材のメリット

  • 木を細かくすることで、欠点となる部分(割れ・節)を除去することができる。
  • 木を細かくすることで木片を乾燥させやすい。
  • 天然乾燥の木材と比較すると製品完成までの時間が圧倒的に短い。
  • 製品の品質の個体差をかなり小さくすることができる。

製造の過程を見るだけでも、この様なメリットが見えてきます。

特に、品質の個体差が小さいというのは、商品をパッケージ化して全国展開をしている大手ハウスメーカーにとっては、とても重要な要素となります。

 

OSB木材のデメリット

  1. 木を使っているとはいえ、多くの接着剤を使っているために重くなる。
  2. 接着剤の揮発による健康被害(アレルギー・アトピー・化学物質過敏症など)が発症する可能性が高まる。
  3. 本来、木は水分を吸放出するものだが、それはできない。
  4. 無垢材は経年ととも強度が強くなるが、OSBは強度が上がることは考えられない。

現在、建築基準法では、接着剤の揮発の問題については、ホルムアルデヒドについては軽く規制がされていますが、その他の化学物質については、規制がなされていないのが現状です。

また、一般的にはOSBの表面に化粧板・フィルムが貼られたものが多く使われていますが、触った時の感覚は、非常に冷たく感じます。

冬暖かく・夏涼しく生活したいというのは、誰もが希望することですが、OSBそのものの断熱性は、無垢材と比較すると下回る傾向にあります。

一言でOSBと言っても様々な種類があるために全体的なメリット・デメリットという意味でご理解ください。

 

 

住まいづくりは強度・断熱性などが全てではない

無塗装の無垢材使った空気がうまい家®︎

無塗装の無垢材使った空気がうまい家®︎

今回は、小さな木片を集めて作るボード系の木材について、簡単に紹介しました。

一見、木の破片を適当に集めて圧縮している様に見えるものであっても、とても細かいところまで配慮されて作られているということを感じていただけたら嬉しいです。

ただ、今回紹介したボード系の木材は、強度という側面からしか見ていません。

もちろん、強さも大切なことですが、内装材として使うのであれば、肌触り・室内空気の心地よさなども見ていく必要があります。

私たちの場合は、室内空気の質によって、アレルギー・アトピー・化学物質過敏症などの症状が大きく改善されてきた事例を相当数みてきました。

そのため、塗装なども一切していない無垢材で施工することをオススメしています。

【木造住宅の強さ】木そのものの強さについて知る・構造より重要で触れたように、木は長い歴史の中で、現代のような構造がベストだと判断し、非常に優れた構造を維持しています。

また、今日紹介したように人が簡単にこうだろう…と考え、一見、理にかなったことの様に見えたものでも、間違っていることもありました

こんなことを踏まえると自然が長い歴史の中で作ってきた性質を十分に知り、使い方を追求するということも、新しい技術を開発するのと同じくらい大切なことだと思うのです。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

包丁や大工が使うノミかカンナは、正しく使えば素晴らしいものを生み出しますが、間違った使い方をすれば凶器にもなってしまいます。

住まいを作りに関わる以上、素材についてもさらに深く学び続けたいと思います。

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