年々、健康を意識する風潮が強まっている気がします。
例えば、
- 健康食品・サプリメント
- トレーニングジム
- 空気清浄機
- フィットネストラッカー など
そして、住まいも「健康住宅」という言葉が随分メジャーになってきました。
ところが、先日、次の様な質問を当ブログからいただきました。
様々な記事を拝見して、御社の場合、住まいと健康、暮らし方にも相当こだわっていらっしゃる様なので、ご意見をお聞かせください。
(一部抜粋、コンパクトにするために文末は変更しています。)
とても興味深い質問だと思いました。
この機会に、健康住宅とは何か?改めて考えてみたいと思います。
結論
- 住めばより健康になる住宅は、ほぼ存在しない。
- 健康を害する程度を弱めた住宅はたくさんある。
厳しい表現になってしまいましたが、私がこう考える理由を詳しく解説します。
そもそも健康住宅とはどんなものか?
これは、住宅業界の課題だと思いますが、
そのため、A社が言う健康住宅のイメージとB社がいう健康住宅のイメージが大きく異なる場合も多々あります。
どの程度の違いがあるのか、さらに詳しく見ていきましょう。
食品の場合を例に挙げて健康を考えてみる
健康な住まいの話をすると、建築業界で使われる言葉を使用しなければいけません。
それでは、難しく感じる方もいるので、分かりやすく、健康的な食品を例を挙げて解説します。
ここで大雑把に捉えていただけたら嬉しいです。
例えば、
と言われます。
一般には、ネギに多く含まれるアリシンと呼ばれる成分は疲労回復や新陳代謝の活性化などに役立つとも言われています。
では、ネギを食べるとより健康になるか?というと様々な考えが出てきます。
代謝がよくなるなんていいわね。
お肌のことを考えると、ネギはモリモリ食べた方がいいよね。
だからと言って、農薬だらけのネギをたくさん食べるのは心配だよ。そこを意識するなら、有機栽培ものでないと!
基本的には健康的だと言われる「ネギ」ですが、
- ネギなら健康的でいいと思う
- 良質なネギでないとかえって健康を害するのではないか?
- 良質のネギをたくさんとればとても健康的だ
様々な考え方ができるものです。
これよりも大きな感覚のズレが「健康住宅」という言葉の中にあるということです。
実際に、ハウスメーカーと弊社の考え方を比較してみる
最近の住宅業界の動向は、
- 何重にもフィルターを重ねた換気システムで空気の汚れを除去する
- ホルムアルデヒドの発散量の少ない建材を使う
- 高気密高断熱でヒートショックを抑え、命を守る
この様な工夫で、健康に対する配慮を行っています。
ただ、これらを見ると、
であることに気付きます。
また、健康を害する可能性があるものを、機械的・人工的に除去することで本当に問題が解決できるのか? 違和感がある…という声もあるのが現状です。
住まいを機械的・人工的にすることによって、住まいの構造はかなり複雑なものとなり、コストが高くなり、またメンテナンスにもコストがかかってしまいます。
いわば、次のような状態です。
不健康なのか、健康的なのか…見えにくい状態に陥っているのです。
自然素材の家・無垢の家で暮らしたいなら知っておきたい木の話も参照してみてください。
ところが、あなたがイメージする健康住宅とは…
ではないでしょうか。
例えば、
これを考えてみると答えは見えてきます。
- 温泉や風情の楽しめる宿泊施設
- 空気がいい田舎町
- 海や山などの景色がいいところ
- その地域の美味しい食べ物があるお店 など
決して、手術室の様な無菌室ではないということです。
また、人工的に不健康な要素をいくら取り除いても「より元気になる」ということは考えらないということは直感的にも分かるはずです。
その理由は、私たちは人間であって、自然界の一員でもあるためです。
化学的に健康的であっても、心からの健康はえられない…という不思議さを私たちはもっているのです。
この不思議さについては、高気密高断熱住宅は心地いい?【心地良さは機械で作れない理由】で詳しく解説しています。
こう考えると、外と内を厳密に遮断し、機械によって作り出した空間は、随分消極的な健康住宅であって、自然の力をふんだんに用いた住まいは、積極的な健康住宅と言えます。
当然、私たちの場合は、後者の考え方を大切にしていますから、使用する木材にこだわり、壁は今の時代でも漆喰を塗っています。
海に転がっている貝殻が汚れないのと同じように、幻の漆喰®︎は部屋中の化学物質を分解してくれるために空気清浄機・フィルター搭載の換気システムは不要になります。
また、床材も木材自体がたっぷりの空気を含み、季節応じて適宜、様々な調整をしてくれるので、床暖房の設置をすることはまずありません。
空気清浄機については、【実例】空気清浄機の効果でシックハウスを抑える事ができるのか?を参照してください。
また、換気システムの設置義務化の背景や運転のさせ方については、24時間換気システムは切っていい?【高気密高断熱住宅は要注意】に詳しく紹介しています。
さらに私たちが床暖房を設置しない理由は、床暖房を設置したいと言われても「不要だ」と断言する5つの理由をご覧ください。
「いただきます」を言わない生活は苦しいはず
美味しそうな食べ物が食卓に並ぶと、思わず「いただきまーす」と言いたくなるものです。
そこには、子どもからすると「もう食べてもいい?」という気持ちも込められています。
もし、今日から「いただきます」を言わずに生活をしなさいと言われるとどうでしょうか。
とたんに、どのタイミングで食べ始めていいのか困る人も多いでしょう。
それくらい、「いただきます」という言葉は私たちの生活に馴染んでいるのです。
実は、アメリカでは「いただきます」に該当する言葉はないそうです。
では、なぜ、日本では、これだけ浸透しているのか。
それは、
という宗教観のようなものが、古来から伝わり、現代でも「その考え方は大切にした方がいいよね。」という感覚があるためです。
私も仏教徒という訳ではありませんが、この考え方は大切にしたいと思っています。
現代は、食べ物が豊富にありますから、小さな子ども達が食事の度に「大自然に感謝!」という気持ちをもちながら「いただきます」を言うことは少ないと思います。
それでも、「いただきます」という言葉がなくならない限り、「食べ物はとても大切で、大自然の恵み」であるという考え方もなくならないでしょう。
たった一言の「いただきます」が、食事の楽しさや深みをより強くし、さらに健康的な生活へと導いてくれるのも確かなことです。
住まいや調理器具も全く同じで、日本には昔からたくさんの木があり、その資源を有効に活用するにはどうすればいいのか?先人達は様々な工夫をしてきました。
その努力や工夫は、大いに語られることは滅多にありませんが、自然の恵みで作られたものと共に暮らす中で「いただきます」の様にゆっくりと浸透していけば、心も満たされる生活になると信じています。
何でも、科学的・数的に考えることが重視される社会ですが、住まいは何度も買い換えることができないために、この様な感覚的な満足と健康も重視したいのです。