木造の住まいを建てる時、また、DIYなどで家具を作る時に、
という心配される声を聞くことがあります。
答えは、
工夫次第でその程度は抑えることができる
です。
じゃあ、木造建築物や木製家具はダメじゃないか?ということになりますが、それ以上に様々なメリットがあり、デメリットも工夫次第で克服できるために、現代でも木造建築は多数建てられ、木製家具も根強い人気があるのが現状です。
木造建築物や木製家具のメリット
- 価格が鉄骨などと比較すると比較的安い
- 神社仏閣など、相当な築年数であっても大きな問題がないという実績がある
- 木は古来から身近な存在なので、馴染みがあり安らぐ
- 生きた無垢材であれば、湿度を調整する力をもっている
- 断熱効果が高い
- 傷・凹みなどを修復する力を持っている
なお、そもそも無垢材とは?ということについては、そもそも無垢材とは?フローリング販売店の営業マンも知らなかった真実をご覧ください。
ここでは、
- 無垢材が反る、割れると言われる仕組み
- 反ったり、割れたりするデメリットを防ぐ工夫
について詳しく解説します。
存分に木の性質を生かした住まいで生活をしたい、または、一生使い続けることのできる家具を手に入れたい…と言う方は、ぜひ、この機会に木の性質を知ってください。
この話を知った上で、様々な住まい、家具を見ると、「木としての働きをしっかりしてくれるものかどうか…」慣れてくると、誰でも見分けがつくようになります。
無垢材が反ったり割れたりする理由
一般的な無垢材が反ったり、割れたりするのは、木が乾燥して起きる現象です。
では、なぜ木を乾燥させる必要があるのか?というところから、見ていきますので、ご存知の項目については、適宜飛ばしながらお読みいただけると幸いです。
木を乾燥させないといけない理由
木を乾燥させないといけない理由は、
- 木に水分が多く含まれていると適切な加工ができない
- 乾燥と共に大きさが変化してしまう
ためです。
木に水分が多く含まれていると適切な加工ができない理由
当然、山で切ったばかりの木にはたくさんの水分が含まれています。
木の種類や状態によって様々ですが、非常に水々しいために、カンナやヤスリをかけることもできません。
直感的なイメージになりますが、鰹節の塊は非常に硬く、水分も少ないために削ることができますが、生のカツオを削ろうとしても身が崩れてしまうのと似ています。
木は乾燥と共に大きさが変化していく
この現象は、生の椎茸と干し椎茸を比較すると分かりやすいです。
肉厚のふっくらした椎茸を干し椎茸になると随分小さくなってしまいます。
けれども、一度しっかり乾燥させた干し椎茸をさらに乾燥させても、大きさが変化することはありません。
木材も同様で、水分量が多い状態から少ない状態になる時には、大きく変化します。
ところが一旦、水分が抜けてしまうと、変化する量は随分小さくなるために、精度の高い住まいや家具を作ることができます。
仮に、生木で犬小屋を作ったとしても、1年もすれば木は縮んでしまうためにバラバラになってしまう可能性が高いことは、あなたも十分想像できるはずです。
この様なことがあってはいけないために、木を乾燥させることは重要です。
木が乾燥していく全体的な流れ
木が乾燥していく過程を紹介しますが、乾燥する過程で、反る・割れるというのは、イカを開いて焼くとクルンっと曲がる現象と似ていると捉えていただくといいでしょう。
木は、次の2段階を経て乾燥していきますが、その際に次の性質が見られます。
- 年輪方向によく縮む(直径方向の2倍縮む)
- 直径方向にはあまり縮まない
図で表現するとこの様な性質があるということです。
つまり、木を乾燥させていくと、直径はあまり変化しないのに、円周(弧)は随分短くなるという矛盾が生じるために割れたり、反ったりします。
なぜ、この様な体積の変化がおきるのかもう少し詳しく見ていきましょう。
STEP1 木の内部の水分を抜く
この様に、木の細胞内部の水分から抜けていきます。
ところが、細胞内部の水分が抜けただけでは、まだ、形状に変化が生じません。
簡易的な図ですが、図からも形が変わらないことは想像できると思います。
まだまだ、乾燥させてやる必要があります。
STEP2 木の細胞膜の内部の水分を抜く
ところが、まだ細胞膜内部の水分が残っています。
この細胞膜内部の水(結合水)が抜けてくると、はじめて木が収縮を始めます。
この収縮の際に、直径方向の収縮具合と、年輪方向の収縮具合が異なるために、割れたり反ったりするのです。
図には、変形が起きる流れを表現していますが、同じ理由で割れが入ることもあります。
無垢材の反りや割れを防ぐために先人が考えた工夫が背割り
これまで見てきたように、乾燥する際に、反りや割れが生じないように、古くから木材に切れ目の様なものを入れて問題を回避してきました。
また、近年では、ボンドやロウの様なものを活用する方法も用いられています。
収縮が起きることが分かっているのであれば、先に割っておこう!
先に切れ目(背割り)を入れておくと、その切れ目を中心に木は収縮を調整することができるので、意図しないところが割れるということが防げます。
一見この様な「割れ」が入っていると強度が落ちてしまいそうな印象がありますが、背割りの入った木材の強度は、試験場などのテストでも強いことは明らかになっています。
割れる可能性があるところを補強、またはしっとりさせよう
木を乾燥させるのが目標なのに、「しっとりさせる」というと矛盾した印象があるかもしれませんが、割れる可能性が高い部分に、
- オイルの様なものを染み込ませておく
- 接着剤を先に塗っておく
という方法があります。
少し無理矢理感があるかもしれませんが、熟練の職人さんが、どこに何をどの程度塗っておくか判断しながら、乾燥の割れや反りに備えているのが一般的です。
ところが、この様な処理をしてしまうと、「木を切って、乾燥させただけ」という私が考える無垢材の定義とは若干、異なってしまいます。
通常、無垢材の床や家具を購入しても、時々オイル塗装などをしないといけないと言われるのは、製品になってからも乾燥は続き、反り・割れの可能性があるためです。
詳しくは、無垢材のフローリングにワックスは必要か?【本物の無垢材であれば不要】も参照してください。
では、「背割り」を入れたり「何かを塗る」ことをしたりせずに、木材を乾燥させることはできないのでしょうか。
油分の多い木材の水分を「自然の温度・短期間」で抜くといい!
木は、多かれ少なかれ油分をもっています。
建築物によく使われる杉は割と油分が多い木なのですが、その中でも、「飫肥杉」は油分が多いことで知られています。
木材を乾燥させる際にロウの様なものを人工的に塗り込み、割れを予防してきたのですが、木がその成分を多くもっているのであれば、割れるリスクが大きく減ります。
では、油分の多い木を乾燥させると割れや反りは生じないのでしょうか?
実は、これだけでは問題は解決できず、様々な課題が残ります。
- 人工的に圧力、高温にして乾燥させる木の持ち味が激減する
- 自然環境で乾燥させると膨大な時間がかかり、油分までも抜けてしまうことがある(人工的な乾燥方法より遥かに油分は残ります)
実際に、木材に圧力を加えたり、高温にしたりして乾燥させると木の繊維・細胞が壊れてしまい木がもっている調湿効果が大きく落ちてしまいます。詳しくは、無垢材に調湿効果はあるのか?【エアコンの利用量が減少する】にデータを掲載しています。
こうなると、自然な環境でありながら、短期で水分を抜くということを考えないといけないのですが、私達が施工に使っている音響熟成®︎木材は、それを実現したものです。
これまでにもたくさんの住まい、店舗に音響熟成®︎木材を使用してきましたが、ささくれたとか、反りが激しいと言ったクレームは1件もありません。
もちろん、住まいを建てようと木について勉強をされた方にとっては、訳が分からない謎のような話ですが、実際に生活されている方の住まいや木材が乾燥させられている現場を案内しています。
一度、いい条件で丁寧に乾燥させられた木材をご自身の目で見て、触り、香りを楽しむと様々な木材の質というものが手に取るように分かります。
木の温かみのある雰囲気の住まいで生活をしたい…とお考えの方は、音響熟成®︎木材をはじめ、他社さんの天然乾燥の木材をたくさん触っておくことをおすすめします。
なお、音響熟成®︎木材の特徴については、無垢材のフローリングにワックスは必要か?【本物の無垢材であれば不要】に詳しく掲載しています。
さらに、床材は古くから技法を取り入れるケースが圧倒的に多いです。詳しくは【一手間加えられた床無垢材】うづくりのメリットとは?をご覧ください。
木材の乾燥について、お伝えしましたが、これを機に先人達の工夫や努力にも敬意をもっていただけたらとても嬉しいです。
実は、私は厳しい時代を乗り越えて生き延びてくれた杉にも敬意を払っています。
そんな話は、また別の機会にお伝えします。
最後までお読みいただきありがとうございます。