この記事の内容は、次の動画・音声でもご覧いただけます。
近年(2021年現在)は、低体温で悩む人が増え続けている印象があります。
私が、教育の現場にいる頃も、
すみません。
うちの子、低体温で特に朝が辛いようです。
学校に遅刻してもそういう理由だと察していただけると助かります。
この様な保護者の声もたくさん聞いてきました。
また、実際に体温を子ども達に聞くと、34℃台という子もいました。
医療の専門家は、低体温は良くないと、どの方も口を揃えて言われますので、次の点について整理をしておきたいと思います。
- 低体温は、何がいけないのか。
- 何が原因で低体温になってしまうのか。
- どうすれば、低体温の問題を改善できるのか?防げるのか?
医学的な部分については、コロナをきっかけに家づくりを考える【公衆衛生学の教授に訊く】の記事で紹介した、烏帽子田彰名誉教授をはじめ、薬剤師・医師・養護教諭などの考えも踏まえながら詳しく見ていきましょう。
また、低体温の原因は、様々な考えられますが、ここでは、
をいう点についても詳しくふれていきます。
低体温になるとどの様なことで困るのか?
低体温は、様々な問題の引き金になるとも言われています。
それがどういったものなのか?私自身がこれまでに関わって感じてきたことと、医学分野の専門家方の考えを合わせて紹介します。
実際に低体温の子と関わって感じた印象
およそ、平熱(午前10時ごろ)が35.9℃以下である子ども達の様子を整理してみると、次の様な傾向があるといえます。
- 無気力な雰囲気
- 運動・活動的な取り組みを面倒に思う
- 疲れやすい(給食前には疲労しきっている)
- 集中力が持続しにくい
- 欠席日数が多い
低体温だからこの様な状態になってしまったのか、因果関係は難しいところです。
けれども、この問題と正反対の子ども達(活気に溢れ、活動的な事を好み、集中しすぎる程集中する)と言った子ども達の場合、体温計を用いるまでもありません。
彼らが近づいてくるだけで、物凄い熱気を感じる程でした。
実際に、体温を測ったこともありますが、およそ36.8〜37.2℃であり、どちらかというと、体温が高い傾向にありました。
つまり、
ということは言えそうです。
さらに、不登校だった子ども達の体温を保護者に伺ったことがありますが、体温は36.2℃より低い子ばかりでした。
低体温に対する専門家の意見
体温が低いと、血流が悪くなってしまいます。
血流が悪いということは、体の細部にまで必要なものが行き届くのに時間がかかったり、行き届かない場合も出てきてしまいます。
また「脳は大食漢」と良く言われるほど、エネルギーを消費する臓器ですが、ここに必要なものが行き届くのに時間がかかるようであれば、集中力が低下しやすいということも十分理解できるはずです。
また、体内の免疫が活発に活動できる温度帯は、37℃〜38℃くらいですから、低体温であれば、素晴らしい免疫をもっていたとしても十分に機能してくれないということになります。
そのため、風邪をひきやすい体質にもなりがちです。
本来、代謝が非常に良く、体温が高い傾向にある子どもも低体温によって、無気力になり、発病しやすくなることは、子どもの人生を考えても大きなリスクだと言えそうです。
烏帽子田彰名誉教授は、コロナをきっかけに家づくりを考える【公衆衛生学の教授に訊く】の記事で紹介した対談で、こう言われています。
体温が下がると、免疫力も落ちてしまいます。
SAIN 公衆衛生学の専門家に聞くより抜粋
では、どうすれば、低体温になりにくい体になるのでしょう。
低体温になりにくい身体を作るには、身体の機能を十分活用する
私たち身体は非常によくできていて、
ということは確かなことです。
その必要な機能の一つが「免疫」です。
ですから、乳幼児の頃にたくさん風邪をひいて、何度も発熱をした方が元気な子どもになるとも言われています。
また、筋肉量を増やして代謝の良い状態を維持することも大切だと言われています。
つまり、
- 乳幼児の頃に発熱の体験をして免疫を作っておくこと
- 適度な運動をして筋肉量を増やし、代謝を良い状態にしておくこと
がとても重要だということです。
さらに、意外なことがあります。
冷暖房に依存する傾向が強い子どもほど低体温になりやすい!
最近では、ヒートショックを和らげるために、高気密高断熱の住まいが健康的であり、全館空調の住まいが命を守ることにつながるとも言われています。
ところが、人類史を見ても、日本の暮らし方を見ても先人は長年、自然と共に暮らしてきました。
つまり、多少、暑い寒いはあるもののその中で、命を繋いで見事に生きてきたわけで、年中快適な温度の室内で暮らすことが果たして健康的なのだろうか?という疑問を感じる方も多いでしょう。
実は、小学生の低体温について(田中英登・甘利修)という研究で、生活温熱環境と体温について次のような記述があります。
図11は児童の冷暖房依存度の結果を示す。冷暖房依存度とは、暑い・寒いと感じたときにすぐに冷暖房をつけるかどうかを調べた項目で、すぐつける場合を冷暖房に頼るとして回答させた。体温の低い、36.1℃以下の児童は冷暖房にたよる割合が他の体温水準の児童に比べて高い傾向が示された。この傾向は父兄の調査結果でも同様であった。
「小学生の低体温について」より引用
これは当然と言えば当然の結果で、常に快適な温度・湿度の環境で生活をしていれば、自分で体温を調整する機会が激減するために、何らかの問題が生じると考えるのが通常でしょう。
世界中の様々な気候をみても、通年で見ると様々な変化があるのが当然のことです。
確かに、一年中、快適な温度・湿度のもとで生活することは快適ですが、ずっと元気に過ごすためには、多少の寒い・暑いを身体で感じることもとても重要だと考えます。
実際に、低体温の子ども達と関わると、子ども達は決して悪くはないけれど、大人が選んだ住環境によって大変なことを背負っていると感じることもあります。
健康的に過ごすためにはどの様な住まいにすればいいのか?
ここまで、読んでくださったあなたならもう結論はお分かりだと思います。
- 季節を存分に感じられる住まい
- 自然の力の範囲で暑さ・寒さを和らげ、足りない部分を機械で補う
こうした住まいが、重要だということになります。
断熱・気密がとても重要なことの様に住宅業界ではよく言われますが、光熱費を抑えることを目的に生活をする人は極めて少ないでしょう。
季節の変化を感じ、子どもの成長を楽しみにしたり、生活を楽しむ場が「住まい」だと考ています。
そう考えると、如何に密閉するかに注力する必要はあまりありません。
実際に、そこまでしなくても、私たちが作る住まいは、冬でも暖かく、夏も十分快適に過ごすことができています。
そして、ここで一つ考えたいのは、
ということです。
近年になってさかんに、高気密高断熱の住まい!と言われることが増えてきましたが、年中通して非常に快適な空間を「蔵」は古くから私たちに提供してきてくれました。
その程度の技術は、とっくに実現させる力があったにも関わらず、先人達は「蔵」の様な構造の住まいで暮らすことはしませんでした。
それは、なぜか?今一度、深く考える必要があると思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「悪いことをしたら蔵に入れるぞ!」なんて言われたもので、何度が入れられたことがあります。
冬でも暖かいなぁ…と感じたものですが、ぬか漬けの臭いが辛かったのもいい思い出です。