【高断熱住宅と暮らし】地球の温度差を滑らかにする工夫から

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新築やリノベーション・リフォームを考える時に、断熱性はどうか?というところは気になるところです。

ところが、

あまりにも断熱性を高めてしまうと、
室内が快適になるために
一歩外に出るのが億劫になってしまいます。

それでも、「光熱費が安くなって、室内は年中快適!」と住まいは素晴らしい評価を得られるでしょうが、暮らし全体を見ると私は決して豊かな暮らしだとは思いません

では、理想はどの様な環境なのか?

一言でいうと、内側は快適だけど、廊下や玄関周りは少し寒かったり、暑かったりするような状態。

つまり、内側と外側の温度ができるだけ滑らかにつながる状態です。

詳しくは、高気密高断熱の住宅が良い理由と見えにくいデメリットに書いていますので、そちらをご覧ください。

高気密高断熱の住宅が良い理由と見えにくいデメリット
高気密高断熱の住宅が良いと言われる一方で、違和感を感じる方も多いのが事実です。なぜ、高気密高断熱が良いと言われるようになってきたのか?また、高気密高断熱化による見えにくいデメリットは何か?詳しく解説しました。

実は、地球規模で見ても、各地域の温度差をなめらかにする工夫がなされていて、その上で私たちは、何千年と暮らしてきたのですから、住まいづくりでも、滑らかに温度が繋がることを目指すのが最も自然です。

そこで、今回は、

流氷の存在が地球の寒暖の差を滑らかにしている

という話を詳しく解説します。

大自然が何億年もかけて生み出した一つの考え方に「なるほど」と思って頂けたら嬉しいです。

【大前提】地球にはたくさんの空気・水があるから寒暖の差が滑らか

真夏に太陽の光が降り注ぐと、暑さを感じます。

ところが、私たちが暑いなぁ…と感じても生きていられるのは、空気がどんどん循環するために、急激な温度上昇が見られないためです。

例えば、大気がほとんどない月は温度差が非常に大きいことがわかっています。

ほとんど大気がないため、昼夜の温度差が非常に大きくなります。月の赤道付近の観測では、昼は110℃、夜は-170℃と、その差は200℃以上もあります。

JAXA HPより抜粋

鍋でお湯を沸かすときも、徐々に温度が上昇していくのは、水が鍋の中で循環するためで、お湯の量が多ければ多いほど温度上昇は滑らかになります

だから、お蕎麦などの麺を茹でる時には、より温度変化を滑らかにするために、たっぷりのお湯で茹ででくださいと言われるのは、ご承知の通りです。

つまり、

空気や水がたくさん循環すれば温度変化は滑らかになる

ということです。

これが大前提なのですが、流氷はこの循環をさらに大きいものにする大切な役割を果たしています。

その仕組みを解説します。

温度を滑らかにする工夫1 流氷は太陽の光の多くを反射する

「流氷は太陽の光を反射する」というのは、いい天気の日にスキー場に行くととてもまぶしいのと同じイメージです。

厳しい冬が終わり、太陽の光が当たる時間が長くなってきても、流氷が太陽光を反射する鏡のような役割を果たすために、流氷がある地域の海水温は大きく上昇しません。

一方、流氷のない地域の海水の温度は上昇しやすくなります。

そして、海水に温度差が生じると、大きな循環が生まれます。

流氷がある場合、流氷付近の海水は温まりにくい

これにより、暑い地域がより暑くなることを防ぎ、寒い地域がより寒くなることを防ぐことができます。

さらに、流氷が溶ける過程も温度差を滑らかにする上で重要です。

もし、流氷がなければ、極地付近の海水温も上昇しやすくなるために、日差しが強い時期になるとぐんぐん温度上昇することが想像できます。

温度を滑らかにする工夫2 氷が溶ける時には温度は上昇しない

氷が溶ける時の温度変化(Dr.あゆみの物理教室 https://studyphys.com/latent-heat/より)

氷が溶けるには、0℃以上になる必要があります。

太陽の光がしっかりとあたり出すと氷は溶けはじめますが、この温度変化は上のグラフのようになります。

100の熱を加えたからと言って、氷の温度が100の熱の分だけ上がることはありません。

感覚的に言えば、100の熱はまず、個体を液体に変換するためのエネルギーに使われますから、氷の温度はしばらく一定のままです。

つまり、流氷があることで、日差しが強くなっても流氷付近の海水の温度は一気に上昇しません。

一方、赤道付近の海水は温度が上昇しますので、ここでも大きな循環が生まれます。

この様に熱を加えても温度が変わらない現象を「潜熱(せんねつ)」と言います。流氷に加えられた熱は、個体を液体にするパワーとして使われたという理解になります。

温度を滑らかにする工夫3 塩と水に分離するから循環が起きる

あなたは夏に凍らせたペットボトルのジュースを飲んだことがあるでしょうか。

溶けた部分から少しずつ飲み始めていくことが多いと思いますが、最後の方は、ほぼ水の状態で味がしない…と感じたことがあるはずです。

これは、味の成分は凍りにくく、水はよく凍るために起きる現象です。

これを流氷のある海に置き換えて見ると…

流氷の部分は、海水の中でも水の部分が凍り、塩分の部分は凍りにくいということがわかります。

そうなると、流氷付近の海水の塩分濃度は高くなることが分かります。

一方、赤道付近の海水の塩分濃度は、流氷付近よりも低いために、ここで大きな循環がうまれます。

つまり、流氷の存在は海水の温度が急激に変化することを防ぎ、大きな循環を生み出しています。

その結果、気候の急激な変化を抑えられ、私たちは生きられたのです。

いずれにしても、地球上で生命が生きられるのは、

地球が大きな循環を作り、急激な温度変化を抑えてきたから

です。

人も自然も急激な変化を嫌うもの

人は面白いもので、寒さにガタガタ震えていても、急に熱いお風呂に入ると苦痛を感じてしまいます。

一方、ぬるいお湯から徐々に温度をあげていけば、かなり熱いお湯でも、快適で、あったか〜いと感じるものです。

また、近年では「クーラー病」という言葉もよく聞くようになりました。

熱い日差しの中を歩いた後、急に冷んやりしたオフィスに入るなどを繰り返しても疲労してしまいます。

これまで見てきた通り、地球は何億年もの間、温度を急激に変化させない努力をしてきました。

そのため、私たち人間は、ゆるやかな変化に対応する身体の仕組みを整えてきました

人の身体が環境によってどの様な変化をしてきたのか?現代でも言える部分について、健康的な生活を送るために知っておきたい人の力【生活習慣を考えるヒント】をお読みください。

https://house-kobo.com/wordpress/2021/01/12/kennko-kurashi/

それなのに、

室内は屋外と比較すると断然暖かい、断然涼しいという急激な変化を感じるような技術を追求してきた

のです。

その結果、自律神経が乱れてしまい、他の機能まで影響が及んでしまうのです。

自律神経の大切さは、【育児と住まいの環境】自律神経を鍛え元気な子どもに育てるで紹介しています。

【育児と住まいの環境】自律神経を鍛え元気な子どもに育てる
子育てをするのにどの様な住環境がいいのか?と質問をいただくことがあります。その時に、自律神経の発達と視点から住まいを見るとたくさん気づかされることがあります。その上でどの様な住まいづくりの考え方をしたらいいのか解説しました。

この様に、地球の工夫を見ると、快適な住まいを作る上で重要なのは、

大きな循環を作り、徐々に内側と外側が繋がること

だということです。

ゆっくり、お風呂に入れば40℃のお湯はとても気持ちいいですが、寒いところで急に40℃のお風呂に入るのは地獄です。

同じ数値であっても人が感じる快適さが大きく異なることが分かります。

だから、私は夏や冬の厳しい気温と戦うのではなく、その厳しさを和らげる工夫をすることがとても大切だと思っています。

と言っても、急激な温度変化を和らげる工夫は、すでに自然界が十分にやってくれているので、自然なもので住まいを作ればいいと考えています。

空気がうまい家®︎仕様にフルリノベーション(京都府・京都市)

京都市内で行ったリノベーション完成直前のお住まい。

まだ、エアコン等が入っていませんので、この様に電気ストーブを使用しましたが、十分ホカホカでした。

ワックスや塗装もしていない床材には、たっぷりと空気が含まれているために、柔らかい暖かさを感じさせてくれたのです。

さらに詳しくは、無垢材のフローリングにワックスは必要か?【本物の無垢材であれば不要】をご覧ください。

無垢材のフローリングにワックスは必要か?【本物の無垢材であれば不要】
無垢材のお手入れはどうしたらいいの?ワックスは必要なの?などの質問がありますが、木の性質をちゃんと知っていれば、特別なことをしなくても良いことは分かります。ワックスを塗ってはいけません!とまでいう理由とは?

最後まで、お読みいただきありがとうございます。

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