健康住宅・高性能住宅を考える時のデータの見方【伝統も重要】

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九谷田 義之

不動産・施工に関するお金に詳しい人。同じ費用をかけるなら本当に重要なところに費用をかければいい。削減できるところは削減も惜しまない。なぜかお客様の子どもに愛される。

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本記事の内容はこちらの動画でも紹介しています。

コロナの影響もあり、近年は、より「健康的な住まい」が強く求められるようになりました。

もちろん、家づくりを考える際に、「家族が健康的に過ごせること」はとても大切な点となります。

ところが、「健康」というもは、専門家の間でも意見が分かれることも多くあり、また、個人差もあるものですから、何が正しいのか見えにくくなってしまいます。

近年、私が疑問に感じていることは、

  • 高気密高断熱にすればヒートショックを避けることができ、健康的だ。
  • 室内の温度を一定に保つことでアレルギー症状が和らぎ、風邪をひかなくなった。

などと言われることです。

この様な話は、多くのハウスメーカー・工務店が言われていることなので、間違いではないと思いますが、その根拠が「健康」を語る上では、足りない部分があります。

実際に、私はこれまでアトピーが酷く、1時間としてまとめて眠ることがなかった子どものご家族や、花粉症があまりにも厳しく、春は外出できないという様な方の住まいも作ってきました。

もちろん、その様な方々も1年程度で完治し、現在(10年以上経過)に至っています。

そんな経験も踏まえながら、健康的な住まいについて考えていきましょう。

結 論

近年、「健康に良いと言われる高性能住宅のデータ」は非常に短期。

仕方のない側面もあるので、

最も確実だと考えられる伝統を大切にする部分も多いに残す。

ということです。

正直なところを言うと、一般に言われる論調に乗ると、随分「売りやすい」のですが、人の身体の性質、これまで出会ったお客様の変容なども考慮すると、安易に多数派に便乗することはできません。

これが、どういうことか、詳しく解説します。

 

人間の健康・教育的な側面は、長期間の検証が必要

「住まいと健康との関わり」は、最近になって深い関わりがあると認知されるようになってきたと感じています。

ただ、健康も人の成長(教育的要素)も長い年月を経て結果が見えてきますから、短期的な検証でいいものもあれば、長期的な検証が必要なものもあるということです。

どういうことか具体例を挙げてみましょう。

 

卵は1日1個までしか食べてはいけないと言われてきた

現代では、「卵は1日に1個までしか食べてはいけない。」という人をほとんど見かけませんでしたが、以前は、厚生労働省までもがこの様な方針を示していました。

卵1個のコレステロール値はおよそ300mgなので、卵は「1日1個まで」が良い

昭和時代を過ごした方ならこの話を何度か耳にしたことがあるはずです。

ところが、卵を食べたからと言って、血中コレステロール値が上がるわけではないということが分かり、現在は、この様なことが言われることはなくなりました

この場合、卵1個の生活にしたからと言って、大きな健康被害が出ていないので問題ありませんが、

糖質オフダイエット」では様々な問題がおきたことは記憶に新しいでしょう。

現在(2021年3月現在)でも、「糖質はとらない方がいい」という声を聞くことがありますが、ダイエット・医療の業界では、「適度に糖質はとった方がいい」に変化してきています。

 

赤ちゃんは早く歩いた方がいい・抱き癖をつけてはダメ

 

教育的な分野では、赤ちゃんが早く立ち上がって歩き出すと優秀な子どもで、歩き始めが遅い子は、課題があるという見方がされた時期もありました。

実際には、あまりにも早く歩き始めた子の方が、腕にしっかりと筋肉がつかず、意図的に腕をできるだけ使おうとしないといけないケースも見られました。

また、「抱き癖をつけてはダメ」と盛んに言われた時期もあります。

その結果、十分に愛情を感じられなかった子どもが成長したあと、精神的な問題が発症するということも起こりました。

この問題は、非常に深刻ですが、誰も責任をとることができません。

ここで言う「早く歩く・抱き癖をつけてはいけない」というのは、短期的な視点でみれば、大人にとって嬉しいことであったり好都合かもしれませんが、長期的に見ると大きな問題となりました。

 

つまり、健康や人の成長という部分では、

短期的なデータ、明確な説明だけでは分からないことも多い

ということです。

では、住まいと人の健康との関係について見ていきましょう。

 

高気密高断熱・全館空調は健康的なのか?【データの期間が短い】

冒頭で触れた様に、高気密高断熱の住まい(高性能住宅)は、

  • ヒートショックを避けることができる
  • アレルギー症状を抑え、風邪を引かなくなる

ということが盛んに言われています。

様々な大学の教授の方々も基本的には賛同されていますが、現代ほど緻密な高気密高断熱の住まい(高性能住宅)は、まだまだ歴史が浅く、長期的な検証ができないというのが実際のところです。

 

例えば、HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)というものがあり、高気密高断熱に強く力が入れられるようになったのは、2009年以降のことです。

当然、この考え方が一気に普及したわけでもなく、現在もまだまだ普及しきれていない印象もありますので、本当に健康的だと言えるデータは十分に出揃っていないのが現状です

高気密高断熱の高性能住宅が悪いという訳ではなく、私の場合、十分なデータがない以上、「健康にいい」と言えないというだけのことです。

少し長期的な視点で見ると、

人がもっている調整機能を使う機会が減るリスクは大きい懸念がある

具体的には、

  • ヒートショックは抑えることができるが、暑さ寒さに応じて収縮する血管が収縮する機会を失うことでより早く動脈硬化がおきないのだろうか?
  • 空調が完備され、フィルターも搭載された様な住まいで、風邪をひかなかった子ども達は、これから出会う様々な問題に対応できる能力(免疫)をどこで身につけるのか?

という懸念をしています。

日本の人類の歴史を見ても、現代ほど高性能な住まいで生活をしたことがないために、簡単に「健康的です」とは私は言えないのです。

 

「ある程度、幼い頃にたくさん風邪をひいた方がいい」という考え方については、【子育ての住環境】風邪を引きにくい暖か過ぎる家は危険!をお読みください。医師の見解も交えながら詳しく解説しています。

また、

ヒートショックについては、何よりも早期発見が一番重要であるということなど、【健康住宅とは?】ヒートショックが抑えられる家は健康的か?にて詳しく解説しています。

では、どの様な考え方をしているのか次に紹介します。

 

長く続いている伝統は、人にとって有意義だからなくならない。

お正月には、多くの方が初詣に出かけられます。

なんとなく新たな気持ちになれるとか、1年間頑張ろうという気持ちになれるなど様々な利点があるからこそ、今もなお行われるのでしょう。

また、作者不明とされている「竹取物語」も、今もなお伝えられています。

架空の話ですが、あの物語から多くのことを学ぶことができるため、子ども達に伝えられ続けているのだと思います。

そして、長く続いた伝統の良いところは、大きな間違いがないということです。

 

例えば、

子どもが喘息気味で苦しんでいます。
新開発の薬を使おうか、水泳に通わせようか迷います。

という状況だとすれば、私なら水泳に通わせてみたいという様な考え方です。

当然、新開発の薬も認可され、ドクターに処方されるものであれば、安心できます。

けれども、

  • 歴史的に人は、運動を伴いながら生きてきた。
  • 適度な運動は、様々な病気を予防・克服するのに良い。
  • 水泳などのスポーツで呼吸器系を丈夫にした人が多い。

のなら、水泳を選択してもいいのでは?という考え方をします。

例え、その子にとって水泳が楽しいものでなかったとしても大問題になることはありません。

けれども薬があわなったなどのことになれば、非常に大きな問題になることもあります。

実際に、アトピーに苦しまれている方から相談を受けることもありますが、非常によく効く「ステロイド剤」によってより苦しい状態になってしまっている方もいらっしゃいました。

 

ここでは、分かりやすく水泳を例に挙げましたが、特に、高性能住宅と呼ばれる様なつくりになれば、修繕も非常に大変になってしまいます。

ですから、伝統を考慮して確実だと分かる範囲で施工を行うようにしています。

ついつい、新しい発見があった!ということがあれば、その考え方を取り入れたい!と思うものですが、健康と教育については、長期的なデータを見るということはとても大切です。

 

また、海外での研究を参考にする場合もありますが、身体については日本人の身体と西洋人の身体は全く異なる性質があるということも念頭においておきたいものです。詳しくは、和食と洋食の違いから暮らしを見直す【歴史的に洋風生活を見る】をご覧ください。

 

最後までおよみいただきありがとうございます。

光熱費が圧倒的に安くなる!と言われるZEH(ゼロエネルギーハウス)ですが、長期的にみるとかなりのリスクがありますので、私はオススメしていません。
詳しくは、【ZEHで光熱費が増加!?】海外の光熱費平均から未来を考えるをお読みください。

 

 

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