新築に限らず、リノベーションをするにしても、大きな費用と時間をかけるわけですから、誰もが「納得できる住まい」に住まいにしたいと考えます。
では、早速ですが、もしあなたがこれから新築をするのであれば、どの様な住まいならば納得できるでしょうか?少し考えてみてください。
実は、これまでにも多くの住まい作りに関わってきましたが、この様な質問をすると、
- 広くて明るいリビングがいい。
- 冬暖かくて、夏涼しい住まいがいい。
- 坪単価が○○円以下であればいい。
- オシャレなカフェの様な空間になればいい。
- 駅まで歩いて○分以内の場所がいい。などなど…
たくさんの要望が出てきます。
もちろん、これらの要望はとても大切ですが…
と質問をすると、不思議なことに「悪くはないけれど、幸せな生活がおくれるかどうかは別の様な気がする」という返答が圧倒的に多いのです。
けれど
要求が満たされても幸福は実現しそうな気がしない
というギャップが生まれてしまっています。
もちろん、あなたが考えた要求や理想像が悪い訳ではありません。
住宅がどんどん売れる様に「分かりやすい部分」だけを全面に押し出して、マンションや建売住宅を売ってきた、私たち住宅業界が作った大きな問題だと私は考えています。
そこで、今回は、住まいに対する哲学的な考え方、
という考え方を紹介します。
考え方の一つなので、見栄えの良し悪しなども無く、とても地味に感じられる話題ですが、先に触れたギャップを埋めるには、絶対に必要な考え方になります。
「幸せな家族生活を送りたい」と思われるなら、3分程度で読める内容ですから、最後まで必ず目を通してください。
人が幸せだと感じる時はどんな時か?【日本人固有の感覚】
「幸せを感じる」というのは感覚ですから、個人差も大きい問題です。
ただ、海外の方と深い付き合いがある方は、分かると思いますが、日本の多くの人は、
この様な傾向が強いということです。
例として、次の2つを比較してみましょう。
- 自分のビジネスは大成功して順調だが、恋人のビジネスはなかなか上手くいかない。
- 自分のビジネスは苦戦中であるが、恋人のビジネスは大成功して順調である。
きっと「2」の方が嬉しいとか良かった…という幸福感が強いのではないでしょうか。
アサヒグループホールディングス「ハピ研」の調査によると、どの年代でも「誰かと一緒に過ごす時間」に幸せを感じるということが分かります。
年代別最も「幸せ」と感じた状況(抜粋)
年代 | 「幸せ」と感じた状況 |
20代 | 恋人とのひと時 |
30代 | 家族団欒 |
40代 | 家族団欒 |
50代 | 子どもの祝い事(誕生日・進学等) |
60代 | 健康なこと |
詳しくは、アサヒグループホールディングス「ハピ研」をご覧ください。
もちろん、この調査結果は一つの事例に過ぎませんが、日本の文化的な部分、アンケートの結果を踏まえても、どんな年代の人も心穏やかに過ごせる環境はどんな環境なのか?を真剣に見直す必要があるということが分かります。
もし、デザイン的にオシャレな空間であれば心穏やかになれるのであれば、家づくりに関わる人全員がデザインを学ぶべきです。
ところが、
と言われると、半分正解の様で半分間違っている様な感覚があるのではないでしょうか。
こうした状態にも関わらず、家のデザイン性を全面に押し出されることが多いために、なんとも言えない違和感の様なものが残るのです。
2021年現在では、温熱環境(断熱・気密・光熱費削減)がブームの様になっていますが、温熱環境が良ければ幸せになれるか?と言われると疑問が残るのではないでしょうか。
では、何を大切にすれば幸せを感じられる家づくりができるのでしょうか。
それには、もう少し、人(特に日本の人)の性質を知ることが大切だと思います。
人の感情はどんな時に乱れ、どんな時に穏やかになるのか?
当然のことですが、先にも触れた通り、日本には「あなたが幸せなら私も幸せ」と捉える文化・考え方が根付いています。
自分は仕事が忙しく、疲労していたとしても、家族のみんながご機嫌であれば、疲れなんか吹っ飛ぶ!という方も多いでしょう。
夜遅くに帰宅しても「子どもの寝顔を見ると明日も頑張れる」こんな言葉はよく聞きます。
ですから、
ということです。
人の心が荒々しくなったり、イライラし、ストレスを感じる時
イライラしたり、ストレスを感じる要因は人様々です。
ここでは、一般的な傾向としてティムズドライブが行なった調査結果を紹介します。
プライベート | 夫婦間のトラブル | 26.9% |
仕事 | 仕事が思う様に進まない時 | 33.1% |
通勤・通学 | 他人のマナーが悪い時 | 21.8% |
生活・身体的理由 | 眠れない・睡眠不足 | 26.2% |
その他 | 将来の不安を感じた時 | 38.0% |
また、女性に限っては「家事をしないといけない時」が30%程度にものぼりました。
もちろん、「家づくりにこだわれば、仕事が順調にはかどる様になる」という事は考えにくいですが、仕事が順調にいかない要因を追求していけば、家の作りによって問題点をカバーすることができることもあるという考え方をしたいのです。
人の心が穏やかで優しい気持ちになる時
では、反対に人は、どんな時に穏やかな気持ちになり、リラックスできるのでしょうか。
実は、「職場における花や緑の導入実態調査」というものがあります。
職場は仕事効率化を目指す場所と考えるのが基本的な考え方になりますが、オフィス環境の満足度が高い職場には花きが導入されているケースが多いこともよく知られています。
実際に行われたこの調査の結果は、次の様になりました。
一見、役に立たない様に見える花や緑が大きく貢献していることが分かります。
「部屋が明るく感じられ・優しい気持ちになれるのであれば、幸せになれそうですか?」こう質問をすると、誰も否定をされません。
また、文部科学省が行なった大規模の調査でも、自然に触れる体験をすることで子ども達の心は随分穏やかになることは明らかになっています。
反対に、今流行りの「全館空調の住まい」「高気密高断熱の住まい」にすれば幸せになれそうか?ということを考えてみると、住まいづくりの優先順位が明確に見えてきます。
住まいが全てをカバーすることはできないが、一部は十分カバーできる
この様な言葉は、ビジネスの人材育成の場面や子どもの教育の場面でよく耳にする言葉です。
これまでは、なんとなくそういうものだと認識されてきた分野でもありますが、近年では、遺伝子レベルでその理由が説明できる様になってきています。
という事は、住まいを環境の一つだと見て、整える考え方はとても重要になってきます。
ここでは、具体的にどの様なことができるかその一部を紹介します。
自然が十分に感じられるように内と外の区別を緩める
近年の住まいは、高気密高断熱化に伴い、内と外との境目がかなりはっきりしてきました。
ところが、サッシの技術力も随分高くなってきたために、気密を確保しながらも十分内と外とのつながりが感じられる住まいも作れるようになりました。
古民家は、「もはや内と外の区別がない」と言っても過言ではない印象があります。
実際にそこまでする必要はありませんが、日本の文化は、自然から多くのことを教わって発展してきたという側面も忘れたくありません。
自然な素材をふんだに用い、人工的な建材は極力避ける
これまで見てきた通り、自然と私たちの幸福とは深い関わりがあります。
できれば、先に触れた様に外の気配が存分に感じられることが理想ですが、地域や立地条件によっては、それができない場合も多々あります。
そんな場合にでも、自然そのもので住まいを作れば十分に室内で自然を感じることができます。
また、自然そのもので住まいを作るということは、シックハウス・アトピーなどの健康的な問題のリスクを劇的に改善する可能性も十分にあり、先に触れた「眠れない」の問題も大きく改善することができます。
他では見ることのないキッチンをオーダーメイドする
先に紹介したアンケートによると「家事をしないといけない時にイライラすることがある」という方もたくさんいらっしゃいました。
もちろん、住まいそのものが家事を手伝うことはできませんが、家事を楽しめる空間を考えて、作るということはできることです。
また、私たちの場合は、床材などと全く同じ材料を用いてオーダーメイドでキッチンを作り、施行するということを行なっています。
他では一切見る事ができないキッチン・収納などを作ることで、家事のイライラが楽しみに変わるのであれば、これはご家族にとってとても重要な要素だと考えます。
ここでは、とても簡単に、「幸せに暮らす」をテーマに家づくりを見た際に、できそうなことの極一部を紹介しました。
ただ、これは一般的論であるために、家づくりの準備に入った段階で、予算内で何ができるのか?を十分あなたと一緒に検討していきたいと考えています。
まとめに変えて…家族が幸せに暮らすための住まいの条件
最後に改めて、「家族が幸せに暮らすためにはどの様な住まいがいいのか?」考えてみましょう。
もちろん、細かい部分では個人差があると思いますが、次の条件が満たされると、なんとなく幸せに暮らせそうだとイメージできるのではないでしょうか。
- 自然が存分に感じられる住まいだと、心が癒される。
- 自然なもので作った住まいだと、病気・アレルギー・不眠などの問題が改善できる。
- 家事が楽しくなる様な独自な空間を考え、作る。
- 予算的に無理をするのではなく、予算内でできることを考えていく。
今回、予算については触れていませんが、また改めて予算についての考えも紹介します。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。