近年になって、ようやく「住まいと健康の間に深い関係がある」と言っても笑われなくなってきました。
少し前までは、じゃあ、いい住まいに引っ越せば元気で過ごすことができるの?そんなバカな話があるわけない!などと言われたものです。
ところが、最近は、
- お子さんのアトピー・アレルギーのことが気になるから
- ご自身のなんともいえない倦怠感や偏頭痛があるから
- 年配の方々に元気でいて欲しいから
- やっぱり自然に近い環境で生活をしたいから
などの理由で、自然素材の家・無垢材の家を検討したいという方は確実に増えてきました。
当たり前のことですが、素晴らしい機能があり、断熱性に優れ、デザインが格好いい住まいであっても、そこで暮らすご家族の方々(店舗の場合は、従業員・お客様)の体調が今ひとつであれば、快適な暮らしはできません。
その為に素材にこだわった住まいづくりをしていますが、自然な素材が故に困ることもあります。
それは、
ということであり、住まいの「風合い」は、数値として表現できないことです。
これまで何度も、住まいの良さを数値化できればどんなに楽だろう…と思ってきましたが、相手は自然の産物です。
数値化できることもあれば、どうしてもできない部分もあるということです。
そこで、ここでは、
を紹介します。
原始的で問題の多いのが木材・改良木材の優れている?
木材、特に無垢材の場合、とても原始的なイメージがあり、強さは均一ではないし、燃えやすいと言う風潮が強かった時期があります。
そこで、改良木材が作られるようになりました。
ところが近年になって、また無垢材が見直されるようになってきました。
その経緯を見てみましょう。
改良木材の方が優れているという考え方
例えば、合板は上の図の様な構造になっています。
木には繊維があり、繊維に対して垂直な方向には強く、並行には弱いという特徴があります。
最近では、竹を割る・薪を割るという風景も見る機会が随分減りましたが、経験したことがある方なら感覚として十分わかると思います。
ですから、合板の様に木の繊維が交互に重なっていれば、どの方向にも強いと言えます。
また、この様に薄い木材を貼り合わせて作るために、木材の形状を気にしなくても良いというメリットがあります。
その為、ローコストで天然木よりも素晴らしい木材、改良木材ができるということです。
ところが、ここで考えてみたいのが、
または代々生命を受け継いできた木は、
合板の様な構造にしようと思わなかったのか?
ということです。
生物の進化は、ゆっくりだが周りの環境によって変化する
生物の進化は、感心させられることばかりです。
例えば、落葉する木々は、冬の間の光合成の効率がとても悪い為に冬眠するという方法を選びました。
しかも、冬眠するからと言って、ただ葉を落とすのではなく、少しのエネルギーも無駄にしないという発想で紅葉させるという手段を覚えたのです。
紅葉の不思議については、なぜ秋になると紅葉するの?木が考えた無駄なく生きる知恵をお読みください。
ここでは一例を挙げましたが、こうして木(自然)を見ると、人間が思いつかない様な発想で、様々な問題を解決してきているにも関わらず、木は合板の様な構造をしていません。
その理由は、主に次の3点です。
- 突風・地震などの強い力にはある程度しなる方が優位である
- 寒さ・暑さ・乾燥などに耐えるには、繊維を縦方向にしておいた方が優位である
- 常にかかる力は重力であるために縦方向の強化が優先
この様なことも考慮した結果が、現在の樹木の形状ですが、人は切り貼りした方が、優れたものになると考えたのですが、最近、見直される傾向も強くなってきました。
木材に人の手を加えるのが当然になり過ぎて見えなくなりつつ矛盾
当然、改良材にしてしまうと、2.寒さ・暑さ・乾燥などに耐える(調湿・傷の問題)は機能できなくなります。
ところが、この機能が十分果たせないというのは、住まいづくりをする上で大きな課題となります。
それではいけないので、人工的な何らかの手を打たなくてはならなくなるのです。
例えば、
- ワックスやオイル塗装をしないといけない
- 断熱性を高めるために分厚い壁にしないといけない
- 換気システムが次第に複雑になる
ほんの一部ですが、この様な何らかの手が必要になり、それが常識とされる程にまでなりました。
この様な状態を私は、食事によく例えます。
安くて美味しいものが食べたい…と言って、インスタント食品などをたくさん食べると、健康上の問題が気になるから、サプリメントを購入する。
それなら、うちで採れた美味しい野菜を最初から食べてね。
住まいづくりも似たような現象が起きているということです。
当然、この様な矛盾は、住まいを作る側も購入する側も何とかしたいと思うのが当然です。
だから、ハウスメーカーも工務店も様々なデータをとり、一生懸命に納得いく数値が出る様に日々、研究をしているのが現状です。
それでも、木の世界は奥深く、まだまだ科学的に謎だと言われる部分はたくさんあるのです。
知らない方からすると、「あり得ない」と言われますが、無塗装の無垢材(音響熟成®︎木材)は目立つ凹み傷を作っても、水をかけるだけで治ります。
無垢材のフローリングの凹み傷は水だけで治る【実験した結果】を参照してください。
自然素材・無垢材と付き合うなら想定外も楽しもう
こうして木や改良木材を見ると、
- 人の手が加わったものは、人が想定する範囲内の機能を持たせようとしたもの
- 人の手があまり加わってないものは、想定できないことも加味されているもの
ということが分かります。
こう言うと、人の手があまり加わってないものの方がよく感じるられるかもしれませんが、決してそうではありません。
この様なイメージになるために、どちらが優秀か?と言われると一概に答えきれない難しさがあるわけです。
いつも住まいは人と同じ、仲間である…とお伝えてしているのは、人の評価と似ているためです。
さらに言えば、人も年月が経てば変化していき、木も人の手を加え過ぎず、大切に扱ってやると経年とともに変化していくものです。
これは、お客様の家の階段に置かれていた小さな自転車。
お子さんが小さい頃に遊び心で作ったそうです。
そのお子さんも今は就職されています。
ということは、作られてから15年ほどの年月が経過しています。
それでも古さを感じないと同時に、作り手の思いやなんとも言えない風合いが感じられます。
自然素材・無垢材の家というのは、この自転車の様に
ということを理解しておくことはとても大切なのです。
今日もリノベーション現場で木を触りましたが、触れば触るほど人の技術では乗り越えることのできないものを木はもっているとつくづく感じるものです。
時代と逆行している様な話だったかもしれませんが、時代の流れにのった住まいを過去にたくさん作ってきた私の今の感覚です。
最後までお読みいただきありがとうございます。