近年になって、あなたも「何となく日本文化が注目されている」と感じたことがあるはずです。
2020年には、アメリカ大手旅行雑誌「Conde Nast Traveler」の読者投票で、世界で最も魅力的な大都市ランキングに日本の京都・東京がTOP10入りしました。
私も海外の子ども達に、日本の文化・教育を伝えることも行っているので、実際に海外の子ども達と話す機会は多いのですが、次の様な話がよく出てきま。
- 日本で財布を落としたしても心配しなくて良さそう
- とにかく食べ物が美味しい
- 街全体が綺麗
- どんなお店の人も対応が丁寧で優しかった
深く話をすればするほど、日本の「物の豊かさ」を求めているのではなくて、優しさ・丁寧さ・繊細さなどの精神に触れたいと願っていることを強く感じます。
では、なぜ、日本の文化は独自性が強く、優しさ・丁寧さ・繊細さがあるのか考えてみましょう。
結 論
自然と共に生きると考え方が原点にあるから
自然と共に生きることが優しさに繋がっていく理由を、事例を挙げながら解説します。
日本文化の原点となった自然には、悪い面も良い面もある(狼は悪?)
日本文化の最も特徴的な点は、自然と共に生きることを大切にしてきた点です。
その理由については、【快適な家の条件】本当に大切なのは数値化できない文化を見る目を参考にしてください。
そのため、
- 稲穂を神棚に祀る
- 七草粥などの考え方が浸透する
- 住まいのつくりは内側と外側の接続が滑らか
この様なことが、現代までしっかりと継承されてきました(近年、継承が弱まってしまった印象は受けますが)。
当然、科学の進歩した現代では、この様なことをして意味があるのか?という考え方も出てきますが、この非科学的なことも受けれることが優しさにも繊細さにも繋がっているのです。
ここで、考えてみたいのは、
ということです。
一般的に語られるオオカミのイメージ
現在、日本ではオオカミは絶滅しただろうと考えられています。
ところが、昔は日本にも多く生息していたのでしょう。
様々な昔話にもオオカミが登場し、大抵は悪者です。
オオカミは、肉食で鹿やイノシシをはじめ、家畜なども襲うために大変凶暴な印象があります。
現代で言うと、「クマは怖い」という感覚と似ているかもしれません。
ところが、そんな凶暴なオオカミを「オオカミ=大神」として信仰してきた地域もあります。
それは、オオカミが素晴らしい性質をもっているためです。
オオカミは山の優れた管理人であることを先人は知っていた
通常、動物は食べられるものがあれば、その時にできるだけ食べようとします。
例えば、近年問題になっているシカの畑荒らしもその典型で、畑に侵入することができるとシカは可能な限り食べ尽くそうとします。
実は人間も同じ様な性質をもっており、「食いだめ」ができる様になっています。
ところが、オオカミは次の様な性質をもっています。
- 獲物が十分にあっても一部しか捕獲しない
- 獲物の中でも弱っているもの、病気になっているものから捕獲する
- 動物を全滅させることはしない。
- 伝染病などが広がることを抑える役割を果たしていた。
つまり、山の動物達を見事に管理していたことが分かります。
日本書紀にも、オオカミのことを「かしこき神」と表現されており、古くから日本の人達は、自然の有様をよく見ていたことが感じられます。
一見、恐ろしいオオカミですが、その裏側には、素晴らしい一面もあるということを先人達は、「自然と共に生きる」ことで学んできたのです。
日本文化の「侘び寂び」も多面的な見方から生まれた優しさ
日本文化の特徴でもある「侘び寂び」もとても複雑です。
「侘しい・寂しい」と言えば、マイナス要素が強い印象がありますが、自然と共に生きてきた先人は、その中にも良さがあるという多面的な捉え方をしてきました。
パッと見て、何もない部屋・シンプルなものをつまらないものとして捉えるのではなく、その中になんともいえない良さを見出そうとしてきたことは歴史からも強く感じられます。
この様な多面的な見方が、
になっていった様な気がします。
この精神が現代でも受け継がれ、美しい街をつくり、世界の人々が憧れる国へとなっていったのです。
この様に「自然と共に生きる」という生き方を見ると、「多面的・複雑である」という部分を暮らしの中に残しておくということはとても重要なことに気付かされます。
では、現代の暮らし、現代の住まいはどうでしょうか。
「自然と共に生きる」ことは複雑であるが多様な考え方を作る
日本独自の文化「自然と共に生きる」ことは、物事を多面的にみる視点を育ててくれる素晴らしい財産です。
ところが、近年は、シンプルで分かりやすいものが人気を集めるようになりました。
書籍の変化はその典型で、「簡単・分かりやすい」ものが随分増えました。
住まいのつくりを見ても、
- 気密性・断熱性がいくつなので年中快適
- 換気システムの性能がいいので花粉やウィルスをカット!
- ZEH(ゼロエネルギーシステム)だから光熱費の心配なし!
この様なシンプルなものが随分増えました。
もちろん、シンプルで分かりやすいことも大切ですが、例えば「年中快適」は本当に私たちの暮らしにとっていいことなのだろうか?と考えることも大切です。
様々な角度から考えることができますが、一つは、【育児と住まいの環境】自律神経を鍛え元気な子どもに育てるの様な考え方もできます。
この様にものごとを多面的に考えてみると、明確な目的を作ったものは、メリットが分かりやすいですが、その裏側で失ってしまうものがあるかもしれないという点も観ておきたいものです。
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例えば、私の祖父母の住まいは、今でいう古民家だったので「火鉢」で冬は暖をとっていました。
みんなが火鉢の周りに集まり、お餅を焼いたりしたものですが、遅くに帰宅した人がいれば、
「ご苦労さんだったね。寒いでしょ。早く火にあたり。」
なんて声をかけて、みんなが詰めて、サッと場所を確保したものです。
こんな風景が小さい頃から当たり前だったのも、少し不便なところがあったからでしょう。
そんな暮らしを見ると、近代的な住まいは、自然を遮断し、コントロール可能にした快適な空間は確かに居心地がいいかもしれません。
けれども、それと引き換えに「心遣い」が損なわれてきているのかもしれません。
日本文化が世界中から素晴らしいと言われるのは、自然が私たちに与える少し厳しい条件の中にも良さを見出そうと、様々な角度から観てきたからです。
その様な考え方を日々の暮らしの中で、なんとなく感じながら生きることが「豊かな暮らし」だと思うのです。