大人になるにつれて、人はいい意味で疑り深くなるものです。
色々な経験が「こんなふうに見えているけど、それ本当?」と疑ってかかる目を与えてくれるからです。
物事には見えている部分と、表には現れていない、見えていない部分があります。
生活の基本となる『衣・食・住』にも、このことは当てはまります。
今回は『衣・食・住』の見えない部分にフォーカスしてみましょう。
見える部分よりも見えないところに気を配る衣類の話
着るもので見えていないものとは、下着です。
買ったばかりのピカピカの服の下がよれよれの下着だったり、お気に入りの服の下が肌に合わないチクチクするような下着だったら、あなたはどんな気分でしょうか。
私なら、テンションが下がり、落ち着きません。
いつもおしゃれでキラキラの先輩なのに…
私がまだ社会人になりたての頃に、こんなことがありました。
当時勤めていた会社に、いつもおしゃれでキラキラ輝いて見える女性の先輩がいました。
ある時、その先輩に誘われて温泉旅館へリフレッシュをしに行ったのです。
いざ温泉へ入るために脱衣所で服を脱ぎ始めた時のことです。
彼女がおしゃれなワンピースを脱いだ途端、私の目に飛び込んできたのは、明らかにくたびれてウエストのゴムが伸び、色もデザインも上下ミスマッチな下着だったのです。
私は咄嗟に目を逸らせてしまいました。
その後不思議なことに、彼女がどんなにおしゃれで流行りの服を着ていても、以前のように輝いては見えませんでした。
この時を境に、私は服よりも下着に気を使うようになりました。
高級なものは必要ありません。
自分の肌に合った着心地の良い、気に入ったデザインのものを選んでいます。
そして、なるべく綺麗な状態を長持ちさせるため、洗濯方法などに気をつけています。
もちろん、着る服も大事だし、おしゃれだってしたいです。
でも、外側の服よりも見えない内側の下着に、お金も手をかける時間も使いたい。
何よりその方が、気持ちよく過ごせるからです。
食べ物の見えない部分が食の質を大きく左右させる
私は毎日料理をします。
娘に食べさせるおやつのお菓子も週に何回か作ります。
料理で見えないものとは、その料理の材料と作る過程です。
食材を買いに行けば分かりますが、同じ食材でも様々な種類があります。
小麦粉専門店だってあるくらいです。
スーパーにも数種類の小麦粉が売られていますが、製菓食材店に行くと、その何倍もの小麦粉が置いてあります。
パンに適したもの、ケーキに適したもの、クッキーに適したもの、などなど数多の種類があります。
これらの中から必要なものを選んで購入します。
どんな小麦粉を使って作っても、一見同じものが出来上がるでしょう。
でも食べればやはり違いが分かるのものです。
4歳の娘にも分かります。
材料をあり合わせのものやケチって作ったときは、あまり食べてくれません。
料理は時にとても手間と時間がかかるもの。3分ではできません。
例えば、パン。
粉類を計って混ぜ、捏ねて寝かせ、成形して焼く。
手で捏ねる場合は結構な体力を必要としますし、時間も相当かかります。
こうして出来上がったパンを朝食に出すと、家族はあっという間に食べてしまいます。
「作るの半日、食べるの一瞬」といったところでしょうか。
でも、それでいいのです。
私がそうやって作ったパンを食べて家族が元気に出かけ、一日を過ごすことができれば、言うことなしです。
料理で見えていないものには、材料と作る過程に加え愛情があるのかもしれません。
住まいの見えない部分、細部に神が宿る!
住宅において見えないものとは何でしょうか。
あなたも、今いる部屋を見回してみてください。
天井の上は見えますか。床の下は見えますか。壁の中は見えますか。
どれも見ることが出来ません。
どんな木材や壁材が使われているのか、完成された家を見ても、うかがい知ることは出来ません。
でも、きっと住んでみれば分かるはずです。
『衣』のところで出てきた先輩の話しを思い出してみてください。
外観だけをきれいに作り上げられた家の見えていない部分に、ボロボロだったり作りに合わないものが使われていたらどうでしょうか。
はじめは輝いて見えた家がくすんではこないでしょうか。
よく吟味し、その家に合った材料を使って作られた家なら、きっと心地よく過ごせるはずです。
『食』のところで挙げた例を思い出してみてください。
小麦粉に様々な種類があるように、木材や壁材にも様々な種類があります。
どの材料を使って家を建てたのか、一見しただけでは分からなくても、やはり住めば分かるはずです。
また、私がパンを手間と時間をかけて作るように、手間と時間をかけて作られた家はどうですか。
そこに住む家族は毎日を快適に元気に過ごすことが出来るのではないでしょうか。
住宅においてもまた、材料と作る過程に加え作り手の愛情が、見えていない大切な要素なのです。
神は細部に宿る…
昔からよく言われる言葉ですが、見えない部分にこそ大事にしようという先人の考え方は、何年経ってもブレることはないでしょう。
そして、その違いをしっかりと感じられる感性を私たちはいつまでも大切にしておきたいものです。