まだまだ、住まいと健康とが深い関係にあるという認知が低いように思います。
人は、「不快」は敏感に察知することができますが、「快」については敏感に察知しにくい生き物です。
ですから、「住まいを変えて元気に健康になった!」という声を聞くことはありませんが、「引っ越しをしてからどうも調子が悪い」という声は、耳にするものです。
けれども、「引っ越しをしてから調子が悪いのは、新しい環境になったからからじゃないの? そのうち慣れたらきっと大丈夫よ。」という程度の話で終わってしまいます。
住環境が体や脳に大きな影響を与えているのに…。
そこで、
反対に
室温やその他の環境も良ければ脳は力を発揮する
ということについて、詳しく解説していきます。
本文の内容を簡単に動画でも解説しています。
とにかく日本の家は冬が辛い!アラスカの子どもは室内で半袖?
例年12月〜3月くらいは、朝の冷え込みが強く、起床すると「息が白く見えた」という経験をあなたもしたことがあるはずです。
布団から出るのも辛いが、仕方なく這い出し、ストーブやファンヒーターのスイッチをいれて、じっと暖まる…。
結局、貴重な時間だけがどんどん奪われて行ってしまいます。
「この寒さなんとかならないかなぁ…」と感じながらも、心のどこかで冬は寒いから仕方がないという風に思っていないでしょうか。
私は毎週、アラスカに住んでいる子どもとオンラインで話をしていますが、彼はいつも半袖でカメラの前にやってきます。
アラスカって相当寒いやろ?
気温ってもちろん氷点下だよね。
まぁ今は、-15℃くらいだと思うよ。
でも、家の中は暑いくらいなんだ。
室内はかなり暖かく、長袖を着るまでもないようです。
かと言って、四六時中暖房機器をオンにしている訳でもないそうです。
つまり、断熱性が優れているということです。
こんな話を直接聞くと、地球規模で見るとまずまず過ごしやすい気候だからこそ、日本は室内温度への関心が、海外よりも弱い傾向にあるのかなぁと思います。
実際に最近建てられた家を見ても、これじゃ、冬は辛いだろうなぁ…と思うよう家も見かけることがあります。
WHOは住宅の最低室内温度として「18度以上」を推奨
実は、WHOは室内の最低気温は、年間を通して18度以上を推奨しています。
年間の室内最低温度が「18度以上」と聞いて、あなたも驚いたのではないでしょうか。
18度と言えば、京都市の4月中旬から下旬にかけてのいい天気の日の最高気温程度です。
私の家、絶対にそんなに暖かくないよ。
朝起きた時がそのくらい暖かいならどんなに幸せか…
でも、多くの家がその様な感じじゃない?
感覚的な話になりますが、日本の多くの家屋は、18度を基準に考えると断熱が甘く、辛い冬の朝を迎えている方がとても多いように感じます。
WHOがなぜ最低室内温度として「18度以上」を推奨するのか?
人間の体は、温度が下がると機能が低下してしまいます。
これは専門的な知識がなくても、「寒ければ動きが鈍くなりがち」という経験からも理解できると思います。
イギリスでは「家の寒さと死亡率の関係」を長年調査し、その結果を公表しています。
その結果によると
- 最低気温が16度を下回ると呼吸系疾患に影響が出る
- 最低気温が12度以下になると血圧上昇や心血管リスクが高まる
ということが明らかになっており、高齢者や乳幼児のいる家庭では、さらに最低室温を高くすることが推奨されています。
2万4000人を対象にした調査でも室温と体調の関係は明らか
近畿大学建築学部の岩前篤教授は、2万4000人を対象とした調査を行っています。
調査内容は、「ほぼ無断熱の家から、そこそこ断熱された家に引っ越した人」を対象にしたもので、気管支喘息、のどの痛み、手足の冷え、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの8つの症状について明らかな改善が見られました。
こうして室温というものだけにフォーカスしても私たちの健康と住まいとは深い関わりがあることが明らかです。
ですが、住まいが私たちに与える影響は、健康だけに留まらないようです。
室内環境の違いで偏差値で9程度の違いが出る!?
慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授の研究によると、自然素材の杉の無垢材の部屋では、「鎮静効果」があるとされています。
実験では、大学生を3つのグループに分けて、3泊してもらい変化を見るというものでした。
- 床を木目柄ビニール(天井は白クロス)
- 床と天井を木目柄ビニール(視覚が自然風)
- 自然素材のスギ無垢材の部屋(視覚も香りも自然)
調査の結果は、自然素材の杉無垢材の部屋(視覚も香りも自然)の部屋の学生の作業効率が最も高く、偏差値に換算すると9程度の違いが生じたというものです。
たった3泊の期間でもこの様な違いが生じたのです。
もちろん、この結果を「たまたまそうなった」という風に捉えることもできますが、歴史的に人類がどんな環境で生きてきたのかを振り返ると、この様な結果が出て当然だと私たちは思っています。
もともと人間も自然の中の一部として生きてきました。
恐ろしい動物の気配を察知したり、嵐の前触れなども感じながら命を繋いで生きてきました。
なかなか科学では証明することが難しい「感覚的」な部分も大切にしながら生きてきたわけですから、周りが自然なものに囲まれた環境で過ごすと、本来もっている力がより発揮しやすくなることは十分に想像できると思います。
反対に、会議室の様にスッキリはしているもものあまりにも無機質な空間に長時間いると疲労してしまいそうです。
これもなかなか科学で証明することは難しいかもしれませんが、この様な感覚はあなたも共感してくれるのではないかなぁ…と思います。
まとめ
室内環境が健康や脳に大きな影響を及ぼすと言えば、怪しささえも感じられる話に聞こえるかもしれません。
けれども、環境と人の成長との関連は教育の分野でも注目されているところでもあります。
何より、あなたが大自然に囲まれた場所で過ごすことを想像してみてください。
きっと心は穏やかになり、清々しい感覚になれると思うのです。
- 日本の家屋は欧米の家屋と比較すると断熱性は低い傾向にある
- 室温が暖かいと健康的に過ごすことがことができる
- 自然素材に囲まれた空間で数日過ごしただけでも人のパフォーマンスは高くなる
調査のための宿泊期間はとても短いですが、住まいを購入して「生活をする」となるとその時間は膨大なものになります。
世代を超えて使うことにもなる住まいだからこそ、使用する材料にもこだわり続けたいのです。
今回の記事と関連の深い記事は…