新築やリフォームをする際に、素材(建材)にこだわることが大切だという発信をしていると、アレルギーやアトピーなどで悩まれいる方から質問をいただくことがあります。
私自身も喘息気味なところがある上に、娘もアトピーを少しもっています。娘の学校の校舎が新しくなってからは、残念ながら症状が悪化したような印象があります。やはり、無垢材の住まいにするとアレルギーの心配はなくなるのでしょうか。
こんな質問をいただきました。
娘さんのためにできることは何だってしたい!という気持ちは痛いほど分かります。
ところが、
- 自然素材で住まいを作ったからと言ってアレルギーやアトピーの心配がなくなるかどうかは、分からない。
- 自然なものだからと言って、絶対に安心できるとは限らない。
- 様々なデーターがありますが、最終はご自身の体で確認が必要。
それぞれ、どういうことか詳しく解説します。
知っておきたいアレルギーやアトピーに対する考え方
アレルギーやアトピーの疾患に悩まされている人は、これだけ医学が進歩していても増え続けている一方です。
当然、この問題を解決しようと専門家の方々は日々研究をされていますが、分からない点が多いのも現状です。
日本アレルギー学会のHPに分かりやすい文章があります。
私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとこれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギー反応も広くは免疫反応の一部ですが、異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合をアレルギー反応と呼んでいます。
アレルギー反応を起こす原因となる物質をアレルゲンと呼んでいます。免疫学の言葉で抗原と呼ぶこともあります。アレルゲンになり得る物は、その多くはタンパク質です。食物、ダニ、カビ、昆虫、ハチ毒、動物の皮屑、花粉、薬品、天然ゴムなどがあります。
(日本アレルギー学会HPより 抜粋)
また、以前に行われた日本アレルギー学会のシンポジウムでは、アレルギーの原因は簡単にまとめると、次の様だと言われました。
- 先進国の生活水準が高くなり、良好な公衆衛生設備が整った。
- 抗生物質の多用や細菌、寄生虫感染の機会が減少した。
- 環境汚染、特に大気汚染がアレルギー疾患の増加と関係が深い。
そして、ご質問をいただいた方の場合で言えば、お子さんの通う学校の校舎が新しくなってから…という部分を考慮すると、校舎を建設した時に使用した建材から揮発するものが、上記の大気汚染に該当するのではないかと思います。
ですから、
ということになります。
私もこの考え方には大賛成です。
人間は、古代から自然と共に生きてきた動物ですから、ある程度、自然がもたらすものには順応できるようになっているという考え方にも十分納得できます。
では、自然なものであればアレルギー・アトピーの心配はないのか?というと、決してそうではありません。
自然にあるものでもアレルギー・アトピーの原因になる
山に生えている草木は、なぜ生えているのか?
直接、彼らと話をすることはできませんが、少なくとも次のことは言えそうです。
- 人間に役立つために生きている訳ではない。
- どんな草木(動物)も種族を繁栄させたい。
そして、彼らは身を守るために様々な工夫をします。
この草木の工夫が人にとって辛いものになってしまうことがあります。
具体的にいくつか例を挙げてみます。
タラの木や柚の木にはするどい棘(トゲ)があります。
漆(うるし)に触ると、大変な反応が出る人がいることはよく知られています。
また、とても身近な大根は、土の中の虫から根を守るために、辛味成分をためて根を守っています。
つまり、自然の中の草木も自分を守るために、見方によっては「害」をもたらす存在になってしまうこともあります。
ただ、化学的な物質と大きく異なる点は、いつか土にもどる時がくるという点。
この様に見ると、無垢材としてよく使われる、杉やヒノキは自然だからといって、100%安心できるかというとそうではなさそうです。
もう少し詳しく見ていきましょう。
杉やヒノキの無垢材は建材になっても身を守り続けている
木は山で成長し、伐採されて乾燥されて建材になります。
無垢材の場合、「切り出して、乾燥させたもの」が私たちが考えている定義ですが、実際は、微妙な違いがあります。
ところが、「切り出して、乾燥させただけのもの」も実は人間にとって、有害なものを放出しています。
無垢材でも、実はホルムアルデヒドを放出している!
上のグラフは、極めて微量ですが、無垢材(事例は、乾燥方法の異なる杉)でもホルムアルデヒドを放出していることが分かります。
これは、木自身が身を守るために持っているもので、建材として利用された後も、僅かに放出し続けます。
面白い点は、高温で木材を乾燥させたものは、後になってホルムアルデヒドの放出量が多いという点です。
感覚的な理解ですが、無理やり高温で乾燥させるほど、彼らは必死になって身を守ろうとしているのではないか?そんな風に見えます。
アトピー・アレルギー反応が強い方の場合、この微量なホルムアルデヒド(その他のVOCも微量に放出されている)に反応してしまうことがあるそうです。
ですから、
木材はエタノールと反応してアセトアルデヒドを発生する
また、アトピーやアレルギーなどの心配がある方は、木材とエタノールが反応し、アセトアルデヒドが発生するということも知っておきたいものです。
これは、森林総合研究所の調査で明らかになっていることです。
つまり、日常生活をしている上で、完全にアセトアルデヒドを0にすることは難しいと考えられますが、できるだけ減らす工夫はしたいものです。
では、エタノールはどんなものに含まれているのか見ていきましょう。
日常的によく使われるものから見ていきましょう。
消毒に使われるもの(薬局で売られています)
特に、2020年はコロナの影響もあり、利用されている方がとても多いと思います。
ウェットティッシュ
ノンアルコールタイプのウェットティッシュには、もちろんエタノールは含まれていません。
消臭スプレー(ファブリーズの様なもの)
商品にもよりますが、消毒+消臭の機能をもったスプレーがたくさん売られています。
その多くに、エタノールが含まれているので、特に敏感な方は、注意が必要です。
また、自然派思考の方は、この様なものを手作りされる場合もありますが、木材には使用しない方がいいです。
塗装の薄め液
一般的な家庭で頻繁に使うことはありませんが、木材の塗装をする際にエタノールが使われることが多くあります。
アトピーやアレルギーなどの心配がある方やより自然な環境にこだわりたい方は、一切塗装をしていない木材の家具・住まいを選んだ方がよいでしょう。
まとめにかえて
こんな細かいことまで気にしないといけないのか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ところが木材とエタノールとの相性が人にとってよくないだけで、見方を変えると、特別なことをしなくてもいいのでは?と木が教えてくれているようにも感じます。
特別なことをしなくても、木がもっている能力に敬意をもち、丁寧に建材にしてやることで特別なことをする必要のない生活になります。
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