本記事の内容は、動画でも解説しています。
新築をする、リノベーションをするという事を考える時に、もちろん、
にしたいと誰もが考えます。
2021年1月には、卸電力市場の価格が跳ね上がって、電気代が10万円を超えるかもしれない!などという悲鳴も上がりました。
この様な状況も踏まえると、数年前からさかんに言われている、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)はとても魅力的に見えるかもしれません。
ただ、私たちは、ZEHへの取り組みを一番には考えていません。
その理由は、
です。
この理由を、解説します。
環境先進国として知られるドイツの光熱費の現状
一般的なドイツのイメージは、
- 環境についてよく考えている。
- 化学的なものに対して厳しく、よりオーガニックな暮らしを推奨している。
- 環境に配慮した住まいづくりをし、住環境でも最先端。
自然環境に優しい暮らしを目指す方にとっては、素晴らしい国の様に言われることもありますが、実際に生活をしていた方の話を聞くと、いいところもあれば、厳しいところもあるようです。
その一つが光熱費の問題。
ドイツというと、風力発電とか太陽光発電など、自然エネルギーを活用した取り組みをしたなのに、なんで、光熱費が高くなるの?
きっと、あなたも同じ疑問を感じたはずです。
もう少し、詳しく見ると、一人当たりのエネルギー消費量は近年横ばいというより、むしろ消費量は少なくなりつつあります。
と、いうことは、光熱費の単価が高くなっていることが分かります。
エネルギー源である、太陽や風など自然の力を多く使ったのに、どうしてこの様な現象が起きるのかを知っておくことは、住まい作りの光熱費を考える上でとても大切です。
ここでは、電気代に絞って話を進めていきましょう。
ドイツの太陽光発電などを利用したら光熱費が高くなる仕組み
太陽光発電などの取り組みが日本でも盛んになってきた頃に、東京工業大学名誉教授の久保田宏教授が次の様なことを言われていたのを思い出します。
科学の原理を無視して進められる「革新的エネルギー・環境戦略」の根本的な見直しを求める
この根本的な問題とは、太陽光パネルにあてはめて極めて簡単に言うと、
になるということです。
これでは、何のメリットもありません。
メリットがないということは、当然普及も見込めないために、生産コストを下げることも困難になってしまうという悪循環にはまってしまいます。
そこで、ドイツは様々な政策を行いましたが、その中でも注目したいのが、
を設定したことです。
「余った電力を高値で買い取ってくれるというサービス」がついたために太陽光発電は普及したのですが、電力を買い取るお金は誰が負担するの?という大きな課題が残ります。
そこで、電気代に買取用の代金が上乗せされました。
2000年と比較すれば、かなりの金額が電気代に上乗せされていることが分かります。
じゃあ、太陽光発電のソーラーパネルをもっていない人は、大損ってこと?
誰もが、お姉さんと同じようなことを考えると思います。
そこで、ソーラーパネルを設置しようと考えるのですが当然、初期費用が必要になります。
その為、ある程度の収入が確保できる家庭では、ソーラーパネルを導入することができましたが、貧困な家庭では、ソーラーパネルを導入することができません。
それでも、他で発電されてしまった電気代を負担しないといけないという事態になってしまいました。
【日本もほぼ同じ道】電気代はさらに高くなります
現在(2021年)、日本の政策もドイツと似た様な形で、自然エネルギー(再生可能エネルギー)政策が行われています。
日本の電力買取の基本的な仕組み
日本でも、太陽光パネルをはじめ、他の自然エネルギー(再生可能エネルギー)によって作られた電力は、買取してもらえます。
また、設置時には、助成金が出されるので、お得に見えるのですが、その費用は電力を使う全員に負担してもらっているという形になります。
この費用を日本では、賦課金(ふかきん)と言います。
2020年では、どの家庭も1kwhの電気を利用すると2.98円が徴収されていたということになります。
4人家族の場合、年間消費電力の平均は、5500kwhですから、年間に、約16,000円を太陽光パネルなどをもっている人のために負担したということになります。
そして、この負担額は、しばらくの期間、ますます増大しそうです。
原子力発電所を取り壊すための費用も徴収開始!
以前に、電力会社などが国に対して「廃炉円滑化負担金」の申請を行い、その申請が承諾されました。
要するに、原発依存度の低減を目指して、円滑に廃炉していく費用を電力を利用している人から徴収していこうというものです。
2021年現在は、既に徴収されています。
原子力発電に多くの人が反対したのに、押し切って発電所を作ったのに、廃棄するための費用をまた、みんなで負担しないといけないって変だよなぁ。
お兄さんの気持ちも十分に分かりますが、仕方がありません。
今後、ある程度の資金が集まれば「廃炉円滑化負担金」は無くなりそうにも見えますが、原子力発電には、残された課題が山積みです。
その結果、
にあると考えられます。
ZEHの導入に対して考えられる2つの道
こうしてみると、ZEHの導入について、私はためらいを感じます。
- 個人的な視点で損得を考えるのであれば、補助金などを活用して導入した方がお得。
- 社会的な視点で見ると、ZEHを導入する人が増えるほど、国民全員の負担額が大きくなる。
当然、暮らし方、地域によっても考える要素は大きく異なるために、ZEHを導入した方が良い・悪いを簡単に決めることはできません。
ただ、ZEHの言葉の響き、目に見て分かりやすいメリットだけを聞いて、ZEHを導入したことを後悔しているという声も耳にします。
その為、ここで紹介した2つの視点で理解して、ZEHの導入やnearlyZEH、太陽光発電システムの導入を検討することがとても重要になります。
先日も、「太陽光発電ができる様にしたいけど、どう思う?」と言う質問をいただきましたが、ここで紹介した様な事情を全てお伝えし、その上で検討をしていただく形となりました。
より深くZEHと光熱費と環境の関係を見る
ZEH基準を満たすには、いくつかの条件がありますが、蓄電池の設置も必要になります。
ただ、表面的には素晴らしい取り組みにも見えますが、廃棄については大きな課題があります。
- 太陽光パネルの廃棄にも費用がかかる
- 家庭用蓄電池(燃料電池)の廃棄方法はこれからの課題
というのが現状です。
少し普及の早かった自動車用リチウムイオン電池の廃棄についても大きな問題となっています。
現段階では、産業廃棄物として処理されていますが、これからその量は、増大することが十分考えられます。
となると、今後は、自動車用の電池、家庭用蓄電池の廃棄も大きな問題となることは、ほぼ確実です。
新しい技術を追求することはとても素晴らしいことですが、この様にみると、
新しい技術が生み出すエネルギーよりも、新しい製品を創造するエネルギーや廃棄に使うエネルギーの方がはるかに大きいということが見えてきます。
と同時に、自然にある産物を上手に利用するということは、とてもお手軽で廃棄にもエネルギーがあまり必要ないと改めて感心します。
私たちの場合、塗装すら行っていない無垢材を中心に、漆喰などを用いながら家づくりを行っています。
それだけでも、十分に快適な空間を作ることができます。
最近では、より自然な暮らし、子ども達の未来のため…という長い視点で物事を捉える方も随分増えてきました。
そういった方々とより深い住まいの話ができたら楽しいだろうなぁと思います。